Sansan Tech Blog

Sansanのものづくりを支えるメンバーの技術やデザイン、プロダクトマネジメントの情報を発信

Sansan Data Intelligenceが目指すデータの未来:プロダクト・エンジニアリング・ビジネスの三位一体で挑む新規事業


複数のシステムに散在するデータ、表記揺れや重複、更新漏れ。CRMとSFAで異なる情報が登録され、どれが正しいのか分からない。
こうした「データの信頼性」という構造的課題を解決するために生まれたのが、データクオリティマネジメント「Sansan Data Intelligence」です。

Sansan Data Intelligenceは、Sansanが培ってきた名寄せ技術とSansan Organization Code(SOC)を活用し、企業が保有する取引先マスターのクオリティー向上を一気通貫で実現するプロダクトです。
2025年12月にリリースされ、現在はさらなるプロダクトの進化に向けた開発が進んでいます。

今回は、Sansan Data Intelligenceに携わる3名——プロダクト戦略を統括する猿田、エンジニアリング組織を率いる多賀谷、そしてビジネスサイドからプロダクトマーケティングを担う鳴海に、Sansan Data Intelligenceの現在地と、この事業を一緒につくる仲間に求めるものを聞きました。


猿田 貴之(Sansan事業部 SDIプロダクト室 室長)
Sansan Data Intelligenceプロダクト全体の方向性を統括し、プロダクトマネジャー・データサイエンティスト・デザイナーのマネジメントを担当。Sansan Data Intelligenceの立ち上げ前から一貫して携わり、2025年12月のリリースを経て、さらなるプロダクトの進化をリードしている。



多賀谷 洋一(技術本部 Data Intelligence Engineering Unit 部長)
2025年12月のSansan Data Intelligenceリリースタイミングで入社。エンジニアがプロダクトマーケットフィットに集中できる体制構築や、より大きな役割を定義して任せる環境づくりを推進している。



鳴海 佑紀(Sansan事業部 Sansan DI推進部 副部長)
Sansan Data Intelligence推進部にて営業・マーケティング・カスタマーサポートを統括。プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)として、プロダクトをマーケットに届けるための全体設計と戦略策定を行う。Sansan Data Intelligenceの必要性を1年近く提唱し続け、立ち上げに至った経緯を持つ。

Sansan Data Intelligenceとは何か

──まず、Sansan Data Intelligenceを一言で説明するとどういったプロダクトですか?

猿田:一言で言うと、お客様が持っている取引先マスターのクオリティマネジメントを実現するプロダクトです。

もともとSansanには「Sansan Data Hub」という機能があります。これは名刺を起点に、集まったデータをCRMやSFAに流し込んで営業活動に使うというもので、主なユーザーは営業担当者です。

一方でSansan Data Intelligenceが見ているお客様は、その手前で困っている人たち──情シス部門やDX部門、営業企画といった、全社のデータガバナンスを担う方々です。

お客様の社内では、複数のシステムに同じ会社のデータがバラバラに登録されていて、表記揺れや重複、更新漏れが起きています。そのカオスな状態を、Sansanが持つ名寄せ技術とSOC(Sansan Organization Code/企業や事業所に対して付与される一意のコード)で整理し、クレンジングした上で足りない属性情報を補完する。
これを一気通貫で提供するのがSansan Data Intelligenceです。

Sansan Data Hubが「名刺起点で営業をさらに強くする」プロダクトだとすれば、Sansan Data Intelligenceは「取引先マスター全体の営業DXの土台を作り、作り続ける」プロダクトになりますね。

顧客が抱えるデータ課題のリアル

──ビジネスの現場では、顧客のデータ課題はどのような形で見えていますか?

鳴海: 特に多いのは、情報システム部門と営業企画・事業部門の方々からの相談です。前者は「データをクリーンに保ち続けたい」、後者は「データを使って事業戦略を考えたい」という欲求を持っていて、共通しているのは「社内のシステムにあるデータが全然信じられない」ということです。

例えばCRMには昔の営業担当が登録した取引先情報が入っていて、SFAを見ると別の表記で書いてある。当社で言えば、創業時は漢字の「三三」で、今はアルファベットの「Sansan」ですよね。当時取引した会社のシステムには漢字の「三三」が残っているはず。その情報は間違ってはいないけれど、今は古い。こういうことが事業部門ごとのシステムで起きていて、もう何が正しいか分からない状態になっています。

あるお客様は保有データが270万件あり、毎月5,000件ずつ増えていきます。こうなると、ショットで綺麗にすること自体がもう絶対に不可能ですし、次の日からデータは汚れていく。だからこそ、データそのものを継続的に維持する仕組みが必要なんです。

