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【つながりに効く、ネットワーク研究小話】vol.4 「類は友を呼ぶ」の科学

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 Sansan DSOC研究員の 前嶋 です。「つながりに効く、ネットワーク研究小話」の第4回です。
 これまで解説してきた通り、ネットワーク理論の特徴は、私たちのつながりの構造的な側面を捉えるという点にあります。しかし、時として「どのような人がどのような人とつながっているか」というような質的・属性的な側面を考えることもあります。今回の記事では、その一例として「ホモフィリー(homophily)」という現象を紹介します。

ホモフィリーという概念

 ホモフィリーとは、「類似した人々の間の接触は、類似していない人々の間の接触よりも、高確率で発生するという原理」(McPherson et al. 2001: 416)のことです。”homo-”は、「類似した、同一の」という意味を表す接頭辞、”-phily”は「愛着、親近感」という意味を表す接尾辞です。もちろん、このような現象は直感的に明らかで、日本語にも「類は友を呼ぶ」ということわざがあるほどです。ネットワーク研究の世界でも、既に1950年代からこの現象の存在が定量的に示されており、今に至るまで多くの研究が行われています(Lazarsfeld and Merton 1954)。

社会的属性の束としての個人

 社会現象に関する実証的研究では、しばしば個人を社会的属性や地位の集合として捉えます。それらの属性は、性別や人種/エスニシティ、血縁関係などの生得的地位(ascribed status)と、学歴や職業、所得などの獲得的地位(achieved statuss)から構成されます。例えば、このブログを書いている前嶋であれば、「生物学的性:男性」「年齢:26歳」「職業:研究員」…といった属性の束として捉えることができます(…もちろん、現実の人間それ自体が属性の束であると言っているわけではなく、これはあくまで現象を上手くモデリングするための便宜的な「世界の見方」でしかありません!)。学歴が類似した人々の間で接触が発生しやすいという傾向を学歴ホモフィリー、年齢が類似した人々の間で接触が発生しやすいという傾向を年齢ホモフィリー、などと呼びます。

エッジ効果

 
 さて、ホモフィリーという現象は一見すると当たり前の現象を指しており、「本当に研究する価値があるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、必ずしも自明ではない発見も数多く存在します。例えば、これは米国の研究事例ですが、友人関係のネットワークにおいて、最も教育年数が少ない人々(例:教育年数1-6年)と、最も教育年数が多い人々(例:大学院卒)の中で、相対的にホモフィリーの程度が強くなることが確認されています。このように、ある社会的次元の両端においてホモフィリーの傾向が強くなることは「エッジ効果(edge effect)」と呼ばれています(Verbrugge 1977, Marsden 1988)。なぜこの効果が発生するかという点に関しては、「これらの属性を持つ人々が僅かしかおらず、そうでない人々よりも相対的に互いに愛着を感じやすいため」といった説明がなされていますが、今のところ究極的な原因は明らかになっていません。
 私たちはふつう、異なる属性を持つ人々がどのようなネットワークに編み込まれているかを身をもって体感することはできません。しかし、ホモフィリーのような社会学的概念、丹念な社会調査によって得られたデータ、あるいは精緻な計量的分析によって、私たちの「生活実感」だけでは得られない知見が得られる場合があるのです。そのような知見は、自分では直接観察できない、私たちが生きる局所的世界の外部への想像力をもたらしてくれます。

ホモフィリー研究の今後

 
 近年の研究では、現実での友人関係だけでなく、インターネット上でも同様にホモフィリーが発生することが分かってきています。例えば、Twitter上での情報拡散ネットワークにおいては、政治的な傾向に関して非常に強力なホモフィリーが確認されています(Conover et al. 2011)。
 また、ホモフィリーが発生する次元をより包括的に捉えようとする試みもあります。これまでのホモフィリーについての研究は、学歴ホモフィリーや年齢ホモフィリーなど、特定の属性だけの一次元的な検討にとどまっていましたが、次第に多次元性にも注目が集まってきています。ある研究では、例えば、「性別」が同じ人は互いに接触しやすいが、「性別」と「人種/エスニシティ」という二次元での同時的なホモフィリーはむしろ発生しにくいのではないか、ということが指摘されています(Block and Grund 2014)。
 ホモフィリーは一見すると自明に見える現象ですが、実は学術的にはとても掘りがいのある現象であり、社会的分断という現代のホットなトピックにも関連する、とても重要なテーマです。今後の研究の展開がとても楽しみです。

次回は「社会ネットワークと転職」について書く予定です。  

【参考文献】
Block, P., & Grund, T. (2014). Multidimensional homophily in friendship networks. Network Science, 2(2), 189-212.

Conover, M., Ratkiewicz, J., Francisco, M. R., Gonçalves, B., Menczer, F., & Flammini, A. (2011). Political polarization on twitter. Icwsm, 133, 89-96.

Lazarsfeld, P. F., & Merton, R. K. (1954). Friendship as a social process: A substantive and methodological analysis. Freedom and control in modern society, 18(1), 18-66.

Marsden, P. V. (1988). Homogeneity in confiding relations. Social networks, 10(1), 57-76.

McPherson, M., Smith-Lovin, L., & Cook, J. M. (2001). Birds of a feather: Homophily in social networks. Annual review of sociology, 27(1), 415-444.

Verbrugge, L. M. (1977). The structure of adult friendship choices. Social forces, 56(2), 576-597.

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