
キャリアは、選択の積み重ねでできています。
どんな経験を経て、なぜSansanを選び、いまどんな挑戦に向き合っているのか。
「Sansan 3 Stories」では、これまでの歩みと、実際にSansanで働いて感じたこと、そしてこれからの挑戦を「過去・現在・未来」の3つのストーリーでお届けします。
今回のインタビューでは、メルカリ、スマートニュースというメガベンチャーで開発組織のマネジメントや全社プロジェクトをけん引し、現在はSansanの新規プロダクトであるデータクオリティマネジメント「Sansan Data Intelligence」の開発に挑む多賀谷に話を聞きました。
メーカーや初期フェーズのスタートアップでのソフトウェアエンジニアを経て、2017年に株式会社メルカリに入社。急成長期から変革期におけるプロダクト開発や技術組織のマネジメントに従事。2022年にスマートニュース株式会社に入社。社長室技術担当として経営戦略に基づく部門横断プロジェクトを推進。
多賀谷 洋一 / Yoichi Tagaya
Data Intelligence Engineering Unit 部長
2025年12月にSansan株式会社に入社。部長として新規・既存プロダクトの技術・組織マネジメントに従事している。
Story 1 過去|どんな課題に向き合い、なぜSansanを選んだのか
──これまでのキャリアについて教えてください。
多賀谷:大学院の博士課程で機械理工学の分野で微細システムを扱っていました。実は「とにかく何でもやる」という学際領域だったので、「どんな技術領域であってもまずは自ら学んでキャッチアップし、結果を出す」というマインドセットが培われたのかなと思っています。
キャリアのスタートは外資系の計測機器メーカーで、1台数千万円の装置向けのソフトウェア開発に携わっていました。しかし、iPhoneなどが登場してアプリやサービスの一般ユーザーが急拡大する中で「もっと多くの人が直接使うソフトウェアの領域に携わりたい」と考えるようになり、その後フリーランスや初期のスタートアップを経験しました。

──その後、メルカリに入社されたのですね。
多賀谷:はい。2017年にメルカリに入社しました。日米のフリマ事業や新規事業の立ち上げを経験した後、エンジニアリングマネジャーになり、その後エンジニアリングディレクターとなって、組織の拡大とエンジニアが自律的に開発する環境作りをけん引しました。この時期には、レガシーシステムの改善や置き換えという、急成長スタートアップにありがちなハードな課題にも向き合いましたね。
その後メルペイでは、Fintech特有の高い基準が求められる中でのプロセス整備やセキュリティー対策など、一般的に想像されるコンシューマー向けサービスよりも「きっちりつくる」という経験をしました。
急成長する組織でのマネジメントではとてもストレッチした経験をさせてもらった一方で、次の挑戦として「技術でちゃんと事業成果を出したい」という思いが強くなりました。
プロダクトマネジャーとエンジニアなど分業化が進むとどの会社でも起こり得ることなのですが、後工程となるエンジニアが少し受け身になり「言われたものを作る」という状態になりがちです。当時、私自身が事業のことを深く理解して、技術で事業成果を作るための経験や知識がまだ足りていないと感じるようになりました。
だからこそ、それができる新しい環境を求めてスマートニュースへ移りました。エンジニアバックグラウンドを持つ共同創業者で現CEOの浜本階生さんとダイレクトに働く機会をいただいたからです。
──スマートニュース入社後は、どのようなミッションに取り組んだのでしょうか?
多賀谷:入社当初は、事業損益の改善や収益拡大のため、インフラコストの最適化や、国内の大手通信会社との提携に際して求められる厳しいセキュリティー基準のクリアなど、成果が事業数字に直結する領域で課題解決に取り組みました。
その後はCEO室の一員として、「技術を強みとしてどう売上を成長させるか」という全社組織横断のプロジェクトを任せてもらいました。この領域はものごとが複雑に絡み合っていて、何か1つのことをして売上が生まれるような単純な領域ではありませんでした。
広告プロダクト、エンジニアリング、営業組織の役員とも密に連携し、3つの組織が同じ方向を向いて、広告主様や広告代理店様のためのプロダクトを正しく作っていけるようにプロジェクトを推進しました。
結果として、売上成長につなげる成果を出すことができ、エンジニアリングと事業を結びつけるという他では得られない経験をさせてもらいました。
──BtoC向けのイメージが強いキャリアですが、なぜSansanへの入社を決めたのでしょうか?
