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ナラティヴと向き合う

CTO の藤倉です。

先日、組織論・経営戦略論研究者であり埼玉大学大学院准教授の宇田川先生と、Biz/Zine という Web メディアで対談をさせていただきました。これは、その対談の後記です。

この対談企画は、宇田川先生の著書である『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』出版を記念して、宇田川先生が様々な方と対談をするというものの一つです。対談記事は前編と後編で公開されました。

bizzine.jp

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他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

  • 作者:宇田川 元一
  • 出版社/メーカー: NewsPicksパブリッシング
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 単行本

こちらの本には、経営学者として多くの経営者の方々と語り、そこで得られた宇田川先生の知見がふんだんに盛り込まれています。全編を通じて多くの気づきと示唆を与えてくれるのですが、私が考える本書の最大の功績は、人がそれぞれに持っている倫理観や組織文化などに基づく解釈の枠組みを「ナラティヴ」という言葉で言語化してくれたことだと思っています。言語化されることで多くの人と共通の認識が持てるようになり、議論の俎上に載せることができるようになりました。

そして、ナラティヴの溝に起因する問題を適応課題として捉え、課題解決に向き合う姿勢を示してくれます。つまり、これらは属人的で解決不可能なものではなく、正しいアプローチによって解決することが可能な課題であるということを意味するのです。(本書の中では撤退も重要だと説いており、全てが解決できる魔法の書ではないことも重要です)

この種の課題は、多くの方が組織の中で経験しているのではないかと思います。

もちろん私もそうです。これまでマネージャとしての職務を行う上で何度も直面し、その度に自分なりの対応方法を考えてきました。本を読み進めながら、これまでの経験を振り返り、自分がやってきたことの本質を知る。自分がしてきたことに名前が付いていて、整理された状態で理解できる。そんな体験を繰り返しました。

この本は、組織で働く全ての人にお勧めできます。周囲の方々との相互理解、合意形成に課題を感じ、それを解決したいという意欲が強い方には特にお勧めです。

宇田川先生と私

宇田川先生と Sansan の関係は比較的長いようです。社内での会話でも以前からお名前はよくお聞きしていましたし、お見かけすることもありました。しかし、私自身が宇田川先生とお仕事をさせていただく機会はなく、私が一方的に存じ上げているという片想いの状態だったわけです。

そんなある日、一つのツイートが目に飛び込みます。

宇田川先生がなぜか私のことをツイートしている。。。

そして、このツイートの直後、偶然にも社内でお会いします。ツイートを拝見した嬉しさもあり、謎のテンションで無邪気に話しかけました。「今はこんな色ですよ」と。宇田川先生ご本人は非常に気さくな方です。そんな風に急に近づく私に対しても優しく対応してくださりました。そこで初めて宇田川先生とお話しをして、「まだどこかでじっくりお話ししましょう!」とお別れしました。

この会話が今回の対談のきっかけになっているのかもしれません。

そして対談

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対談は、当社の表参道本社にある会議室で行いました。
組織のマネジメントについてお話しをするということが普段からあまりなかったこと、宇田川先生に促されるままに自らの経験や考えを引き出してもらえたことが本当に気持ちよく、非常に充実した対談となりました。

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最も強く印象に残っているのは、後編で記事になっている合理性にまつわる話です。

これまで私は、社内の人々を全力で信頼するというところから関係性を構築することを信条としてきました。これは、お互いの信頼関係がなければよい仕事ができないと思っていることに起因します。特にマネージャというロールを担うときには、メンバーから信頼してもらえなければ仕事ができません。相互の関係を作るには何らかのきっかけが必要です。そして、マネージャとしての自分の方にこそ、その動機が強くあるわけです。この話をしたとき、宇田川先生はご自身の著書へ向けられた意見を交えながら「合理性」という言葉で整理してくださいました。我が意を得たり。まさに、私が思っていたことを力強く端的に説明されました。以降、この種の話をするときには使わせてもらっています。

これまでにやらせていただいた対談の中でも、私の熱量は最大級のものとなりました。

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対談を終えて

とても気持ちの良い対談だったわけですが、一つだけ自分の心にささくれのように残っているものがあります。

それは、「自分のナラティヴを脇に置く」ということを、自分が本当にできているのかという問いです。上に書いたように、自分は相手を信頼するということを心がけています。ただ、この行為もまた、自分のナラティヴから相手を見ているように思うのです。自分のナラティヴを脇に置いて相手のナラティヴに飛び移るということは、想像力を働かせて自らの囚われの向こう側にある物語を読むということ。

これはすごく難しいことなのだと思います。ただ、所属する組織が成長して、自身の役割にかかる期待が大きくなれば、より高い精度でできなければならないはずです。この点を今後の私自身の成長余地として、向き合っていこうと思います。



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