Sansan Tech Blog

Sansanのものづくりを支えるメンバーの技術やデザイン、プロダクトマネジメントの情報を発信

【鈴木対談】進化する組織

こんにちは。Sansan Builders Box 編集部の鈴木由香です。
昨年11月に、ふたりの鈴木が対談し、残りの鈴木が書き起こす「鈴木対談」という企画をやりました。チームビルディングをテーマにした対談でしたが、あれから9ヵ月が経ち、それぞれの組織に変化もあったということで、前回を振り返りながらどう変わったのかを話してもらうことにしました。

前回の記事を読んでもらうとより楽しめると思いますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。

buildersbox.corp-sansan.com

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登場する鈴木たち

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「S」のロゴの前の鈴木兄妹

鈴木翔 / ショーンさん (写真右)
Sansan事業部 プロダクト開発部のデザインマネジャー。台湾が大好きで年に4回は行く。猫ずき。長男。


鈴木康寛 / やすさん (写真左)
Eight事業部のチーフエンジニアリングマネジャー。旅好きで、収録当日も仕事終わりに軽井沢へ。次男。


鈴木由香 (写真中)
CTO室 兼 ブランドコミュニケーション部PRグループ。末っ子。



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現在の役割について

編集部鈴木(以降、編):では鈴木対談の第2回目をはじめます! まずは現在の役割を教えてください。

鈴木康寛(以降、康):鈴木康寛です。前回から立場は変わっていなくて、Eightのチーフエンジニアリングマネジャー(CEM)兼グループリーダー(GL)です。Eightのエンジニアを統括する立ち位置で、主にエンジニアの組織的な方針を立てたり、現状起こっている課題を解決する役割です。

鈴木翔(以降、翔):鈴木翔です。自分も役割は変わってなくて、Sansan事業部のプロダクト開発部でデザインマネジャーをしています。前回は「プレイングマネジャー」と言ったんですが、プロダクト開発部をデザイナー目線でどんな組織にしていくかという役割は、前よりは少し大きくなってきました。少しづつ現場仕事の割合が減っていっている感じです。

昨年秋からの変化

編:9ヵ月前に公開された、第一回の対談を踏まえて少し振り返りたいと思います。その頃と比べて、チームや環境に変化はありますか?

康:いい意味で変わったな、と思います。Eightはいま気合いを入れるべき時なので、エンジニア組織においてもより筋肉質な状態を目指しています。つまり、パフォーマンスを出すために人を増やすのではなくて、エンジニア一人ひとりを強くするという方向性です。
もうひとつは、僕個人のことになりますが、前回は開発チームとは離れたところでCEMとしてマネジメントをやっていますよと話したんですが、その後チームリーダーとしてチームを持つことになりました。エンジニアリングマネジャー(EM)が各チームに入って開発のマネジメントやメンバーの成長を支援し強くしていくという目的です。私個人はそれと同時にCEMもやっているという状態です。

編:ショーンさんはどうですか?

翔:変わりまくってますね。デザインチームというより部全体で変わった。今までの体制に問題があったわけじゃないけど、急成長のために組織の基盤を強くしなければならん、という思いがあります。それに伴って、エンジニアがプロダクトマネジャー(PM)をやることになったんですよ。プロダクトを見ていく中でエンジニア経験が求められることもあるよね、ということで、CPOの大津さんが部長になった時に新しい体制にチャレンジすることにしたんです。

康:前回、(Sansan事業部の)プロダクト開発部のデザインチームは自走できるメンバーたち、という話があったと思うんですが、そこは変わりないですか?

翔:メンバーが少し増えたこともあり、これまでよりは個々の成長を促すマネジメントが少し増えたかもしれません。ただ、そこにかかりきりになるかというと、そうでもないですね。
大きく変わったことは他にもうひとつあって、プロダクト開発部で行なっている営みがありまして。

康&編:「営み」(笑)!

翔:大津さんが頻繁に「営み」って使うから、自分も「営み」っていうようになっちゃった(笑)。
その「営み」の内容ですが、「キャリアマネジャー」というものを立てたんです。

キャリアマネジャーを新設

翔:キャリアマネジャーはメンバーの成長支援をしていく役割です。各プロジェクトの責任者をリードエンジニア(LE)と呼んでいますが、LEがメンバーの成長支援までやるのは難しいので、メンタルケアや成長支援はまた別の枠組みでやっていこうっていうのがその背景です。
現在、Sansan事業部のブロダクト開発部には、プロダクトグループと組織デザイングループがあります。組織デザイングループは「部をどうよくしていくか」というメンバーの育成や評価や環境に向き合っていくようなグループです。その中に「キャリアマネジャー」という役割があって、グループを横断して成長支援をしていくという形です。デザイナーチームの中からも、自分ともうひとりが「キャリアマネジャー」になっています。これはデザインチームではなくて、部としての取り組みですね。

康:エンジニア側にも「キャリアマネジャー」がいるということですよね?

翔:そうです。

編:おもしろいですね。そういう体制になってる組織って私はあんまり聞いたことないんですけど、一般的にはどうなんでしょうか?

翔:あんまり聞かないですよね。Sansan開発には100名ほどメンバーがいるので、そのくらいの規模になると「組織」を考えて作る役割の人が必要になってくるということでしょうね。

康:ある企業では、EMはピープルマネジメントを行う役割だと明確化されていると聞きました。

翔:うちの組織デザイングループにも専任の人もいます。谷内さんはプロダクトの一線は離れて、育成・評価・環境などといった人に向き合うことに100%注力しています。組織デザイングループとしてのOKRもあって、会社へのエンゲージメント指数*1とか定量的な目標を持ってますね。

康:その取り組みはどのくらい前にはじめたんですか?