多賀谷:メルカリやスマートニュース出身というと、「BtoC(コンシューマー)」のプロダクトに携わっている人と思われがちです。でも実際には、スマートニュースの広告プロダクトやメルペイの加盟店向けシステムなど、「BtoB(ビジネス)」の要素を持った領域で多くの経験を積んできました。
そんな中でAIの時代が来て、「AIの時代だったらよりBtoBの領域でこそ、大きな価値を出せるのではないか」と考えていたところ、さまざまな巡り合わせがあってSansanと出会いました。
Sansanへの入社の決め手は大きく3つありました。
1つ目は、Sansanの新規プロダクト「Sansan Data Intelligence」が、まさにAI時代の基盤になっていくと思えたことです。
2つ目は、一緒に働く人の魅力です。技術本部長の塩見やCTO笹川と何度も話をさせてもらう中で、塩見の「この人と一緒にやっていきたい」と思わせる人柄や、笹川の技術力の高さに魅力を感じました。
3つ目は、このフェーズになっても創業経営者が3人も最前線で活躍していることです。「Founder Mode(創業者モード)」という言葉もありますが、創業経営者が素早く意思決定できるので、最速で事業インパクトを出せる環境があることも魅力的でしたね。

Story 2 現在|壮大なプロジェクトとSansanのカルチャー
──現在、どのようなプロダクトや課題に向き合っていますか?
多賀谷:現在、「Sansan Data Intelligence」という、新規プロダクトに向き合っています。
これは、企業の取引先データを最新・正確な状態に保つ「データクオリティマネジメント」サービスです。社内システムに散在する取引先データを取り込んで、表記揺れ・重複・陳腐化といった品質問題を解消することにより、全社横断的なデータ活用を促進します。
この裏側では、日本に存在するあらゆる企業や事業所(本社、支社、店舗、工場、病院、学校など)を一意に特定して管理するマスターデータを構築し、整備しています。
簡単にいうと、個人に対して識別子を振る「マイナンバー」がやっているように、あらゆる企業や事業所に対してSOC(Sansan Organization Code)と呼ぶ識別子を振るという、実はかなり壮大なプロジェクトなんです。
企業の設立や統廃合、移転、代表者の変更など、変化し続ける実態に合わせて、誰も集中管理していないデータを収集して更新をかけていく必要があります。日本国内だけでなく海外の企業や事業所まで考えると、さらに壮大です。
企業や事業所の識別子があることで何がすごいかというと、AIの時代において圧倒的な力を発揮するんです。
この識別子があれば、AIが複数のデータベースやシステムをまたいでも同一の企業や事業所を正確に特定し結果を出してくれるようになります。
それにより、「Sansan」「Bill One」「Contract One」といったSansanの各プロダクト間でデータがシームレスに連携するだけでなく、さらに、お客様が持つ社内システムとも正確につながるための、強力な基盤となります。
そして、識別子によって一意性を担保した高品質なマスターデータがあることによって、実現できるアプリケーションもあります。
たとえば、識別子を持たずに管理している取引先リストの重複排除や表記揺れの訂正(データクレンジング)、リスト情報への属性情報の付与(リッチ化)、未アプローチ企業の可視化(ホワイトスペース可視化)などです。企業のオペレーションや営業戦略を変革するサービスを提供していきます。
──技術的な難易度はどのあたりにあるのでしょうか?
多賀谷:まず、データソースの品質がまちまちなんです。自社収集を含む多様な手段で収集したデータソースがあり、それらを結合して、本当に1つの正しいもの、いわゆる「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」を作ることが簡単ではないのです。
データプロダクトを扱ったことがある方は経験があるかもしれませんが、一度作ったデータが壊れたり不整合が発生したりすると、その問題の調査や修正にはとても苦労します。そうならないように、データパイプラインやデータ結合のロジックを慎重に構築しているのです。
さらにエンジニアリングで重要なのは、1回作って終わりではなく、そこに時間軸があることです。常に品質が保たれて、企業マスターデータが最新であり続ける状態にするのがエンジニアリングとして本質的に難易度が高いです。
あとは、最速でPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成すること。でも達成して終わりじゃなくて、そこから事業が大きく成長し続ける状態を作らないといけない。
そしてマスターデータの提供以上にやっていきたいこともたくさんあります。実際に事業を作るのは不確実性があって非常に難易度が高く、同時に最高に面白いですね。
──Sansanに入社して、良い意味でのギャップや発見はありましたか?
