Sansan Tech Blog

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ウェブサイエンス研究会オープンセミナーで登壇しました

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Sansan DSOC研究員の前嶋です。季節の変わり目なので、風邪予防のためにどんな栄養素を摂るべきなのかを日々調べています。こういう時、Cochran LibraryやPubMedを使うと、医学・公衆衛生の最新の研究成果に簡単にアクセスできるので便利ですね。

さて、10/7(日)にフューチャー株式会社で行われたウェブサイエンス研究会オープンセミナーで登壇しました。
ウェブサイエンス研究会は人工知能学会の研究会の1つで、「人間と技術の調和的協働のあり方を考える」ことが主旨となっています。非常に学際的な研究会で、文理の壁を超えて数多くの研究者・実践に携わる方々が議論・交流を行っています。
今回のオープンセミナーのテーマは「クリエイティブコミュニティ 〜現場とデータから考えるコミュニティ形成〜」で、アーティストや研究者の方々がそれぞれの視点からコミュニティとクリエイティビティに関する取り組みや研究を発表されていました。
私からは、ネットワーク理論的なコミュニティ観を紹介し、クリエイティビティを増幅させるネットワーク構造とはどういうものか、というトピックについて発表を行いました。

ネットワーク理論から見た「コミュニティ」

通常、「コミュニティ」は、地理的な近接性や同一の組織への所属関係によって捉えられることが多いと思います。「地域コミュニティ」であれば、同じ地域に住んでいる人々の集団のことを指すのが一般的です。
一方で、ネットワーク理論では、人=ノード、人と人との関係性=エッジの集合として捉えます。ネットワーク理論の文脈では、「コミュニティ」という用語は、ネットワークの中で特に関係性が濃いところを指して言うことがあります。このような認識の仕方によって、人と人のつながりの構造的な側面を、数理的・統計学的な分析が可能になります。

ネットワークとクリエイティビティ

セレンディピティという言葉をご存知でしょうか。セレンディピティとは、幸運によって予想外のものを発見することを指します。科学の歴史において重要な発見は、このセレンディピティにもたらされたものが多いと言われています。
セレンディピティは、その発生メカニズムに応じて細かく分けていくと「理論主導型」「観察者主導型」「エラー生成型」、そして「ネットワーク創発型」の4つに類型化されると言われています(Roberts 1989)。「ネットワーク創発型」のセレンディピティは、ある種の人と人とのつながりによって誘発されます。では、どのようなネットワークが、新しい発想を生むのでしょうか。
考え方の1つとして、「どれだけ多様な情報に触れられるか」が、クリエイティビティを増幅させるというものがあります。発表では、組織のネットワーク構造と、その中で流通する目新しい情報量の関係性についてお話をしました。詳細はこちらのBNLの記事をお読みください。

Sansan DSOCの挑戦

私の発表の最後では、DSOC (Data Strategy & Operation Center)の挑戦について紹介させていただきました。DSOCでは、単なる「知り合い」の推薦に留まらず、社会ネットワークから新たな価値を生むようなサービスを実験的に提供しています。そのプラットフォームがSansan Labsです。
例えば、「ヴァーチャル組織図」というサービスは部署にとどまらない人間関係を可視化し、「ビジネスマンタイプ分析」というサービスはユーザーの社内・社外両方でのネットワーク作りの傾向をスコア化し、チーム編成の参考になるような情報を提供しています。

参加してみての感想

全体を通して、非常に有意義な研究会だったと思います。パネルディスカッションでは、アートによって「コミュニティをつなげる」という志向性を持った方々との討議も行うことができ、非常にいい刺激となりました。DSOCは理論やデータに基づいたプロダクトを通して同じ課題に向き合っていますが、同じようなミッションに対して異なるルートからアプローチが可能なのだと改めて気付かされました。

【参考文献】
Roberts, R. M. (1989). Serendipity: Accidental discoveries in science. Serendipity: Accidental Discoveries in Science, by Royston M. Roberts, pp. 288. ISBN 0-471-60203-5. Wiley-VCH, June 1989., 288.

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