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R&D 社会科学班の論文読み会 vol.5

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こんにちは。DSOC R&D Group の真鍋です。 有志で行っている社会科学系の論文読み会の報告をします。 この論文読み会、今は会社の中のクローズな会ですが、近日中に外部に開き、他の企業の研究者の方や大学の研究者、学生の方なども交えて行う予定です。 Compass などで参加者を募集するつもりですので、もし興味のある方がいらっしゃればご連絡ください。

それでは早速本題に入りたいと思います。 今回は Burt 御大の 2004 年の論文から始まり、全部で3本です。

1.  Structural Holes and Good Ideas

Ronald S. Burt American Journal of Sociology, Vol. 110, No. 2 (September 2004), pp. 349-399

目的
  • ネットワーク上、仲介(構造的空隙) の場所に位置する人が、社会関係資本を獲得するメカニズムの解明
  • 仮説: 異なる集団を仲介できる人は、多様な情報をまとめて良いアイディアを得やすい。したがって、成果を出しやすい。
  • Structural hole → good idea → good performance
Data
  • アメリカの大手電機会社の サプライチャーンに関わるマネージャー 673 人
  • Director, Vice president, Senior manager
  • 属性情報 (education, race, gender, marital status, age)
  • ネットワークの調査方法: name generators and interpreters
  • 調査において、サプライチェーンの改善に関するアイディアを書いてもらい、二人のシニアマネージャーがそのアイディアを評点する。
Result
  • 仲介の指標が高い (=Constraint が低い) ほど、良い査定が得られやすく、出世もしやすい (仲介と関係資本の関係)
  • さらに、仲介の指標が高い人ほど、評価の高いアイディアを提示できている傾向にある。
  • したがって、異なる組織を結びつける「仲介」的な地位にいる人は、良いアイディアが浮かびやすく、その結果として出世や高い評価などの関係資本を得ることができる、というフローが示唆されている。

2. Game Changer: The topology of Creativity

Mathijs de Vaan, Balazs Vedres and David Stark (2015) American Journal of Sociology, Vol. 120(4): 1144-94

目的
  • イノベーションは多様な知を結合することで生まれると言われる。それをビッグデータで検証
  • ビデオゲーム開発のチームにおいて、チームメンバーの多様性が、革新的な製品を生み出すことに繋がっているか
  • チームメンバーの多様性は以下のように定義
    • チームメンバーの構成が、他のプロジェクトとどれだけ重なっているか(structural folding)
    • 経験スキルにどれだけ違いがあるか(cognitive distance)
Data

Moby Games(データベースの名前)の1979〜2009年の約12000のチーム、約14万人の開発者。

被説明変数
  • Distinctiveness: 属性が他のゲームとどれだけ違うか(属性項目は105種類)
  • Critical acclaim: 評論家からの評価
  • Game changer: stylistically distinctive and highly regarded by critics.
    主な説明変数
  • Cognitive diversity: チームメンバーの属性の差がどれだけあるか
  • Structural folding: グループ間で共通の人がどれだけいるか
主な結果
  • Cognitive diversity は Distinctiveness に対してはプラスに有意、Critical acclaim に対してはマイナスに有意→変わったゲームが生み出されていることは言えるが、専門家の目から見て良いものには見えていない。(専門家の評価の問題?) Structural foldingは一部の推定式を除きプラスに有意→仮説通りの結果

3. The Conversion of Cultural Tastes into Social Network Ties

Mathijs de Vaan, Balazs Vedres and David Stark American Journal of Sociology, Vol 123, No 6

概要
  • 文化的嗜好(cultural tastes)はいかにして社会的紐帯(social ties)へと変換(conversion)されるのか、についての研究。
  • 経済資本、文化資本、社会関係資本など、様々な形態の資本がお互いの間でどのように変換されていくのかという大きな問い
  • 先行研究の問題点:
    • 「音楽」などのシングルドメインでの嗜好にしか着目していなかった。
    • 嗜好の分類が「ハイブロウ」「ポピュラー」といった普遍的な評価に基づくものしかなかった。
    • 「共通した嗜好が多ければ多いほど紐帯が形成されやすい」というメカニズム(=文化的マッチング)しか検討されていなかった。
    • ダイナミクスを検討することができていなかった。
  • 文化的嗜好をいかにして分類するか

    • 外生的(exogenous)次元...ある文化的嗜好に対する普遍的に妥当するような意味
      • 聖別化された文化(consecrated culture): 米公共ラジオ局などの公式的な組織が選んだランキングの中に含まれているかどうかで判断( e.g. モーツァルト)
      • マスカルチャー(mass culture): 曲の売り上げのランキングに含まれているかどうかで判断( e.g. エリック・クラプトン)
    • 内生的(endogenous)次元...局所的な文化的な生態系の中から生まれてくる意味
      • 調査対象の中でどれほど普及した文化なのかで判断(この研究ではfacebookでのfavoriteの割合で見ている)
      • 特殊文化(specialized culture) (e.g. Reel Big Fish)
      • 共通文化(common culture) (e.g. コールドプレイ)
  • 二種類の変換

    • 一般化された変換(generalized conversion)
      • その嗜好を持っていることで、一般的にどれほど紐帯を獲得しやすくなるか
    • 二者的な変換(dyadic conversion)
      • ある共通した嗜好で、二者間がどれほど紐帯形成しやすくなるか
    • これらの変換の程度は上述したような文化的嗜好の種類によって異なるのではないか?
データ
  • アメリカのある大学の学生のコーホート(Wave1でN=1640)のfacebookの情報。
  • 2006年3月から2009年3月まで、年に1回ダウンロード
    • ここに、大学側から提供されたデータを結合する
方法
  • SAOMs(Stochastic Actor-Oriented Models)
結果
  • 住居が同じことや人口学的属性が似ていることはネットワーク形成に対して非常に大きく寄与する。
  • 本の趣味が同じであることはネットワーク形成にプラスだが、映画にはマイナスの影響がある。
  • 趣味の共通度はネットワーク形成に対してプラスの効果を持つ
  • generalized conversionにおいて、common cultureはに対してプラスの効果を持ち、逆にmass cultureはマイナスの効果を持っていた。
    • 有名だが正統的でないmass cultureへの好意を表明することは、調査対象であるエリート大学生にとって「文化的に洗練されていない」と見做されるが故に紐帯獲得をしにくくする。
    • 局所的に広く通用するcommon cultureは、その集団の中での安全な話題として機能し、ネットワークを広げる効果を持つ。
  • dyadic conversionにおいて、specialized cultureだけがプラスの効果を持っていた。

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