Sansan Tech Blog

Sansanのものづくりを支えるメンバーの技術やデザイン、プロダクトマネジメントの情報を発信

地方拠点のリードエンジニアとして意識していること

関西支店勤務で、プロダクト開発部のチーム MAIDO でエンジニアをしています、奥野です。

リードエンジニアになってもうすぐ1年、開発部内の関西支店における取りまとめ役として動き始めて8ヶ月になります。
1年たったということで振り返ってみると、地方拠点ならではの課題があり、それなりに向き合ってきたと思っています。

関西支店での自分の役割

Sansan プロダクト開発部として、関西支店には開発チームが2チームあり、それぞれリードエンジニアがチームを率いています。 リードエンジニアは、いわゆる開発プロジェクトのプロジェクトリーダーの役割になり、プロダクトマネージャーを含めチーム外との窓口にもなります。

その2チームをひとまとめにして、関西支店のエンジニア組織として、拠点における環境改善や人材採用などに向き合っています。その旗振り役かつ部門との窓口として取りまとめも行っています。

バックログ一本化の波

私がリードエンジニアに就任した時期に、Sansan プロダクト開発部では大きな変化がありました。
それが「プロダクトバックログの一本化」です。

buildersbox.corp-sansan.com

バックログが一本化されるまでは、開発チームが個々にドメインを担当しており、そのドメインに関するバックログを自己管理し、開発保守を行っていました。
担当外のドメインに携わることはほとんどなく、担当ドメイン内に開発が閉じており、本社の他のチームと関わる必要性はほとんどありませんでした。ドメインをまたぐような問題が発生したとしても、プロダクトマネージャーが交通整理するため、開発チームメンバーが他のチームと調整することは少なかったです。

そのような中で、バックログが開発部全体で一本化されました。
開発部全体として優先順位付けされたバックログに合わせて開発することになりました。そのため、主担当ドメインは継続していたものの、担当ドメイン以外のバックログについても優先順に合わせて開発しなければなりませんでした。
これまでは、関西支店の開発チームの中で閉じていればよかったのですが、そうではなくなりました。

ドメインが変われば、その担当プロダクトマネージャーも変わります。 これまで関わりのなかった、プロダクトマネージャーやデザイナーと開発をすすめることになりました。 また、担当ドメインではないため、他チームのエンジニアの有識者に聞く、レビューしてもらう必要が出てきました。

開発プロセスも統一されたことで、自分たちのやり方で進めること、自分たちだけで意思決定することが難しくなりました。 実際にプロジェクトを進めていく上でも、何度か壁にぶち当たることがありました。

向き合ったこと

リードエンジニアとして、地方拠点の取りまとめ役として、この課題に対して向き合ってきました。 難題が山積みでしたが、これはチャンスでもあると思っていました。

私やチームが、どう向き合ってきたのかを紹介します。

拠点の壁を越えて寄り添う

自分たちのドメインに閉じない。

この1年間で、元々担当していたドメイン以外にも様々なドメイン、機能に対して開発を行ってきました。 現在は複数のドメインの開発を担当することができています。 「このドメインなら、関西のあのチームに任せよう」と言ってもらえることが増えてきたと感じています。 ひとつのドメインに閉じていたら、こうはならなかったであろうと思います。

本社メンバーと拠点メンバーがプロジェクトを通して一緒に働くことで、お互いの顔、性格、価値観を共有することができました。 関係性を築きながら、信頼してもらえる輪は広がってきていると思います。

一方で、「数ヶ月前に比べたら、こういうこともできるようになった。色々なドメインの知識も増えてきた」と自分たちの成長を確認し、チームメンバーにもよくなっていることを伝えるようにしました。 波に飲まれて、自己肯定感も低くなってきた中で、小さな成功体験を積み重ねてきたことで、組織内での自分たちの存在価値を見出し、自信を持つことにつながったと思います。

とはいえ、会社事業としてミッションクリティカルな案件、不確定要素が多い案件にはまだ手を伸ばせていません。
これらは、CxO に代表される意思決定者やフロント部門(カスタマーサクセス、サポート)との意思疎通、関係部署も多くなってきます。 すべてが揃っている本社と同じように地方拠点でできるかと言われると、現状では難しいと言わざるを得ません。

一方で、腰を据えてしっかり作り込むような案件であれば、規模が大きくても開発できるのではないかと思います。現に、関西のチームで、プロダクトとしてインパクトの大きい案件をこなすことが去年できています。そういった実績を積み上げていくことが大切かなと思っています。

同じ関西支店のリードエンジニアである中村が「壁を越えるチームを目指して」と題して登壇していますので、以下の記事もご覧ください。

buildersbox.corp-sansan.com

理解者をつくる

チームのことを理解してくれる、問題に向き合ってくれる、支援してくれる人を本社に増やしていきました。 チームの外から見た客観的なアドバイスをもらったり、ときには本社で働きかけを私たちの代わりに行ってもらったりしています。

さらに、部長をはじめとする部内のマネジメント層と、拠点取りまとめである私が週次で定例会を開催するようにしました。 その中では普段目に見えない関西支店の様子、メンバー状況、チーム目標に対する進捗といった報告をし、チームに対する期待を確認しています。

