こんにちは。Sansan事業部プロダクト開発部の谷内です。
Sansan入社以来、プロダクト開発の現場でチームリーダー・エンジニアリングマネージャー・プロダクトマネージャーをしてきました。2019年の6月からプロダクト開発部の目線から育成・評価・採用・組織体制の構築などに向き合っています。
本稿は1on1に関わるすべての人に向けて、1on1とコーチングに関する2回分の勉強会レポートをまとめてお届けします!
私が最近取り組んでいることをお知らせしつつ、1on1に関する知見を共有できれば幸いです。いつものSBBとは少し毛色の変わった記事になりますが、お付き合いください!
1on1に対する関心の高まり
私の知る範囲においては、Sansanの開発チームでは2016年頃から1on1を行っています。チームリーダーがメンバーに対して、1対1で30分話す時間がありました。
最近は様々な媒体で1on1が取り上げられており、エンジニアの勉強会においても1on1に関するトピックが当たり前になってきました。各所で1on1が必要・不要だという議論が見受けられること自体、1on1に対して関心が高まっている証拠であるとも言えます。
そのような流れを感じながら、2019年の6月と7月に「エンジニアのためのコーチング入門」と「エンジニアのためのコーチング体験型勉強会」を開催しました。イベントページを公開後1日で定員の2倍になる応募があり、エンジニア、マネージャーやエンジニアリングマネージャーの1on1に対する関心の高さを感じました。
エンジニアと1on1と…コーチング?
勉強会レポートの前に、私が「エンジニアとコーチング」という風変わりなテーマで勉強会を開催するに至ったきっかけをお伝えします。
私がコーチングに出会ったのは「コーチャ」という社内制度でした。Sansanでは誰でもコーチングを受けられます。
冒頭でご紹介した通り、私はエンジニアから次々と役割を変えていく過程で、自己の変容を求められる場面が多くありました。自身で考え抜き、行動から学習を促し、自身が求めるものの解像度を高め、視点を変えて力強く選択するきっかけを与えてくれたのがコーチングでした。
私はすっかりコーチングに魅了され、ICF(国際コーチ連盟)の認定プログラムを実施している機関*1でコーチングを学びはじめました。そして驚いたことに、コーチングの学びを通じて、コーチングのエッセンスやベーシックな考え方は1on1においても十分活用できることを知りました。
よく考えてみると、1on1について学ぶ機会を探してもほとんど見つかりません。1on1を実施している組織においても1on1を教える人がいないという状況ではないでしょうか。
コーチングの素晴らしさを伝えながら、1on1で困っている人たちの役に立てないだろうか? と思ったのが開催のきっかけでした。
勉強会レポート
それでは早速、1on1とコーチングに関する2回分の勉強会レポートをダイジェスト版でお届けします。ぜひ登壇された皆さんのスライドも合わせてご覧ください!
結構ボリュームありますので、休み休み読んでいただけると嬉しいです。
エンジニアのためのコーチング入門(2019/06/11)
1on1はコーチングのみならずフィードバックやティーチングの時間とも言えますが、いわゆる公式の定義はありません。それゆえ体系的に学ぶ機会が少なく、試行錯誤しながら行っている方が多いのではないでしょうか。
この勉強会では、コーチングの専門家がコーチングについて語り、開発の現場で1on1を行ってきた立場からコーチングのスキルを活かせる場面を紹介し、コーチングの体系的な側面と1on1での具体的な活用についてお伝えしました。
会場はLAPRASさんの無料で使えるイベントスペース「LIVING by LAPRAS」をお借りして開催しました! ありがとうございました!
LAPRAS株式会社さんに来ています!
