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▲The Prism of Creativity ▽ vol.5 未来から考えよう[心理学編]

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こんにちは、DSOC研究員の西田です!

最近、3年間探し求めていた某Cから始まるブランドのハーネスを手に入れ、毎日のように着ています。社内では「何ですかそれ?」と言われることが多く、説明するのがめんどくさくなってきました。それでもめげずに着てこようと思います。

さて、かなり間が空いてしまいましたが、今回はThe Prism of Creativityの連載第5回目の記事となります!(連載を休んでいる間にも国際学会のレポート等を書いていたので、許してください。)


現実に囚われない未来志向

今回、ご紹介する論文(Koh et al, 2019*1)は未来について考えることがクリエイティビティにどのような影響を与えるのかを研究したものです。これまでの連載でも触れてきましたが、クリエイティブなアイデアを生み出すことはそう簡単なことではありません。簡単ではない理由の1つに、人は物事を考える際にすでに存在している知識を元に思考してしまうことが考えられます。つまり、既存のアイデアに囚われてしまい、全く新しいものをなかなか考え出しづらいということです。この前提に立ち、Kohらは「未来を考えることによって、既存のアイデアに引っ張られることはなくなるのではないか?」と考え、「未来を起点に考える状況にあると、現在を起点に考える状況に比べてより高いクリエイティビティを発揮できる」という仮説を立てました。

50年後の世界を考えると、クリエイティブになれる?

上記の仮説を検証するために、大学生117名(内訳:男性30.2%、平均年齢:21.51歳、年齢の標準偏差:1.50)を対象に以下のようなプロセスで実験を行いました。

  1. 未来志向(future-oriented)群、現在志向(present-oriented)群、コントロール群の3つに実験対象者を分ける
  2. 次に、未来志向(future-oriented)群には「50年後の未来について、人々がどのような生活を営んでいるのか出来るだけ鮮明に詳細を記述しなさい」というタスク、現在志向(present-oriented)群には「現在、人々がどのような生活を営んでいるのか出来るだけ鮮明に詳細を記述しなさい」というタスクを与え、コントロール群には何もタスクを与えない
  3. その後、「10分間で出来るだけ多くのクリエイティブなおもちゃをデザインしなさい」というタスクを全ての群に与える。そして、上記タスクのクリエイティブ度合いを目新しさ(オリジナリティがあるか、既存のおもちゃと違いがあるか)と実用性(教育や遊び等の目的を満たすか、安全性のあるものか)という2つの観点で実験について知らされていない評価者に1~7段階の評価をしてもらう。[Creative design tasks]
  4. さらに、Remote Associates Task(遠隔連想課題)等のタスクに取り組んでもらう。Remote Associates Taskとは、一見関連のなさそうな単語を提示して、各単語と共通・関連する単語を回答してもらうという答えのあるタスク。例えば、(fish, mine, rush)が提示された場合、goldが答えとなる問題。[Creative insight tasks]

この実験の結果、下記のことが明らかになりました。

  1. Creative design tasksについて、未来志向(future-oriented)群においては、他2つの群と比較してより目新しいおもちゃを考え出すことができた。
  2. 一方で、Creative design tasksについて、実用性についてはどの群においても差のない結果となった。
  3. さらに、Creative insight tasksについても、未来志向(future-oriented)群とその他の群との間に差が見られなかった。

以上のことから、Kohらは、50年後の未来について考えるタスクを事前に与えた、未来志向(future-oriented)群はより目新しいおもちゃをデザインすることができたので、未来志向は拡散的思考を促して、クリエイティブになれるという結論を導きました。一方で、クリエイティビティのもう1つの要素である実用性については影響を与えないことがわかりました。

この結果は個人的には納得感のあるものでした。私がSansanにジョインしてから2年が経ちますが、研究員としてこれまでにチャレンジされていない解くべき問いを日々考えるのが大きな仕事です。2年間でいくつものプロジェクトで研究をしてきましたが、日々研究を進めていくにつれて、新しい問いを思いつくことが難しくなっていると感じます。おそらく既存の研究に囚われてしまっているからです。しかし、そういったときに、既存のアイデアや研究について全く知らず、名刺交換が今後どうなっていくかに関心のある外部の研究者の方や新入社員のメンバーと会話すると、ふと新しい問いが思いつくことがここ2年間でしばしばありました。これは上記の実験結果と整合的で、普段関わりのない人との交流が現在志向から未来志向に転換させてくれているのだろうと思います。

ということで、なかなかいいアイデアが思いつかないと苦しんだときには、現実を忘れて未来を起点に考え直してみたり、普段あまり関わりのない人に相談してみたりするとクリエイティブなアイデアが思いつくかもしれません!私は、今度研究テーマを考えるブレインストーミングをするときには、この先50年の未来についてみんなで語り合う雑談をしてから、本題にとりかかりたいと思います!


次回のテーマはまだ決まっていませんが、次回もなるべく早いうちに書きたいと思っているので、お楽しみに!(最後にYoutuberみたいですが、)「読者になるボタン」のクリック、よろしくお願いします!笑

*1:Koh, B., & Leung, A. K. Y. (2019). A time for creativity: How future-oriented schemas facilitate creativity. Journal of Experimental Social Psychology, 84, 103816.

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