Sansan事業部 プロダクト開発部の高橋 洸です。噂の Sansan Builders Box 2018 に潜入してきました!
このポストでは「Sansan、Eightの開発マネジメントの実際とこれから」のセッションをレポートします。このセッションでは、Eight事業部 Global Group スクラムマスターの稲垣 直がモデレーターを務め、Sansan事業部 プロダクト開発部 チーフエンジニアリングマネージャーの大西 真央、Sansan事業部 プロダクト開発部プロダクトマネージャーの加藤 淳、Eight事業部チーフエンジニアリングマネージャー鈴木 康寛によるディスカッションが行われました。
このセッションのテーマはエンジニアリングマネジメント、すなわち、プロダクト開発のパフォーマンスを向上させるため、メンバー個人個人の評価や育成、あるいは組織としての問題の解決にいかに取り組むか、ということでした。
優れた大規模なプロダクトを速いスピードで開発するためには、複数のエンジニアやチームが必要です。しかし40年以上前の名著「人月の神話」の時代から語られているように、複数人での開発は単純に開発生産性を向上するものではありません。
私見で恐縮ですが、世の多くのITベンチャーは「少数精鋭で小規模なプロダクトを素早く開発してリリースする」というアプローチで様々なプロダクトを世に出すことを正義としています。この段階ではエンジニアリングマネジメントに頭を悩ませることはないでしょう。しかし残念ながら、そうした規模のプロダクトは世界でもてはやされるものにはなりません。世界で戦えるプロダクトをつくるためには、大規模な開発チームを抱え、複雑なエンジニアリングマネジメントの問題に立ち向かう必要があります。もちろん Sansan も例外ではありません。
......ちょっと熱くなってしまいました、レポートに戻ります。
セッションの内容は以下のようなものでした。
- パネリストによる LT
- ディスカッション
- Q&A
ここからは当日の流れに沿ってレポートを進めていきます。
LT
Sansan におけるプロダクトマネージャーの役割の変化
加藤によるLT。PdMに求められる能力は組織の状況やビジネスのフェーズによって異なる。SansanのPdMは以前からビジネスサイドの知識が必要になることが多かったが、それに加えて技術サイドの知識の重要性が直近1年くらいで増している。さらに、これまで取り組んでいた課題はユーザーと開発者の距離をいかに近づけるか、というものが多かったが、いまはプロダクトでいかにビジネスとしての価値を出すか、というものが増えている。社内PdMはこうした変化に対応するための仕組みを考えようと奮闘中。
チームとしてどんな文化を目指すか
大西によるLT。理想は、自然と成果が出せ、かつ成長できる文化。リーダーがいないと成果が出ない、という状態はNGで、リーダーはその文化をつくる役割を担う。そのために、メンバーに要求することとして「自分自身で考えてもらう」「自分らしく働いてもらう」の2つ、チームに求めることとして「チームとしての方向性をもつ」「チームとしての成長機会を与える」の2つを挙げる。
開発組織全体に対する取り組み
鈴木によるLT。エンジニアリングマネージャー(以下EM)としての取り組みとして、目安箱を設置して課題の吸い上げと改善に取り組んだことを振り返った。細かい課題を改善できたのは良かったが、全体に対しての取り組みはそう単純ではない。また単方向のコミュニケーションだったので、その背後にどういった思いがあるか、あるいは潜在的な課題は何か、といったことを明らかにできなかった。続けてエンジニアの成長に焦点を当て、これまでは組織として事業に対する成果を求められることが多かったが、これからはエンジニア同士が互いに高めあい、それによって事業をドライブしていきたい、と述べた。
ディスカッション
各パネリストが LT で語った内容について、稲垣を中心にディスカッション。
まず取り上げられたのは PdM の役割について。 PdM の役割として技術サイドの知識を求められるのはなぜか? それは、同じビジネスに取り組む競合が増えているという状況において、我々の強みであるデータをプロダクトで生かす手段を考える必要があるため、と加藤が答える。いま Sansan の PdM には技術的なバックグラウンドをもつ人材が少ないので、採用を強化する、あるいはエンジニアから PdM へのキャリアパスを整備していく方針とのこと。
次に話題は、チーム開発でのサバイバルモード / 学習モード*1の切り替えへ。大西のチームはある時期に納期重視でサバイバルモードとなっていたが、メンバーのモチベーションを下げずに乗り切ることができた。その秘訣はトレードオフスライダー*2。メンバー全員の価値観を一致させ、また、この状況を乗り切ったら学習モードへ移行しよう、と将来を示した。鈴木は Eight の状況を述べる。Eight は事業として利益を出すことを求められるフェーズであり、サバイバルモードの期間が長い。この状況に対して、一人ひとりの成長目標を設定して EM が相談を受けるなどの取り組みを検討している。
大西が LT で主張した「メンバーに自分らしく働いてもらう」についても話が盛り上がった。そのために重要なコミュニケーションは、まずメンバーが自分の強みを知り、リーダーが 1 on 1 で問いを重ねること。チャレンジングなプロジェクトで自信を失いパフォーマンスが下がってしまうことがあるが、自分の軸が見えていたら、そこに戻ることができる。良いプロダクトをつくるためには、人間性にフォーカスを当ててパフォーマンスを発揮してもらうのが効果的、という議論には全員が頷いた。ただし大西は、注意してもらいたいこととして、「自分らしく」だけにフォーカスするのではなく、個人とチームのバランスを両立して初めて効果が発揮される、と述べた。
Q&A
sli.do を利用して会場からの質問に対してパネリストたちが回答。
「メンバーへのネガティブなフィードバックをどうしているか?」という繊細な質問については、そういったフィードバックによって傷つかないよう、日常で当たり前になされる文化が理想的、という話に。個人への攻撃ではなく、チームとして解決しようというアプローチも有用だ。ただしメンバーの性格にもよるため、慎重にアプローチしたい。
「チームにおいてリーダーとメンバーというロールがあることで管理する側、される側、という認識をメンバーがもってしまう。改めてもらうためにどうすればいいか?」という質問もあった。ここでは、メンバーに仕事を任せ、彼らにリーダーシップを発揮してもらうことが重要と回答。ロールについて PdM と開発の役割分担についても話題が広がった。役割の分担は明確で不変なものではなく、権限委譲をどのように行うかチーム内で認識合わせをしていく必要がある、といった議論が盛り上がった。
最後に、稲垣がこれからやりたいことは何か、と3人に尋ねた。加藤は、開発チームとのコミュニケーションの時間を徐々に減らし、仕組み化に取り組む比重を増やしたい、と述べた。大西は、プロダクトの仮説検証とエンジニアの育成。鈴木はエンジニアの評価や 1 on 1 などの仕組みの整備とのことだった。
感想
パネリストたちの熱い議論に耳を傾けていたら時間はあっという間に過ぎていました。進行があまりにスムーズだったため、個人的には「台本があったのかな?」と思っていたのですが、あとで聞いたら、大体のテーマは決まってたけどあとは完全にアドリブだった、とのこと! 驚きました。
聴講された皆様にも、強いエンジニア組織を構築するために Sansan がいかに魂を注いでいるかが伝わったのではないかなと思います。
Sansan はより良いプロダクト開発のために、これからもどんどんエンジニア組織を拡大させていきます。その中で私たちの取り組みがいかに実を結んでいくか、ご注目ください!