— たにさん(tany3) (@tany3_) June 11, 2019
#engineer1on1 pic.twitter.com/b7jy0JTITD
1. 人と話すことが苦手な人の方が、コーチングは上手くなる / 三橋 新
コーチングの専門家として、認定資格 CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)を取得した弊社の社内コーチ、三橋にコーチングについて語っていただきました。
自分を話し下手と感じるエンジニアは多くいらっしゃるのではないでしょうか。それを覆す「人と話すことが苦手な人の方がコーチングが上手くなる」というフレーズはなかなか衝撃的でした。その理由として「コーチングは自分のことを話さなくていい」という点を挙げており、私にとっても心強いものでした。
コーチングとは相手を主体とした協働作業で、好奇心・問い・オウム返しが有効であることは知られていないと思います。エンジニア的な表現をすると、テディベアのぬいぐるみに話しかけたら思考が整理できる*2のと似ているかもしれません。
コーチングはコーチが意図的に相手をコントロールするものではなく、相手を主体としてコーチとともに協働して行われるものです。そしてコーチは相手の可能性を信じる在り方(Being)が求められます。ピグマリオン効果*3やゴーレム効果*4という好例がある通り、自分の在り方が相手にどのような影響を与えているかを理解して、相手と向き合うことの重要性を感じました。
2. 1on1におけるコーチングスキルの活かし方 / 谷内 真裕
次は谷内がエンジニアの1on1あるあるを織り交ぜながら、すぐに活用できるコーチングスキルの活かし方や練習方法についてお話しました。
今回は1on1セッション中の自己管理と場作りについて多く時間を割いてお話しました。
1on1をつらいものにしている無意識な囚われを見つけ、1on1の最中に出てくる「自分の内なる声」を横に置き、相手に焦点を当てるという自己管理についてお話しました。
また、話題がなくて「特に話したいことはありません」が起きるという例から、1on1の大半の悩みは場作りにあるというお話をしました。何でも話せる安心安全な場を作ることはとても難しいです。何の目的で1on1をしているか分からないという話も色々な場所で見聞きします。そこで、お互いにとって良い場となるようなヒントをいくつかお話しました。
3. エンジニアリングマネージャー育成におけるコーチング / 安西 剛
株式会社チームボックスの安西さんに、エンジニアリングマネージャーをどう育成すればよいか? をテーマに、エンジニアリングマネージャーに必要な要素を語っていただきました。
いまの時代は「VUCAの時代」と称されています。VUCAの時代では強いリーダーシップだけでは通用しないと言われており、オーセンティックに「自分らしさ」を貫いている人が活躍すると言われています。マネージャーだから、リーダーだからという思い込みを手放し、いかに「自分らしさ」を貫けるかが求められています。
オーセンティックであることのポイントとして「自己認識力(セルフアウェアネス)」「弱さを認める(ヴァルネラビリティとセルフコンパッション)」「弱みや恥を他人に話す(さらけ出す)」が挙げられており、学習を続け、一貫性と覚悟を持ったオーセンティックなエンジニアリングマネージャーを育成するための指針を教えていただきました。
エンジニアのためのコーチング体験型勉強会(2019/07/25)
前回の勉強会とは趣を変え、実際にコーチングを体験することで明日から実践していくことを目的に体験型の勉強会を開催しました。
はじめにコーチングで使われる好奇心、拡大質問、認知や反映と呼ばれる基本的なスキルの説明と、認知と承認の違いについて説明しました。その後は実践・実験の場として、これらのスキルを実際に使ってみるという体験型の勉強会となりました。
実際には3人一組でコーチ・クライアント・オブザーバーの役割を交代で担当します。3セッション行うと全ての役割を体験でき、参加者が均等に学べる場としました。
1on1やコーチングは個人的な話題をテーマにするため、守秘義務を含めたグランドルールをお伝えし、同じ事柄を体験しに来ている前提をもとに安心安全な練習場所、転んでも平気な実験の場を作り上げることを意識しました。
このような勉強会を初めて開催しましたが、お越しいただいた皆さまの熱意がとても高く、ファシリテートする私としては驚くほどスムースに進行できたことが嬉しかったです。改めてお越しいただいた一人ひとりに感謝を伝えたいです。ありがとうございました!
勉強会レポートを書いていただいた方がいらっしゃるので詳細が気になる方は合わせてご覧ください!
※他に書いていただいた方がいらっしゃるかもしれません。見つかった分ということでご容赦ください!🙏
※2回の勉強会を一貫してご協力いただいた安西さん、三橋さんには感謝の気持ちを伝えずにはいられません。また一緒に勉強会やりたいです😍
結びに
最後までお読みいただきありがとうございました!
1on1やコーチングの実践において、スキル(Doing)を使う以前に実施する側の在り方(Being)が求められていることを改めて感じた勉強会でした。エンジニアリングマネージャーも同様で、私自身の体験を思い返すと実行力と同等に在り方が求められる場面が多くありました。
また、コーチングとコーチとしての在り方は、1on1のみならず実生活に根ざして様々な場面で応用できます。探求すると終わりがなく奥が深いという点においてコーチングとエンジニアリングは通ずるものがあります。
今後も引き続き勉強会などを通じて、1on1で使えるコーチングのエッセンスをお伝えしていきます。1on1やコーチングに興味を持っている方とともに学びの場を作っていきたいと思います。
長くなりましたが本稿を読まれた皆さまにとって、ひとつでも新たな知見や気づきがありましたら幸いです。