さらに外部環境としてAI活用が求められる中で、「来月にはデータが綺麗になります」とか「ショットクレンジング頑張ります」では間に合わない。待ったなしのスピード感で、構造的に解決し続けるプロダクトが必要とされています。

Sansan Data Intelligenceのロードマップとビジョン

──プロダクトとして、半年から1年後にどういう世界を実現したいのでしょうか。

猿田: 短期的には鳴海が言った通りで、お客様の社内に散らばっているデータがちゃんと使える状態になり続けていることを「当たり前」にしたい。具体的には、SOCとその裏側にあるデータが今、570万法人・1,000万事業所をカバーできる規模に拡大しています。これをさらに増やしていくことで、「うちのデータでは識別できない」と言われていたお客様にも応えられるようになってきています。

1年後の話をするともう一段やりたいことがあって、それは「AIが使えるデータの供給レイヤー」として位置づけられることです。皆さんがAI活用でいちばんつまずくのは、AIモデルの性能そのものではなく、AIに食わせるデータが揃っていないということだと思います。社内のデータがバラバラだったり、表記揺れしていたり、重複している状態では、どんな優秀なAIがあっても精度の高い回答は返ってこない。

Sansan Data Intelligenceはそこを構造的に解決し続けるプロダクトでありたい。クレンジングされて、識別コードが振られて、会社情報や事業所情報がひも付いている—いわゆるAI-Readyなデータを、APIやMCPのような形で各社のシステムやAI環境に供給していく。「まずはSansan Data Intelligenceを通してデータ活用しよう」と思ってもらえる存在を目指しています。

まさにSansanが掲げる「ビジネスインフラになる」というビジョンを実現する、インフラ側のプロダクトです。

エンジニアのマインドセットと技術的挑戦

──プロダクトを支えるエンジニアチームは、どういうマインドセットで向き合っているのでしょうか。

多賀谷:大前提として、これは新規プロダクトであり、プロダクトマーケットフィット (PMF) させることが最優先です。だからエンジニアも、お客様や営業組織、カスタマーサクセス、プロダクトマネジメントといった他部門に積極的に染み出していって、一緒にPMFさせるという姿勢が重要です。

技術的には、プロダクトのコアバリューを作る領域をしっかり見極めて丁寧に設計・実装しつつ、逆に既存システムがある部分は早く作れるアーキテクチャで進めようといった意思決定をしていく。そのバランス感覚がエンジニアのマインドセットとして大事なところですね。

──ビジネス要件が技術そのものを変えた場面はありましたか?

多賀谷: いちばん重要なのは「SOC v2」と呼んでいるデータアーキテクチャです。EntityとRelationshipという非常にシンプルな構造で、過去の履歴も含めた企業や事業所のデータ構造を表現できる。シンプルでありながら柔軟性が高い設計になっていて、ここがビジネスの競争優位性になっています。

そのデザインを提案したドキュメントを見るだけでワクワクするような、そういうものですね。既存のSansan Data Hubのシステムもありながら、新しく作るところは完全に新しく、モダンなアーキテクチャになっていて、それが併存している。このビジネス要件と既存要件が技術判断に与えた影響は大きいです。

プロダクト・エンジニアリング・ビジネスの連携

──エンジニアリングとプロダクト開発の連携は、具体的にどのように成り立っているのでしょうか。

猿田:Sansan Data Intelligenceでは、プロダクトマネジャーが所属するプロダクト側と、多賀谷率いるエンジニアチームで開発体制を組んでいます。大きな価値提供の単位としてEpicを定義し、その中にユーザーストーリーがあり、さらにその下にPBI(プロダクトバックログアイテム)がある。これを、基本的にエンジニアとPdMが一緒に作っていく運用です。

単に「PdMが要件を書いて投げて、あとはエンジニアが実装する」という分業ではなく、Epicという大きな価値のレベルから一緒にリファインメントしていくのが特徴です。SOC v2のような技術的な設計議論にもPdMが入っていって、プロダクトの競争優位に関わる議論を一緒にしています。

同時に、短期的な事業要求もすごく高いので、その両立をどう図るかは鳴海、多賀谷と一緒に常に議論しているところですね。SOC v2やSansan Data Intelligenceのアーキテクチャという大きなピクチャーを描きながらも、既存のSansan Data Hubのお客様をも新しい世界にお連れしたい。事業の計画とエンジニアリングの計画を綿密にすり合わせる必要があるので、そこはかなり難しいですが、やりがいのある部分です。

多賀谷:別の観点で補足すると、エンジニアに対しては「シフトレフト」の考え方を推進しています。もともとはQAやセキュリティーの文脈で使われる言葉ですが、自分よりも前工程の方にどんどん染み出していこうと。

さらに、Sansanが評価の仕組みとして採用している「ミッショングレード制度」では、グレードが上がるほど影響範囲を広げることが期待されています。
グループレベル、部署レベル、あるいは事業目線──次のグレードを目指して、より大きな範囲の仕事を任せ、その期待レベルで仕事をしていくように意識づけをしています。それによってエンジニア、プロダクト、営業組織が三位一体となって仕事できるマインドセットや環境を醸成しています。

部門間連携がもたらす効果

──ビジネスサイドから見て、この連携体制にはどのようなメリットがありますか?

