CTO の 藤倉 です。
当社のデータ統括組織である DSOC にて Google Cloud Platform の利用を開始したことをきっかけに、先日開催された Google Cloud Next '18 Tokyo の基調講演に登壇させていただきました。また、会期中にはそれ以外にもとても貴重な経験ができたので、それらについてレポートしたいと思います。
基調講演
今回登壇させていただいた Google Cloud Next は本当に大きなイベントで、今年は会場もザ・プリンスパークタワー東京と東京プリンスホテルの二箇所を使い、二日間に渡って開催されました。来場者は二日間で 2 万 4 千人も集まったとのことです。基調講演は二つの会場を同時中継でつないで行われました。私には、当然これまでにそんな大舞台に上がる経験があるはずもなく、とても緊張しました。
私の出番はイベント初日である 10 月 19 日(水)朝の基調講演でした。当日は来場者の方々で会場周辺が混むかもしれないと思い、少し早めに会場に入って最後の練習をしながら待つつもりでしたが、いざ本番を前にしたら練習をする集中力が全くなく、"まな板の上の鯉状態" のままイベントが始まってしまいました。
基調講演は非常に華やかな雰囲気で始まり、Google Cloud 日本代表の阿部さんが登場されました。また、そのすぐ後には Google Cloud CEO のダイアンさんの登壇です。もはや練習をする気持ちがなかったので、覚悟を決めて基調講演を楽しめばよかったのですが、どうしても自分の出番が気になってしまってイベントにもあまり集中できません。さすがに、ファーストリテイリングの柳井会長がサプライズで登場する場面などは、我に返ってお話しを聞くことはできましたが。
そして、いよいよ本番です。
基調講演の中での、ユーザ企業の事例を紹介する内容です。Google Cloud でグローバルカスタマーオペレーション部門を率いているポールさんにご紹介をいただき、壇上に上がりました。私のお話は、Google Cloud の勝谷さんとの掛け合いという形で行いました。Sansan が DSOC の持つ名刺のデータ化プロセスで Cloud Vision API を本番利用していることや、すでに GCP 上で動いているマイクロサービスではこれまでに比べて大きなコストダウンが見込めていること、今後はさらに機械学習やデータ分析基盤としても GCP を積極的に利用していきたいことなどをお話しさせていただきました。もう少し上手く話せるとよかったのですが、そこまで酷い出来ではなかったかなと思います。
弊社永井の発表
私の基調講演の登壇に加えて、今回は弊社 DSOC で開発マネージャーをしている永井もビジネス向けのセッションをやらせてもらっていたので、それに参加してきました。永井の登壇レポートについてはこちらにあります。
普段はあまりイベントに登壇することが多くない永井が、相当作り込まれたであろうプレゼンをする姿を、暖かい目で見守っておきました。
Leaders Circle
会期中、Google Cloud Next に合わせて来日される Google Cloud 幹部の方々との交流の場として、Leaders Circle が開催されました。弊社からは取締役で CISO 兼 DSOC センター長をしている 常楽 と私で参加させていただきました。
Leaders Circle には、すでに G Suite や GCP を利用されていたり、これから本格的に利用されようとしている数十社の国内トップ企業におけるビジネスリーダーの方々が参加されていました。日本代表の阿部さんや CEO のダイアンさん、グローバルカスタマーオペレーションのポールさんがお話しする中、光栄にも Leaders Circle の基調講演として常楽も登壇させていただいています。
参加企業の中には弊社の Sansan をご導入いただいている企業様もいらして、わざわざお声をかけてくれて応援していただけたのは大変嬉しかったです。
ポールフェランド氏とのプライベートミーティング
イベント二日目の 20 日朝には、基調講演で私を呼び込んでくれたポールさんとのプライベートミーティグを設定していただけました。ポールさんはカスタマーオペレーション部門トップとして、日本における顧客企業の声を聞こうとされている真摯な方でした。
改めて我々のビジネスの状況や、今後 GCP に期待していることなどを直接お伝えすることができました。GCP がさらに発展し、多くの企業にとってさらに有効なプラットフォームになっていってくれることを期待しています。
グレゴールホープ氏とのプライベートミーティング
さて、いよいよ 20 日午後には、Google Cloud の Office of CTO のメンバーであり、現在はシンガポールで技術ディレクションを担当されている グレゴールさん とお会いすることができました。この会期中の全ての出来事が私にとっては大変貴重な体験だったのですが、このグレゴールさんとのミーティングは格別です。なぜならば、彼は、私のバイブル的書籍の一冊である Enterprise Integration Patterns(以下、EIP)の著者だからです。
EIP は、複数の分断されたシステムを連携させるための統合パターン集です。一つ一つはソフトウェアシステム開発の歴史の中で発明されてきた個別の技術ですが、それぞれを網羅し、技術的本質の側面から構造的に整理された素晴らしい試みです。このようなパターン集は眺めるだけでも楽しめます。
お会いして早々に、私が長年この本を愛読していて、グレゴールさんにお会いできることを楽しみにしていたことを、かなり高いテンションでお伝えしてしまったほどです。
グレゴールさんは、米国 Google で検索エンジンの開発に携わられた後に、一度別のエンタープライズ企業にて CTO を担い、再び Google に戻ってきたという経歴をお持ちです。私も CTO として、社内のエンジニアが最大の成果を出せるようにするために必要なことを日々考えています。それらの質問に対して、エンジニア文化や評価、育成について、これまでのご経験を元に多くの示唆に富んだご意見を聞くことができました。
特に感銘を受けたのは、グレゴールさん自身が HRT の原則の考え方を強く貫いていることでした。HRT の原則とは、書籍 Team Geek - Google のギークたちはいかにしてチームを作るのか で紹介されているもので、謙虚 (Humility)、尊敬 (Respect)、信頼 (Trust) の三つの価値を大切にしていくことがエンジニアの成功につながるという考え方です。グレゴールさん自身が非常に謙虚な方であり、このミーティング中も常に真摯な対応をしてくださいました。また、社内のエンジニア達を信頼するからこそ自由を与え、尊敬によってその成果をかなり厳しく評価されているようです。
このミーティングを通じて、グレゴールさんは私にとっての憧れの著者というだけでなく、尊敬する CTO の先輩にもなりました。
(あまりの感激と高揚によって、グレゴールさんと一緒に写真を撮ることすら失念していたことに後になって気づきました。残念でしかたありません)
まとめ
今年の Google Cloud Next Tokyo では、短い期間でかなり濃密な体験をすることができました。準備を含めて大変だった部分も多いですが、とても楽しかったです。
当日の基調講演の様子は YouTube にも上がっているようです。