はじめに
初めまして。Strategic Products Engineering Unit の小島です。
この記事は Sansan Advent Calendar 2023 18日目の記事です。
私はSansanに新卒として入社して2年目で、普段はOrder Oneというプロダクトのエンジニアとして開発に携わっています。
Order Oneの開発チームでは、発足当時から週に一回、振り返りの時間を作っています。
今までは KPT と呼ばれる振り返り手法を用いていたのですが、メンバーが増えた際に「別の振り返り手法も試してみよう」という流れになりました。その時、ちょうど自分が振り返りの当番だったので、その際に調べた振り返り手法と、その後Order Oneチームで行われた手法についてまとめた、というのが本記事の概要になります。
調べて気になった振り返り手法
象、死んだ魚、嘔吐 - Elephants, dead fish & vomit
https://zenn.dev/wwwave/articles/29a319103d80f1
名前が特徴的なこの振り返り手法ですが、こちらは普段からチームで感じている課題点や、言いづらいことを共有するのに適した手法です。
こちらの手法では、3つのエリアを作成し、それぞれ「象」、「死んだ魚」、「嘔吐」という名前をつけ、各自が付箋をそれぞれの領域に貼ったのちに深ぼる、という方法で振り返りを行います。
それぞれのエリアの意味は以下です。
象 - 口には出さないが、全員が知っている課題
死んだ魚 - 早くごめんなさいをしたほうがいい悩みのタネ。ほっておくと事態が悪化する。
嘔吐 - 人々が断罪されずに胸の内を話すこと。つまり「ぶっちゃけ」。
この手法は、振り返りの際に「雰囲気が重苦しく、メンバーが言いたいことを気軽にいえない空気」を解消するために考案された手法のようで、当時のOrder One開発チームには、そこまでではないものの、振り返りの際に時々雰囲気が重くなることがありました。
そういう意味ではこの手法は是非やってみたいと思いましたが、週次の振り返りの時間は1時間であり、毎週のKPTのP(Problem)で出る数を踏まえると、課題点を挙げて深ぼる時間が取れないと判断し断念しました。
とはいえ先にあげた理由により、やって意味のある手法ではあると思うので、開発に余裕ができた際に長めに時間をとってやってみたいと考えています。
学習マトリックス - Learning Matrix
https://qiita.com/viva_tweet_x/items/6eeb79cc4550f07fec61
学習マトリクスは、Good(よかったこと)、Change(変えたいこと)、Idea(新しいアイデア)、Thanks(メンバーへの感謝)という4つのエリアを作成して、各自で付箋を貼り、それぞれの話題について深ぼるという振り返り手法です。
この手法について気になった点は、Thanksのエリアです。普段の開発業務や改善活動でよく仕事をするメンバーに日頃からお礼を言う機会はあるかと思います。例えば本番環境のアラートに対する対応や、お客様からの調査依頼などの突発的に発生する業務の対応、日々の開発の小さな改善活動を巻き取ってくれることなどがそれに当たります。そのような対応を巻き取ってくれるメンバーに対して、改めてお礼を言う機会があるとメンバーの雰囲気も良くなりそうだと考えました。また、そのような機会は週次の振り返りの時間でやるのが適していると考えたため興味を持ったという背景です。
FDL - Fun/Done/Learn
https://qiita.com/yattom/items/90ac533d993d3a2d2d0f
FDLは、3つの円を重ねたベン図をボードに書き、各自が付箋をそれぞれの領域に貼り付けていく振り返り手法です。
各領域には、それぞれ以下のような意味があります。
Fun - 楽しかったこと
DoneまたはDeliver - 価値を届けられたこと
Learn - 学んだこと
この手法が気になった理由としては、Done、Learnといった成果を可視化できるという点が魅力的に映ったからです。Order Oneは新規事業であり、どうしても改善系活動よりも機能追加が優先される傾向にある、ということが背景にあります。
とはいえこの手法にもOrder Oneで実施するには問題があって、当時のKPTではK(Keep)よりもP(Problem)に多めに付箋が貼られる傾向にありました。FDLでは課題点を挙げるエリアがないため、この手法をそのまま実施するのは当時のフェーズには適さないと考えました。そこで、FDLに加えてP(Problem)を追加したFDL+Pという形で振り返りを実施することにしました。
FDL+Pを実施してみて
こちらが実際に実施してみたボードになります。ツールはFigJamを利用しています。(一部、機密情報を含む付箋は文章を削除しています)
付箋を眺めてわかる事実としては
- Done、Learnが想像よりもたくさん出た
- やはりProblemが一番多く出された
- Funの数が少なかった
かなと思います。
以上のことから、
- Done、Learnが多く出たということで、当初の目的である「成果を可視化できる」という点はある程度達成できたように思います。
- 特別この週が多かった可能性もありますが、やはりProblemは多いので先述した「象、死んだ魚、嘔吐」はどこかのタイミングでやりたいと思います。
- Problem自体は多かったのですが、KPTの時に比べると、ポジティブな内容の割合が増えた(Done、Learnを追加した影響)。 それにより、振り返りの時間の雰囲気も以前より和やかになったように思われます。
- 普段は雑談のような話題も上がるのですが、この回では少なかったです。あくまでも個人の推察ですが、ここに関しては「楽しかったこと」よりも「良かったこと」など業務に関連した内容でもあげやすいようにした方が有意義な振り返りができたのかもと思いました。
という考察をしました。
この辺りに関しては改善点はありそうでしたが、「Done、Learnが多く出た」という点で他の振り返り手法とは異なるメリットもあると感じたので、チームの状態によって適宜改善しながらまたFDLを実施しても良さそうに感じました。
まとめ
週次の振り返りの手法について、自分はあまり重要視していなかったので、従来のKPTを続けていることに対して特に違和感は持っていませんでした。ですが今回自分で振り返り手法を調査し、実際に実施してみたことで、チームの状態によって柔軟に切り替えていくのが適切だと気づきました。
また、FDLのような有名な振り返り手法だとしても、事業のフェーズや開発チームの特性によっては一部項目を追加したり変更したりして調整していくことも重要だと思います。
この後、Order OneではStarFish やMad Sad Grad などの振り返り手法を実施していますが、どちらも意見が上がりにくい項目があるので、調整しつつさまざまな手法を試していけたらと思います。