Sansan Tech Blog

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Nagoya Tech Talk 〜AI x 〇〇〜【初陣】イベントレポート

中部支店に勤務しているData Intelligence Unit Master Data Groupのウチウゾウです。 名古屋のエンジニアコミュニティを、熱田神宮よりも熱くする。この熱意のもと、2025/10/24に、Sansanの中部支店で、「Nagoya Tech Talk 〜AI x 〇〇〜【初陣】」が開催されました。

sansan.connpass.com

名古屋開催にも関わらず、満員御礼となりました。登壇者の皆さま、そして会場にお越しいただいた参加者の皆さま、貴重な知見の共有と活発な交流、ありがとうございました。皆さまのおかげで、熱気あふれる素晴らしいイベントとなりました。

Opening Talkと会場の様子

Nagoya Tech Talkの初回となる今回は、名古屋に拠点を置くSaaS企業4社のエンジニアより、AIの活用事例について話してもらいました。SaaS企業4社とは、Sansan株式会社、株式会社マネーフォワード、フリー株式会社、株式会社OptFitです。各登壇者から紹介された実務におけるAI活用事例について、概要をご紹介します。

コンテンツ

  1. AI協働型データモデリング
  2. AIで属人知識を再構築する
  3. AIを活用したSRE Work省力化事例
  4. AI駆動で基盤マイクロサービスのセルフサービス率を改善する
  5. AIの忘却や嘘を人間っぽく対策する

1. AI協働型データモデリング

弊社の中村から、生成AIと営業活動データを活用した営業活動支援のPoCについて紹介しました。このPoCではAnthropicが提供している生成AIモデルClaudeとGoogleがOSSとして公開しているMCP Toolbox for Databasesを組み合わせて検証しました。生成AIエージェントによる効率的かつ効果的な分析結果を得るうえで、データモデリングの重要性が語られました。

MCP Toolbox for Databasesは、私も業務で触ったことがあり、準備はインストールと数行のYAMLファイルに設定を記述するだけです。これによって、生成AIによるデータの概要把握や簡単な仮説検証を、ゼロショットのプロンプトで実施できました。生成AIエージェントとMCP Toolbox for Databasesを組み合わせることで、SQLを書かずに、データ分析が自然言語のみで実現できるようになります。MCP Toolbox for Databasesをまだ触ったことがない方は、生成AIによるデータ分析の民主化をぜひ感じてみてください。

中村の発表

2. AIで属人知識を再構築する

株式会社OptFitのKAZYさんより、生成AIの力を借りて、ドキュメント化されていない属人知識の共有をどのように推進したかが紹介されました。変化の激しいスタートアップにおいては、スピードが最優先されがちです。生成AIによって、どのように効率よくキャッチアップを行い、これまで犠牲になっていた属人的な知識の共有をスピードを維持しながら、どのように実現したかが話されました。

当たり前ですが、生成AIを使う上で、生成AIがアクセスできる場所に情報を置く必要があります。コードはGitで管理すること。Privateである必要のないSlackチャンネルはPublicにすること。ミーティングの議事録を残すこと。といったチームで仕事をするうえで当たり前のことを徹底することの重要性が訴えられました。

KAZYさんの登壇資料の抜粋

3. AIを活用したSRE Work省力化事例

株式会社マネーフォワード濱田さんより、スピードと品質を両立するために、これまでSREが行っていたレビュープロセスに生成AIを導入した事例が紹介されました。具体的には、非機能要件の1つであるモニタリングが適切に実施できているかについてClaudeCodeにレビューさせる仕組みを構築した事例がピックアップされました。マネーフォワードさんのSREは、サービスを横断して品質の担保を行うサポート組織です。そのため、品質の担保のプロセスが、各チームのスピードを減速させるブロッカーにならないことが重要だったそうです。開発チームが作成したサービスの概要・アーキテクチャなどの事前知識をまとめた資料をClaudeCodeに渡すことで、生成AIによる非機能要件のレビューを実現したそうです。

昨今、Coding Agentによる実装が一般的になり、レビュー疲れというワードも聞くようになりました。だからこそ、レビューに生成AIを導入し、人がレビューする観点を減らすことが、生産性を高めるうえで重要と考えます。今回の発表を聞き、人がレビューした観点を基に、レビューAIをさらに賢くしていく仕組みを構築することで、AIによるレビューの精度をより高めていける未来を感じました。

濱田さんの発表

4. AI駆動で基盤マイクロサービスのセルフサービス率を改善する

株式会社マネーフォワード玉井さんより、Cursor CLIを使い、基盤マイクロサービスの使いやすさを評価する仕組みについて紹介されました。

マネーフォワードさんには、各種プロダクトで共通して利用される「業務基盤」と言われるマイクロサービスが数十個も存在しているそうです。プロダクトの開発を高速に進めるための「業務基盤」が多くあることで、逆に導入における設定が複雑になっていました。その結果「業務基盤」を利用するための工数が増加してしまう事象が発生していました。まずどこに問題があるのか計測するために「Software-Assisted Ratio」という「業務基盤」の利用のしやすさの指標を定義しました。しかし、日々進化する「業務基盤」の使いやすさを継続的に評価するのは容易ではありませんでした。そこで、Anysphere社が提供するCursor CLIを使い、「Software-Assisted Ratio」を月次で評価する仕組みを構築しました。これによって、数十個もある「業務基盤」のどこに問題があるのかを定期的にモニタリングできるようになりました。

Cursorを普段使わない私にとって、CLIを提供している各種生成AIツールうち、Cursor CLIが最も安定してCSVを安定して出力できたという点が、新しい知見となりました。

玉井さんの発表

5. AIの忘却や嘘を人間っぽく対策する

フリー株式会社須崎さんより、生成AIの特性を元に、普段開発において生成AIをどのように使っているのかを紹介されました。いかに生成AIに大きなタスクを精度よくやらせるかについて、人に仕事を依頼するときに意識していることを交えて話してくださいました。要点をかいつまむと、人が長い話を覚えられないように、Coding Agentも長いコンテキストを意識しきることができないことを前提に使うべきだと訴えていました。具体的には、大きなタスクを細かくし実装するアプローチや、設計やフロントエンド実装・バックエンド実装など、タスクの内容に合わせてCoding Agentを使い分けるアプローチが紹介されました。

須崎さんの発表

懇親会の様子

本イベントでは、エンジニア同士の交流の場として、会場にて懇親会を実施しました。 普段の業務において、どのツールを使っているか、どのようにAIを使っているかの知見を共有しました。また、名古屋のエンジニア・コミュニティを熱くしていきたいという語らいもありました。 登壇者の須崎さんに、秘伝のタレ・プロンプトをどのように熟成しているのかについて伺ったところ、「PRで指摘されたことなどをメモしている」と教えてくださいました。つまり、自身の日々の学びをAIに共有し、悪い癖をAIとともに改善していくということです。このAIの使い方がAI時代のエンジニアの成長につながるという発見がありました。

懇親会のお寿司

終わりに

Sansanには中部支店があります!これからも、名古屋のエンジニアコミュニティを熱くするために、引き続きNagoya Tech Talkを開催する予定です。 一緒に盛り上げたい方は、ぜひ「33tech@sansan.com」にご連絡してください。

Sansan技術本部ではカジュアル面談を実施しています

Sansan技術本部では中途の方向けにカジュアル面談を実施しています。Sansan技術本部での働き方、仕事の魅力について、現役エンジニアの視点からお話しします。「実際に働く人の話を直接聞きたい」「どんな人が働いているのかを事前に知っておきたい」とお考えの方は、ぜひエントリーをご検討ください。

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