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▲The Prism of Creativity ▽ vol.4 ハイブリッド型ブレインストーミング[心理学編]

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こんにちは、DSOC 研究員の西田です!
最近は、チョーカーを買いましたが、首につける気にはなれず、腕に巻いています。ちょうどいい感じです。もちろんCから始まるブランドのものです。


さて、少し間が空いてしまったので、まずは前回のブログを復習していきましょう!

前回のブログでは、クリエイティブなアイデアを考えるためには、1人で考える時間が重要であるという研究を紹介しました。1人でいるときに、脳のDefault Mode Networkが活発になり、アイデアを思いつきやすくなるというメカニズムによるものです。そして、最後に仕事などのブレインストーミングはチームで行われることが多いことから、「1人でアイデアを考えるのが良いのか、チームで考えるのが良いのか?」という問いかけをしました。

そして、その答えは、Sansan Innovation Project 2019 の「Think Different とは何か?」というセッションで予防医学者の石川善樹氏と経営学者の永山晋氏とともに発表するという、記事広告感溢れる展開で終えたのが前回のブログでした!(笑)

ということで、今回はそのイベントの内容を書こうと思っていましたが、Logmiさんの記事や弊社オウンドメディアBNLのレポートが既にアップされてます! 前回から結論が気になっていた方はこちらを読んでみてください!

bnl.media


logmi.jp

簡単にまとめると、下記の通りです。

  1. 脳科学の研究から、「生成」「選定」「評価」のプロセスでは、それぞれ「Default Mode Network」「Salience Network」「Executive Network」と呼ばれる脳の異なる部位が活性化することがわかっている
  2. 凡人の脳はこの3つのネットワーク同士の結びつきが弱いのに対し、「天才の脳」では3つが強く結びついている
  3. アイデアの「生成」に必要な「Default Mode Network」は1人の時に活発になりやすく、アイデアの「選定」に必要な「Executive Network」はチームでいるときに活発になりやすい
  4. したがって、1人の時にアイデアの「生成」や「選定」を行い、複数のアイデアを結びつけるような内省のプロセスを踏まえた上で、複数人のミーティングに参加し、アイデアの「評価」を行うことで「天才の脳」に近づける

上記の結論と前回のブログの内容を踏まえると、チームで考えるタイミングを気をつけた方がいいということになります。それでは、どういうタイミングでチームで考えるのがいいのでしょうか? 今回はこの問いに答えるべく、ブレインストーミングに関する研究(Korde and Paulus, 2017)*1をご紹介します。


どうしてチームで考えたくなるのか?

チームで仕事をするとなると、とりあえず「みんなで集まってブレインストーミングしよう!」となりがちです。どうしてチームで考えたくなるのでしょうか?

チームで考えることのメリットはたくさんあります。代表的なものを1つあげるとするならば、チームメンバーの意見に触発されて、色々とアイデアを思いつきやすくなることが挙げられます。自分では思いつかなかった視点からのアイデアを共有されることで、自分の視野が広がり、さらにアイデアを思いつきやすくなるなど経験された方も多いと思います。したがって、とりあえず集まって話したいと思ってしまう方も少なくないと考えられます。

一方で、チームで話し合うことにはデメリットもあります。Face to Faceでの話し合いとなると、1人ずつしか発言することができません。そうなると、発言したり意見を交換したりする時間に当然ながら制約がかかってしまいます。例えば、1人のチームメンバーのアイデアが話題に中心になってしまうと、効率的にチームメンバーの意見を聞くことができなくなります。あるメンバーが良いアイデアを思いついていたとしても、思いついた本人が時間の関係上共有することを省略してしまうことも考えられます。

また、チームの一部のメンバーが活発に意見することで、他の人は意見を言わなくてもいいと「フリーライド」してしまう可能性もあります。

このように、チームでのブレインストーミングには一長一短があります。

いつチームで考えるべきか?

それでは、どういったタイミングでチームで考えると良いのでしょうか? チームで考えるタイミングについては、以下の2つのプロセスが考えられます。

  1. 個人で考えてから、チームでも考える「個人→チーム」の思考プロセス
  2. チームで考えてから、個人でも考える「チーム→個人」の思考プロセス

それぞれのプロセスでは、どのような違いがあるのでしょうか?