多賀谷:入社後の発見で言うと、Sansanのバリューズが、組織に深く浸透していることに驚きました。
私は入社当時から「意思と意図をもって判断する」というバリューが特に好きです。「誰が言ってるか」ではなく「コトに向かう」ためのベースになる考え方で、自律的に判断し、その結果に責任を持つ。さらに、それを繰り返すことで人が成長して、成長した人が事業成果をもっと大きくする。そういう意味ですごく好きなバリューです。
あとは、学んでよかったなと思うのが「グロースマインドセット」です。
当初は、グロースマインドセットは単に新しいことを学ぶ意思くらいにしか理解していませんでした。でも、原典となる本*1を読んでみたら、「硬直マインドセット」と対になる概念だと知りました。
グロースマインドセットは日本語版の本では「しなやかマインドセット」と訳されていて、「人間の能力は努力や経験、学習によって伸ばすことができる」と考える心の状態です。逆に硬直マインドセットは「人間の能力は生まれつき決まっていて変えられない」というものです。この対比による理解は、もう目から鱗でしたね。
失敗を避けるんじゃなくていいチャンスだと捉える姿勢が、心理的安全性や高いパフォーマンスにすごく強く結びついてるんだなっていうのが、私にとってすごい発見でした。
あともう1つ入社して気づいたことなのですが、経営陣のスタンスも印象的でした。
CEOの寺田は事業成果を出すための強い意思を持ちつつも、メンバーの話を深く理解した上で建設的でしかも本質的な意見を出してくれます。
その影響もあってか、前向きで意思と意図を持ってプロジェクトを押し進めている人が多いなと感じています。
Story 3 未来|AI時代、エンジニアはどう事業を創っていくべきか
──今後、Sansanでどのようなことにチャレンジしていきたいと考えていますか?
多賀谷:事業での成功は当然として、それを作る組織や人が成長して、やりたいキャリアに進んでいけるようにしたいですね。
事業面で言うと、Sansan Data Intelligenceが市場にしっかりと受け入れられ、本当にお客様のシステムに組み込まれている状態を作りたいです。それによって、お客様が持っている複数のシステムを連携させて、AIがその中で自律的に仕事をしているような価値を生み出していきたいです。
現在、Claude、Gemini、GPTなどAIのファウンデーションモデル(基盤モデル)は海外の企業が握っています。だからこそ、その上の「エージェントやアプリケーションのレイヤー」は日本の会社が戦っていくところだと思うんです。
ただ、Anthropicが事業領域を広げるなど、そこも競争が激しいのは事実です。単なる孤立したエージェントやアプリケーションじゃなくて「Sansanだからこそできる」という強固な土台が必要です。
Sansanには「独自のデータ」と、それを生み出す「Digitization(人も間に入ったオペレーションによる正確なデータ化)」を行う強力な部門があります。他社には絶対に真似できないデータを土台としたAI活用で、Sansanだからこそ作れる強固なAIエージェントやアプリケーションを提供していきたいですね。

──エンジニアのキャリアや組織づくりについてはどうお考えですか?
多賀谷:AIがコードを書く時代だからこそ、単にコードを書くだけではなく、事業を一緒に作っていくレイヤーをやっていくことがエンジニアとしての成長につながると思っています。
新規事業を進めるからには、やっぱり「事業として価値を出す」というマインドが必要なので、『シフトレフト』の考え方を持ってほしいと組織に伝えています。
もともとは品質保証やセキュリティーなどでよく使われる言葉ですが、エンジニアももっと前の工程の、例えば営業とかカスタマーサクセスなど、お客様に近いところの情報を積極的に取りに行こう、という話をしています。
そこから逆算して開発を考えるのって、すごく楽しいと思うんですよね。プロダクト開発という視点でも当然そうですし、データ基盤やプラットフォームを開発するエンジニアにとっても、お客様への価値から逆算したサービス特性を満たすアーキテクチャを設計するという、期待レベルの高い仕事ができます。
そうやって事業を成功させる経験を通じて人が成長して、次のキャリアステップが見えてくる。そんなふうにグロースしていく人たちと一緒に、ゆくゆくは日本だけじゃなくて海外にも展開できるようなプロダクトにしていきたいなと思います。
デジタル赤字なんて言われたりもしますが、日本には情報産業やAIの領域で大きくスケールした企業がまだ少ないのが現状です。でも、Sansanには圧倒的なデータ量や強力なオペレーションがあって、経営陣が最前線にいて、そしてすごくいいバリューズがある。
こんなワクワクする環境で、まだ誰も解決していない難しい問題を解決して、大きくスケールする事業をみんなで作っていく。そんなチャンスにあふれた場で、私自身もさらに挑戦していきたいですね。
