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【つながりに効く、ネットワーク研究小話】vol.6 友だちの数に限界はあるか?

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Sansan DSOC研究員の前嶋です。「つながりに効く、ネットワーク研究小話」の第6回です。

「ともだち100人」は可能か?

突然ですが、皆さんは「一年生になったら」という歌をご存知でしょうか。幼稚園の卒園式などでよく歌われている童謡です。以下に1番の歌詞を引用します。

一年生になったら
一年生になったら
ともだち100人 できるかな
富士山の上で おにぎりを
パックン パックン パックンと

(出典:まど・みちお作詞/山本直純作曲「一年生になったら」)

さて、ここで無粋な問いかけをしてみます。
「ともだち100人」という数字は、どこまで現実的なのでしょうか?

ダンバー数(Dunbar's Number)

実は、私たちの社会ネットワークのサイズには認知的な「限界」があると言われています。その限界が「(だいたい)150人」であると主張したのが、進化心理学者のロビン・ダンバーです。この「150」という数は、彼の名前にちなんで、「ダンバー数」と呼ばれています。しかし、これはいかにして求められたのでしょうか。

ダンバーは、ゴリラやチンパンジーなどの霊長類の群のサイズと、大脳を覆う大脳新皮質の体積の間に、正の相関関係があることを発見しました。大脳新皮質とは、分析的な思考や計算、言語機能を司っていると言われている脳の部位です。その正比例の関係性を人間にも当てはめると、150というサイズが導出されるのです。

ですが、これは現代社会においても妥当する法則なのでしょうか?2000年代にダンバーらがイギリスとベルギーにて行った調査では、クリスマスカード(日本の年賀状をイメージするとよいでしょう)を送った人が平均して153.5人であったことが確認されています(Hill and Dunbar 2003)。それだけでなく、Facebook上のオンラインのつながりについても、同様の認知的制約が存在するとダンバーは主張しています(Dunbar 2016)。補足ですが、別の測定方法を用いると、もっと多くの友だちの数が推定されるという研究結果もあります(McCormick et al. 2010)。

そもそも「友だち」とは

さて、「ともだち100人」の話に戻ります。ダンバー数というのは、本来的には集団生活を営める最大のサイズであると解するのが穏当で、ダンバー数=友だちの数の限界というわけではありません。しかし、友だちが100人、というのはダンバー数よりも小さいサイズであるので、これだけ友だちを作るというのは無理な話でもなさそうです。

そもそも、「友だち」とはどのような関係性のことを指すのでしょうか?
アメリカの都市社会学者が北カリフォルニアにて1970年代後半に行った調査によると、友だち(friend)という関係性のカテゴリは、「同じ年齢の人」「長年知り合いの人」に付与されやすいという傾向があることがわかっていますが、それ以上に、親戚でない知り合いのほとんどに対して非体系的な基準で付与される、非常に「その他」的な性格が強い関係性のカテゴリであると結論づけられています(Fischer 1982)。つまり、社会科学の中でも、どういう要件を満たせば「友だち」と言えるのかはハッキリしていない部分が大きいのです。

ネットワーク理論ではよく、「行動的紐帯」と「認知的紐帯」という区分を用います(山口 2003)。行動的紐帯は、「一緒にランチに行く人は誰か」「メールのやりとりをするのは誰か」といった、客観的な相互行為に基づくつながりのことです。一方で認知的紐帯は、「親しいと思う人は誰か」「友だちなのは誰か」など、主観的な認識に基づくつながりのことです。この2種類の紐帯のうち、「友だち」というのは後者の側面が強いと言えるでしょう。なぜなら、「友だち」というのはあくまで一つの概念であり、明確に目に見えるものではないからです。これはすなわち、「友だち」という概念の定義が歴史の中で変わっていく可能性を示唆しています。

もしかすると、FacebookやTwitterなどのSNSの登場以後、「友だち」の意味内容が変化していくのかもしれません。翻って、その数的な限界も増減するのかもしれません。あくまで可能性の話ですが、このような事態は、「意味」の次元を扱う社会科学の面白いところでもあると思います。

次回は「アイデア創出と社会ネットワーク」について書きます。

【参考文献】
Dunbar, R. I. (1992). Neocortex size as a constraint on group size in primates. Journal of human evolution, 22(6), 469-493.
Dunbar, R. I. M. (1993). Coevolution of neocortical size, group size and language in humans. Behavioral and Brain Sciences 16 (4): 681-735.
Dunbar, R. I. (2016). Do online social media cut through the constraints that limit the size of offline social networks?. Royal Society Open Science, 3(1).
Fischer, C. S. (1982). What do we mean by ‘friend’? An inductive study. Social networks, 3(4), 287-306.
Hill, R. A., & Dunbar, R. I. (2003). Social network size in humans. Human nature, 14(1), 53-72.
McCormick, T. H., Salganik, M. J., & Zheng, T. (2010). How many people do you know?: Efficiently estimating personal network size. Journal of the American Statistical Association, 105(489), 59-70.
山口洋. (2003). 社会ネットワーク分析におけるデータ収集法の比較検討. 社会学部論集, 36, 105-119.

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