1つ目の「個人→チーム」の思考プロセスでは、個人で考えたときに良いアイデアを思いつくなどの高いパフォーマンスが発揮できれば、チームで考えるときに周囲も感化されて生産性の高いブレインストーミングを実現できるようになるというメリットがあります。つまり、チームメンバーがいいアイデアを持ってきたので、負けじと他のメンバーもブラッシュアップしたアイデアを考え出していくということです。ただし、逆も然りで、各々が考えてきたアイデアの質が低ければ、その後のチームでの話し合いのパフォーマンスも期待できないものになってしまいます。

2つ目の「チーム→個人」の思考プロセスでは、チームで考えたときにメンバーのアイデアに感化されたり、チーム内で出たアイデアを振り返るなどして、個人で考えるときにより良いアイデアを思いつくというメカニズムが考えられます。

このメカニズムで有名な例としては、アインシュタインが相対性理論を思いついた時の話が挙げられます。彼は、友人とディスカッションした後、1人部屋に閉じこもって相対性理論を導いたそうです。

以上の2つのプロセスより、単に個人で考えたり、グループで考えたりするよりは、個人でもチームでも考えた方がより良いアイデアを考え出すことができそうです。

ハイブリッド型ブレインストーミング!

Korde and Paulus(2017)では、下記2つの問いに答えるべく、ブレインストーミングの実験を行いました。

  1. 個人 or チームだけで考えるよりも、どちらでも考えた方がいいのか?
  2. どちらでも考えるとき、「個人→チーム」or 「チーム→個人」のどちらのプロセスがいいのか?

具体的には下記4つのパターンを用意し、8分間を1回としたブレインストーミングを4回行うという計32分間の実験です。どのパターンの方がたくさんのユニークなアイデアを見出せたかという指標で評価を行なっています。

  1. 個人→チーム→個人→チームの順で考える
  2. チーム→個人→チーム→個人の順で考える
  3. 個人のみで考える
  4. チームのみで考える


結果は、「個人→チーム→個人→チームの順で考える」の方が「チームだけで考える」よりもたくさんのアイデアを生み出せましたが、その他のパターン間では統計的に差がないということが明らかになりました。一方で、個人とチームで考える順序については特に大きな差は見られませんでした。したがって、個人とチームのどちらでも考えた方が良いということが一部支持されたものの、個人とチームで考える順序については重要ではないことがわかりました。

さらに、チームで考えたときはアイデアの数が少ないが、その後の1人で考えたときにはアイデアの数が増えていることがわかりました。チームで考えるプロセスが1人で考えるときにも影響を与えていることがわかります。前述したアインシュタインの例とも一致する結果です。

また、個人で生み出されるアイデアの数も多いこともわかりました。これは、1人でいるときに、脳のDefault Mode Networkが活発になり、アイデアを思いつきやすくなるという前回のブログと整合的です。



以上のことから、チームだけで考えるのではなく、1人で考えるというプロセスを忘れないということが言えます。1人で考えるというプロセスは、脳科学的にもアイデアを考えるのに適していますが、チームで考えた後に感化されることもこの実験からわかったので、チームで考えた後にも1人で振り返って考えてみることが重要そうです。

したがって、クリエイティブなアイデアを生み出すためには、個人でもチームでも考えるプロセスを踏まえたハイブリッド型のブレインストーミングが適しているのです。

実際には、どうしても初めから1人で考えるのに気分が乗らない時もあると思います。そんなときはチームメンバーを集めて考えてみるのいいでしょう。しかし、それで終わるのではなく、1人で考えることを忘れないようにすることが大切です。チームメンバーが優秀であっても、自分を信じて考え抜くことがクリエイティブなアイデアを生み出すのには必要なのだと思いました。

長くなりましたが、今回は以上です!

次回のテーマはまだ決まっていませんが、クリエイティビティに関する面白い研究を紹介したいと思います!では!

*1:Korde, R., & Paulus, P. B. (2017). Alternating individual and group idea generation: Finding the elusive synergy. Journal of Experimental Social Psychology, 70, 177-190.

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