Sansan Tech Blog

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ジョブ理論に則り、ユーザーフィードバックを整理する。

自己紹介

こんにちは、Sansan事業部プロダクト室の乙幡です。
新卒入社後、最初に配属されたのはビジネス部門で、Bill Oneというプロダクトのインサイドセールスを担当しました。その後、入社2年目の2023年にプロダクトマネージャーへのキャリアチェンジを行い、現在は日々新しいことを学びながら活動しています。

今回は、日々の業務でうまくいったTipsについて振り返りたいと思います。
なお本記事は、Sansan Advent Calendar 2023の7日目の記事です。

ジョブ理論とは

ジョブ理論(Job Theory)は、製品やサービスが市場で成功するための理論の一つで、クレイトン・クリステンセンによって提唱されました。*1この理論の核心は、「製品やサービスが消費者に採用されるのは、彼らが特定の“ジョブ”(仕事やタスク)を完了させたいというニーズがあるからである」という考え方に基づいています。

ジョブ理論において重要なのは、市場を製品やデモグラフィック(人口統計学的特徴)に基づいてセグメント化するのではなく、消費者がどのような「ジョブ」を達成しようとしているかを理解することです。この「ジョブ」は、単に物理的な作業だけでなく、感情的、社会的なニーズを含むこともあります。

例えば、人々がモーニングコーヒーを購入する場合、彼らが実際に求めているのは、目覚めること、一日の準備をすること、あるいは快適な環境でリラックスすることなど、さまざまな「ジョブ」が考えられます。ジョブ理論を用いることで、企業はこれらの「ジョブ」をより深く理解し、より効果的な製品やサービスを開発することができます。

要約すると、ジョブ理論は消費者の行動やニーズを理解し、それに基づいて製品やサービスをデザインするための枠組みを提供するものです。

実際に行ったこと

私が特定の機能改善に取り組み始めたとき、最初に行ったのはユーザーフィードバックの整理でした。

Sansanにおいて、ユーザーフィードバックは、社内コミュニケーションツールであるSlackのチャンネルを通じて集約されています。同僚、営業、カスタマーサクセスのメンバーからさまざまなフィードバックが寄せられ、これらは全社的に収集されます。

例えば、社内ユーザーから「Sansanの〇〇が使いにくい、操作方法がわからない」という投稿や「△△株式会社様から〜〜という意見をいただきました」という投稿などがあります。

これら全社的に集められた数千件のフィードバックは貴重な資産であり、過去2年間の関連投稿をすべて抽出し、機能ごとに整理して一覧化しました。

これにより、ユーザーがどのような機能を求めているかは大まかに理解できましたが、「結局、ユーザーは何を望んでいるのだろう?」という疑問が浮かびました。

プロダクトマネージャーという職種は、一般的に、機能開発を主導する役割と捉えられがちですが、実際には、まず課題を特定し、その解決策として具体的な機能を考案するというプロセスを経る必要があります。

そのため、私はジョブ理論を活用し、ユーザーのジョブを以下の項目に沿って整理しました:

  • 主体(誰が)
  • ジョブ(何を成し遂げたいのか)
  • 実際に寄せられた要望
  • 想定される機能例
  • 現状の障害
  • 代替手段(今、何をしているのか)

Sansanの特定の機能に対するフィードバックは、ジョブ理論に基づく分類により、より明瞭に理解可能となります。

例えば、Sansanには「同僚フォロー」機能が存在し、これにより同僚が登録したコンタクト情報の通知を受け取ることが可能となります。しかしながら、時折、この通知を見過ごしてしまうというケースが多々あるようで、フィードバックとしてリマインド機能の要望が寄せられています。

このフィードバックを受けて考えられる「ジョブ」の例としては以下のようなものがあります:

  • 営業マネージャーが、チーム全体の目標達成を目指し、マネージメントしている部下の進捗を把握したい。
  • 成績が平均クラスの営業プレイヤーが、成果を出している同僚のコンタクトを確認し、自身の仕事の進め方の参考にしたい。
  • 成績トップクラスの営業プレイヤーが、売上1位を目指しているため、ライバルの行動量を把握しておきたい。

これらのジョブの仮説を基にヒアリングを行い、ユーザーの課題を特定します。ジョブの整理により、ユーザーの課題を明確に把握し、プロジェクトメンバー間での議論をより効率的に進行させることが可能となります。

まとめ

社内で収集されたフィードバックをジョブ理論を用いて整理することにより、根本的な問題を理解できるようになります。

これは細かなユーザビリティの改善にも適用可能ですが、特にまだ実装段階にない新たな概念の開発に取り組む際にも、非常に有効なツールとなります。

おわりに

今回は、プロダクトマネージャーとしてのキャリアをスタートした際に、上司の西場から受けたジョブ理論について解説しました。

プロダクトマネージャーとしての業務を開始するまで、ジョブ理論という概念については知らなかったのですが、これは職種を問わず広範囲で活用可能であると認識しております。

プロダクトに関わる多様な職種の方々にとって、ジョブ理論が共通の言語になることで、プロダクトの進化を一層推進することが可能となるでしょう。

*1:クレイトン M クリステンセン, 2017/8/1, ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノンフィクション), ハーパーコリンズ・ ジャパン, 392ページ

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