Sansan Tech Blog

Sansanのものづくりを支えるメンバーの技術やデザイン、プロダクトマネジメントの情報を発信

Bill One QAが目指す姿 -「品質を守る」から「働き方を変える価値を届ける」組織へ

この記事は、Bill One開発Unit ブログリレー2025の第22弾になります

こんにちは。Bill One QAマネジャーの秋元真理子です。

2024年4月に入社して以来Bill One QAに配属され、現在はグループマネジャーとして、日本のメンバーだけでなく、フィリピン・セブ島にあるSansan Global Development Center (SGDC) のメンバーと共に、日々Bill Oneの品質に向き合っています。

入社からこれまで、Bill One QAが目指すべき姿については、日々のミーティングやSlackでのやり取りを通じて断続的に発信してきました。しかし、私たちが何のために存在し、何を判断の軸としているのかを体系的に整理し、広くお伝えする機会は持てていませんでした。組織が拡大し、プロダクトがより複雑かつ重要な社会インフラへと進化していく今、改めて私たちが定義する「QAの理想像」を、組織の共通言語として整理しました。

「なくせる」を現実に変え、お客様の前提を塗り替える

Bill Oneは、「『なくせる』をつくり、全社の働き方を変える」というミッションを掲げています。これは単なる紙のデジタル化(Digitization)の話ではありません。経理にまつわる無駄なプロセス、アナログな慣習、そして「仕方ない」と諦めていた事務作業そのものを消し去り、ビジネスのあり方そのものをアップデートすることを意味しています。

では、その中でQA組織が果たすべき真の役割とは何でしょうか。
従来のQAのイメージは、どうしても開発プロセスの最後に控える「Gate Keeper(門番)」になりがちでした。仕様通りに動くかを確認し、バグがあれば突き返す。しかし、今の私たちはその立ち位置を明確に否定することから始めています。私たちが本当に届けるべきは、単なる「不具合のないプログラム」ではなく、「お客様の働き方が劇的に変わるという価値」そのものだからです。

意識の根本的な転換:「不具合の指摘」から「仮説の検証」へ

Gate KeeperとしてのQAは、「完成品が既定の基準(仕様書)を満たしているか」をチェックします。いわば、過去に決めたルールとの照合です。しかし、価値を生むQAが向き合うべきは、「この機能は本当にユーザーの課題を解決するか?」という未来の仮説です。

具体例を挙げると、その差は明白です。

  • Gate Keeperの提案:「このボタン配置はデザインガイドラインに違反しています」「この文言は不親切で、ユーザーが操作を迷う可能性があります」
  • 価値貢献型の提案:「そもそも、ユーザーは最短でタスクを終えたいはずです。この3ステップを1画面に統合し、自動入力機能を強化できませんか?」「このエラーメッセージを表示してユーザーに考えさせるより、手前で入力を補助するバリデーションを設ける方が、働き方を変える体験としては正解ではないでしょうか」

ここでの大きな違いは、「正解(仕様・基準)」をベースに喋るのではなく、「ユーザーの成功(Outcome)」をベースに会話しているかどうかです。現状、私たちの組織には、まだこの「ユーザーの成功」を軸にした対話の意識が不足していると感じる場面があります。お客様に最も近いフェーズにいるからこそ、誰よりも「業務のリアル」を想像し、仕様が固まる前に「それは本当に価値になるのか?」と問いを立てていく。それが私の理想とするスタンスです。

品質に対する2つのアプローチ:

この理想を実現するために、私たちは現在、プロダクト・プロセス・テストの3側面から変革を進めています。これまで「ただの確認工程」になりがちだったQAの役割を、より技術的で深いものへと進化させようともがいている最中です。

1. シフトレフト:二つのレイヤーでの「価値の先回り」
私たちが目指すシフトレフトは、単なる「早期発見」ではありません。私たちは今、「ドメイン(業務要件)」「エンジニアリング(実装構造)」という二つの側面から、より源流に近い段階で品質を定義し直す試みをしています。

ドメインレイヤーへの介入:一歩ずつ「源流」へ
究極の理想は、「何がお客様にとっての価値か」を定義する最上流の段階から、QAがその妥当性を共に議論できることです。しかし、現実にはまだプロダクトバックログアイテム(PBI)のレビューセッションにさえ十分に介在できていないという、越えるべき高い壁があります。
まずは、「何を解決するか」が決まった段階で、QAとしての鋭い問いを差し込むことから試みようとしています。業務フローに潜む矛盾はないか、その仕様は本当にお客様の負債を「なくせる」のか。まずはこの検討の場に加わり、QAとして指摘すべきことを発言できる状態を作ること。そこを起点に、少しずつビジネスの源流に近い場所でも力になれる組織にしていきたいと考えています。

エンジニアリングレイヤーへの介入:開発プロセスの中での模索
ここでは、設計が始まった後の早い段階で、品質の観点から何か力になれることはないかと、小さな試みを模索し始めているところです。
実装の意図を汲み取った上で、「このロジックは将来的にデータ不整合を招くリスクはないか?」「システム的な拡張性を損なっていないか?」といった、QAならではの「多角的なリスク視点」を、開発の早い段階で少しずつ同期させていくこと。まだ「プロセスとして並走できている」と言える段階ではありませんが、構造レベルでの懸念を早めに共有することで、後戻りできない欠陥を未然に防ぎたい。そんな思いで、最初の一歩を踏み出しています。

2. AI・技術・データの活用:品質保証の責務を拡張する
私たちがAIや最新の技術、蓄積されたデータを活用するのは、単なる省力化のためではありません。テクノロジーを武器にすることで、品質保証という役割の枠組みを広げ、より確実にお客様へ価値を届けるためです。
膨大なデータからリスクを予見したり、複雑な検証プロセスを自動化によって精度高く再現したり。テクノロジーの力を借りることで、人間だけでは到達できなかったレベルでの品質の提案や、より踏み込んだ仮説検証が可能になります。技術やデータを使いこなすことで、私たちは「間違いがないことの確認」を超えて、プロダクトが提供すべき「価値」をより高い確度で担保していく組織でありたいと考えています。

最後に

正直に言えば、今お話ししたことはまだ、私たちが完璧にできていることではありません。現実には、まだ目の前の不具合対応に追われることも多いですし、理想と実態の差にもどかしさを感じることもあります。
それでも、私たちは単なる「最後の門番」で終わるつもりはありません。たとえ今はまだ遠くても、誰よりも先にプロダクトに触れ、お客様の立場で「これは本当に価値があるか」を考え抜くことが、Bill One QAの本来のあるべき姿であると信じています。そのために、上流工程の勉強会に参加したり、目の前の開発プロセスの中で少しずつ関わり方を変えたりと、できることを模索している最中です。

マネジャーとして、私はこの「理想への挑戦」を組織の文化にしていきたいと考えています。その最初の一歩として、今回お話ししたような「意味のあるシフトレフト」への具体的な取り組みや、上流工程介入への試行錯誤など、今後も紹介していきたいと思っています。

不具合がないことを守るだけでなく、お客様の働き方を変える価値を、品質の側面から支えていくこと。未完成な組織ではありますが、一歩ずつ着実に、この変化を進めていこうと思います。

Sansan技術本部ではカジュアル面談を実施しています

Sansan技術本部では中途の方向けにカジュアル面談を実施しています。Sansan技術本部での働き方、仕事の魅力について、現役エンジニアの視点からお話しします。「実際に働く人の話を直接聞きたい」「どんな人が働いているのかを事前に知っておきたい」とお考えの方は、ぜひエントリーをご検討ください。

© Sansan, Inc.