鳴海:お客様に対する説明の解像度がぐっと高まるというのは、営業もCSもみんな感じていると思います。

データ系のプロダクトなので、お客様からの質問が深いんですよ。「なぜこのデータを識別できないのか」「識別要件は何か」「データの更新頻度はどうか」──こういう技術的な質問を毎回持ち帰ってしまうと商談は長引くし、お客様の熱も冷めてしまう。

でも当社のエンジニアの特徴として、現場から「なぜこの人はそういう質問をしたんだろう」と背景を聞いてくれる方が多い。コンテキストを間違えずにやりとりができるので、営業もその解像度で話せるようになります。
実際、社内でもトップ営業の人間はSansan Data Intelligenceやデータマネジメントに関して「すごく詳しいね」とお客様からコメントをもらえたりする。それはやはり、部門を超えて近い距離で協働しているからこそだと思います。

あとは、部門を超えたマネジャー会議を毎週やっていたり、四半期に1回「ざっくばらんの会」と称して、エンジニアからビジネスサイドまで全員集まってピザを食べながら話す場を設けていたり。そういうマインド醸成も含めて、みんな前のめりで参加してくれるのはありがたいですね。

Sansan Data Intelligenceにどんな人が来てほしいか

──Sansan Data Intelligenceにどんな人に来てほしいか、それぞれの視点から聞かせてください。

多賀谷: まずは、新規事業を一緒に作るというマインドを持ったエンジニアです。ただ、新しいものを作るだけでいいかというと、そうではない。裏側はデータプロダクトなので、技術的に難しい領域でもあります。その高い技術水準にもチャレンジしつつ、新規事業としてビジネスも成立させる──その両立を目指せるエンジニアと一緒に働きたいですね。

鳴海:お客様の業務やペイン──つまり痛みそのものに興味を持ってくれるかどうかが大事だと思っています。自分が企画するもの、自分が作るものが、お客様の現場の何を変えるのかを自分の言葉で語ってくれる人がいると、こちらも相談しやすいし、もっと情報を取ってこようという気持ちになります。

もう一つ、新規事業なので「言われたから作ります」という受け身の姿勢だとスピード感が追いつかない。「これが必要だよね。これができたなら、次はこれも必要だよね」と、連鎖的に思考を巡らせてくれる方が入ってくれると、間違いなくフィットすると思います。

猿田:補足するなら、「How」にこだわらないことですかね。Sansan Data Intelligenceが扱う技術は本当に多岐にわたっていて、データ基盤からアプリケーション、各システムとの連携まで幅が広い。さらに今後はFDEのような顧客への価値提案も考えられるので、お客様との接し方や提供方法自体も変わっていく可能性がある。そうした変化に柔軟に適応できる人がいいなと思います。


──最後に一言ずつお願いします。

猿田:Sansan Data Intelligenceは、AI時代には渋いプロダクトだなと思います(笑)。でも、すごくインフラに近いプロダクトで、今後確実に企業に必要になるものです。興味があればぜひ。

多賀谷:「AI時代に渋い」とも言えるし、Sansanだからこそできる強みでもある。いろんなシステムにバラバラに管理されている企業情報を、SOCという一つのユニークなコードで識別してつなげて、AIが正しい情報を元に答えを出せるようにする。Sansanだからできるし、Sansanにしかできない。さらにこの上に新しいプロダクトを乗せていける、そういう可能性を持った領域です。

鳴海:これまでのSansanのBill OneやContract Oneは、お客様が持っていなかったものを提供するというところに価値がありました。一方でSansan Data Intelligenceは、お客様が今持っているデータを使える状態にするという意味で、実はベクトルが違うプロダクトです。Sansan Data Intelligenceがあることで、Sansanはお客様のビジネスデータ全体の質を向上させられるプレイヤーになれた。データの伴走者として、お客様の隣にいられる会社になれたと思っています。Sansan Data Intelligenceから始まるSansanの新しい道づくりに興味がある方は、ぜひ一緒にやりましょう。


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