実は、マネジメント層と会話する機会は1年前まではほとんどありませんでした。 「問題解決するためにはそのあたりの人を巻き込まないとね」という具合に始まった定例会ですが、「上司とつながっている」という状態ができています。 なにかあったときのホットラインとしてすぐに報告相談できる関係性ができたのはよかったと思っています。

リモート会議環境を整備する

Sansan プロダクト開発部には組織デザイングループという部内グループがあります。 このグループでは、開発部のメンバーがより良く働けるように環境改善であったり、制度検討を行っています。

関西支店からも2名、このグループに参画していて、本社と地方拠点間のコミュニケーション課題に対して本社メンバーを巻き込んで改善を試みています。

この半年ぐらいで、組織デザイングループと一緒に推進してきたのが、リモート会議における環境整備です。

リモート会議での利用を目的に、カメラやマイクスピーカーを新たに調達し、会議スペースに設置してもらいました。 リモート会議で対話者の顔が見えない、声が聞き取りづらいと、会議の質が明確に低下します。 カメラの近くに座る、マイクのスピーカーに向かってしゃべる…そういった人の意識を変えるのは一朝一夕にはいかないので、まずは設備から改善しています。

f:id:okuno33:20190911175916j:plain
本社と関西拠点と在宅勤務をつないでの会議もよくある風景になってきました

f:id:okuno33:20200312164959p:plain
朝会をあえて全員リモート参加で試行しています。最近のブームは Zoom ですね

認知してもらう

関西支店配属のメンバーは入社後の数日間、本社研修を受けた後はすぐに関西支店で勤務を始めます。 そのため、本社の雰囲気、本社メンバーをほとんど知る機会がありません。

かくいう私も、入社後1週間しか本社にいなかったため、部外はもちろん、部内にもほとんど知り合いはいませんでした。 そのような中で、リードエンジニアなのだから各方面との調整窓口をお願いねと言われても、つらさしかなかったです。

本社の執務室の出入り口近くに、モニターを設定しています。 関西支店の iPad と定点カメラ的に双方向でつながっており、お互いの様子を見ることができます。 執務室の出入り時に「他のオフィスで働いている人がいる」ということは確実に目に入ります。

f:id:okuno33:20200313123801j:plainf:id:okuno33:20200313123822j:plain
出入り時に自然と目に入る位置に私たちがいます

その他に、大人数でのリモート会議時はカメラOFFにしたくなりますが、あえてカメラONにするようにしてます。
また、全体会議等で関西支店からのトピックス報告がある場合は、本社現地の対面で話す方が伝わりやすいので出張のタイミングを調整したこともあります。
顔出ししたり、前に出るといったことは性に合わないのですが、やれるところからやってこうという感じです。

出張しやすくする

関西支店発着の出張申請フローを整備しました。

対面コミュニケーションするのが最短だとわかっていても、出張理由の基準が明確でなく「こんな目的で出張してもいいのか?」と出張をためらうことが多かったためです。 出張の予算がどれくらいあり、必要性があれば気軽に出張できる仕組みを作りました。

プロジェクトの重要な局面で出張して、対面コミュニケーションで一気に事を進める、意思決定してもらうといったことが格段にしやすくなりました。 また、自分たちが本社に出張するだけでなく、本社から関西支店に来てもらう、呼ぶという逆方向の出張も積極的に推進しています*1

不慣れなオフィスに出張して積極的にコミュニケーションを取っていくのは、(人にもよりますが)気後れするところがあります。 ですが、逆に自分たちのコンフォートゾーンに呼んでしまえば、交流もしやすいですよね。

採用にも向き合う

今年に入ってまだ3ヶ月足らずですが、中途採用で4名ものメンバーが関西支店に来てくれました。 経験豊富な方々を迎えることができましたので、関西支店として層に厚みが感じられるようになりました。

f:id:okuno33:20200312092234p:plain
関西支店のエンジニア数の推移

新規事業開発室への異動をはじめとして、他部署へのメンバー異動が去年は何度かあったため、一時的に関西支店のSansan プロダクト開発部メンバーが減った時期もありましたが、今年に入ってからは賑やかになってきました。関西支店は開発拠点立ち上げ以来、エンジニアの退職者はひとりも出ていません *2 。 Sansan エンジニアだけでなく、Eight や新規事業開発室に所属するエンジニアも含めると、私が入社したときに比べると2倍以上のメンバー数に増えています。

さいごに

どういう拠点になりたいかというのは正直描けていないのですが、「こういうことがしたい!」と誰かが思ったときに、すぐに一歩を踏み出せる地盤づくりはしておきたいと思っています。 一定の要員数、成功体験の蓄積、信頼貯金の蓄積、本社における理解者づくり...といったところでしょうか。

最近入社して関西支店に配属されたメンバーに 「本社との違いを感じない。本社にいるのと同じように働けているのでは?」と言ってもらえたのは実はうれしかったりします。

この1年で変えること、変わることができたのではないでしょうか。


buildersbox.corp-sansan.com

buildersbox.corp-sansan.com

buildersbox.corp-sansan.com

*1:現在はコロナウイルス予防のため、出張は控えるようにしています

*2:公開時現在

© Sansan, Inc.