Sansan Engineering Unit Infrastucture グループの藤田です。
先日開催された AWS re:invent 2023 に参加してきました。今回はその中で聴講したセッションの中から特に印象に残ったものを紹介します。
セッション
Dr. Werner Vogels Keynote
AWS の CTO である Werner Vogels による基調講演です。前半のコストについての言及がとても刺さりました。THE FRUGAL ARCHITECT という考え方が提唱されており、これは自分が普段業務で意識していたことが言語化されているようでとても共感できました (意識できてないことも多々ありますが)。ちなみに Matrix 関連の小ネタは当日雰囲気で笑ってましたが、何言ってるかわかっておらず改めて Youtube で見直しました。
Achieving scale with Amazon Aurora Limitless Database
新しくリリースされた Aurora Limitless Database の詳細に関するセッションです。サンプルのユースケースを元に設定コマンドやどのようにクエリが実行されるかについて言及されています。
トランザクション分離レベルは READ COMMITED、REPEATEABLE READ がサポートされており幅広い要件に対応できそうという感触でした。クエリ実行では Shard Group の Distributed Transaction Routers が対応するノードへルーティングしてくれるため、クライアント側でシャードを意識する必要はない一方、利用するには新しく追加されるエンドポイント ( これまでの Cluster endpoint とは別 ) へアクセスする必要があります。場合によってはクライアント側でエンドポイントの切り替えをコントロールする必要がありそうです。
Goldman Sachs: The journey to zero downtime
トランザクション・バンキングのシステムにおいてどのようにして弾力性・可用性を上げているかについてのセッションです。非常に厳しい SLA を達成しつつも 1 年間に数千回ものデプロイを行なっており、そのためにどのような工夫をしているかが紹介されています。
特にデプロイにおける工夫が印象的で、Blue/Green デプロイメントで各マイクロサービスはデプロイされますが、独自のライブラリを用いることで通信先のマイクロサービスの Blue/Green も切り替えられるようにしていました。各 AWS サービスをビルディングブロックとして活用しつつ、独自の実装を加えることで厳しい SLA を達成している興味深い事例でした。
Deep dive into Amazon ECS resilience and availability
Amazon ECS のベストプラクティスではなく、その裏側についてのセッションでした。Amazon ECS を支えるインフラ、デプロイ戦略、そしてそれを支える組織と文化について言及されています。
ECS のコントロールプレーンはセル (シャーディングのシャードのイメージ。各セルは3AZで冗長化) に分割されており、1 セルが落ちても他のセルは稼働し続けるためワークロードの影響を最小限にするよう設計されている話が面白かったです。また、デプロイにおいてはセルの 1 つの AZ からはじめ、徐々に同時にデプロイする AZ 数を増やす方式をとることでより安全なデプロイを実現していることも紹介されており、マルチリージョンでサービスを提供する際のデプロイ戦略としても参考になりそうです。
前半のインフラ、デプロイ戦略については日本語記事もリリースされましたので、こちらが参考になると思います。
Amazon Elastic Container Service のレジリエンスと可用性を Dive Deep | Amazon Web Services ブログ
おわりに
自身がインフラエンジニアということもあり、コンテナワークロードやデータベースに関連するセッションに多く参加していましたが、全体的には生成AI関連のセッションが多くあった感触です。
Keynote や Breakout Session 以外のセッションにも参加してきました。 Workshop や Gamified Learning などは自分の拙い英語でもなんとかなりましたが、Chalk Talk は英語が難しくついていけませんでした (その場で来場者と登壇者で会話が始まり、発表よりもスピーディーに話が進むため)。
Expo は自分がこれまで聞いたこともないサービスに触れる機会となり、今後の手数を増やす意味でも非常に有意義な時間でした。各社で配ってるノベルティーも個性があり面白かったです (個人的にはルービックキューブやキーキャップがお気に入りです)。所感ですがデータ分析系、セキュリティや監視周りは特定数社の規模 (ブースのサイズ的にも) が大きく、スタンダードが決まりつつある感覚を持ちました。一方でクラウドコストの分析・最適化に関するサービスはどれも中規模でこれからの成長が期待されるような印象でした。
AWS が開催する世界最大規模のテックイベントということで、規模も熱量もこれまで参加したイベントとは比較にならないほど大きく終始圧倒されっぱなしでした。エンジニアとしてたくさんの刺激を受けることができました。最後に海外イベントの参加にあたり、色々とサポートしてくれたチームメンバーに感謝です。