Sansan DSOC研究員の前嶋です。「つながりに効く、ネットワーク研究小話」の第12回です。静電気が怖いので、オフィスでは放電のために靴を履かずに過ごしているのですが、気を抜くとすぐに”””バチッ”””ときます。とても悲しいです。おすすめの対策法があれば教えてください。
この連載の第1回目「切れやすいつながりの見つけ方」では、「橋渡し的なつながりは消失しやすい」という研究を紹介しましたが、今回は逆に、「強いつながりとは何か?」という問いに対して、現在のネットワーク研究で分かっていることを紹介しようと思います。
古典的な理解
社会学者のマーク・グラノヴェッターは、かの有名な「弱い紐帯の強さ」論文の中で、「強いつながり」の条件を4つ提示しています。曰く、つながりの強さは「時間」「感情的な強さ」「親密さ」「相互的サービス」という4つの要素の組み合わせから構成されます(Granovetter 1973)。ちなみに、なぜグラノヴェッターが「強いつながり」という概念を必要としたかについては、以下の拙稿を御覧ください。
bnl.media
グラノヴェッターによるこの整理は、データによって実証されたものというよりは、彼による直感的な整理であり、その妥当性は後続の研究に委ねられました。
つながりの強さの「要因」と「測定」
初めて「つながりの強さ」それ自体に焦点を当て、これを実証的に検討したのがMarsden and Campbell(1984)による研究です。
まず、強いつながりの条件を2つに区分する必要があります。1つ目は「要因(predictor)」=「どのような要素があればつながりは強くなるのか」という次元で、2つ目は「測定(indicator)」=「何を測ればつながりが強いと言えるのか」という次元です。彼らは、どのような要素が要因、あるいは測定となり得るのかを検討しました。
デトロイトで行われた大規模な社会調査データを分析した結果、「感情的な強さ」と「親密さ」は、つながりの強さを「測定」する要素として最も優れていることがわかりました。一方で、「要因」としては、隣人や同僚という関係性が弱い一方で、親族関係が強いことが分かっています。
この研究では実は他にも様々な結果が得られているのですが、エビデンスとしては弱いものです。というのも、つながりの強さと関連する変数同士は強く相関しているため、厳密な影響がわかりにくくなるためです。そのため、グラノヴェッターによる整理の妥当性については、今でも議論が続いています。
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