翔:組織デザイングループは、5月くらいから準備ははじめていて、期が変わるタイミングでもある6月からちゃんとスタートさせたという感じですね。

康:じゃあまだクォーターでの成果が見える段階ではないんですね。

翔:そうですね、これからです。

康:それ知りたいな。

翔:大津さんが部長になって、やったことを数字で測っていくということを徹底するようになって、そういう「クセ」というか、視点を常にみんなが持つようになったと感じています。予実をしっかり管理するというか。そういう文化が根付き始めてるので、あらゆることの「うまくいった / いかない」という効果測定がきちんとできるようになったことが、現時点でわかる成果かなと思います。

康:なるほど。

翔:デザインチームの変化でいうと、旧体制ではPMがやっていたことをデザイナーがやるようになり、仕事の範囲が広がったということがあります。
たとえば、これまでは仕様や要件を決めるのは(やりかたは人によってさまざまではありますが)主にPMでしたが、新しい体制では、PMは「課題をあげる」ということが役割です。それに対してどういうソリューションを出すかっていうのは、基本デザイナーとエンジニアの仕事になります。

編:それはデザイナーさんやエンジニアさんにとって嬉しいことですか?

翔:いいことだと思ってます。仕事は増えますけど(笑)。デザイナーが上流から関わるというのはいいことでしかない。

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白Tシャツにショートパンツで図らずも統一感のあるふたり

それぞれのバックログ

康:バックログの管理も以前と変わったんですか?

翔:変わりましたね。共通のバックログを持てるようにするというのが、組織改正のひとつの目的でもあります。
これまでは部全体のバックログは存在もうやむやな感じで、それよりもチームとしての優先度が管理されているバックログが活用されていました。それを完全に統一して、PMが優先度をきちんと決めて、部として向き合えるようにしたので、何をやるかが明確になりました。

康:Eightのバックログは、ツールとか使わずにスプシでやってるんですけど(笑)。

翔:わかる。Sansan側でもツールが何回か変わったりしてて、途中スプシ説も出ました。

康:結局スプシが最高っていう(笑)。あるサービスに乗っかるとその枠でやることになるのでチームを移動しても同じルールでやれるっていうメリットはあるんだけど、現状Eightではバックログ管理のルールがチームごとに多少違ったりしていて、そういう柔軟性はスプシで表現できる。事業部でまとまってはいるんだけど、チームごとにシートが少しづつ違います。

編:ルールに違いが出る理由はなんですか?

康:各チームの仕事の進め方の違いかな。課題だけじゃなくその解決方法としての機能までブレイクダウンするPMもいるし、Sansan事業部のようにストーリーだけ置いてチームで実現方法を一緒に考えるPMもいる。

編:チームによって仕事の進め方にばらつきがあってもやっていけるのは、Sansan事業部に比べて人数が少ないからですか?

康:それもある。あとは、ひとりが負うべき役割がSansan事業部に比べてまだ多いのかなぁと。同時に、人によってのばらつきも大きい。なのでどちらにしても柔軟性がないと動きにくくなっちゃいますね。充分にパフォーマンスが発揮できなくなるともったいないので、そこのバランスをうまくとるために、プロセスとか仕組みとかは柔軟になってる。

メンバーの定量的成長を支援する

編:前回は1on1に力を入れてると聞きました。

康:そこは変わってないですね。ただ、以前はジュニアなメンバーを引き上げるというところに注力していたんですが、そこがだいぶ引き上がってきましたね。主体的に動け、なおかつプロダクトに対して貢献できている状態が生まれ始めているので、1on1で話している内容は進化していると感じます。

編:相手の希望によって1on1の頻度などを変えているという話もありましたね。

康:前はCEMとしてエンジニア全員をケアする必要があったのですが、一人で見切れる限界もあり、ある程度課題を持っている人から希望制にしていました。今は体制が変わって、EMが各チームのメンバーと1on1を行うようになっています。そして、EMとCEMも1on1を行うことで全体を把握できるようにしています。

翔:それはSansan事業部のキャリアマネジャー体制と似ていますね。キャリアマネジャーがメンバーと1on1を行なって、キャリアマネジャーはシニアキャリアマネジャーと1on1をするということになっています。

康:各EMが配下のメンバーの課題や伸ばしたいポイントをちゃんと把握できるし、メンバー自身が支援されていることを感じやすくなっているようです。私の立場(CEM)からすると、全体としての課題がわかるので、見通しのいい仕組みになっています。
さっきエンゲージメント指数の話が出てきましたが、Eightのエンジニアの数値は右肩上がりで、とくに「支援されてる」と感じていることがよく表れる結果となっています。

翔:それが成果のひとつなんでしょうね。1on1って時間をかけてやっているわりに、何がどう良くなったのかが測りにくいなと思ったりするんですけど。

康:ほんとそうなんです。Sansanは成果主義の集団で、基本的にはどれだけ会社の掲げるOKRに貢献したかで評価されるんですが、その指標と、EMやキャリアマネジャーの仕事って若干乖離があって、事業的にどういう貢献をしたのかって測りづらいんですよね。

翔:キャリアマネジャーを置いた目的として、メンバーの職能を伸ばすということがあります。メンバー個人の成長に向き合ってるんですね。評価指標は、フロント系の職種と技術職の職種とで分かれていますが、各部署横断の指標なので、ややハイコンテキストです。それを、Sansan事業部のデザイナー / エンジニアだったらこういうことだと、ブレイクダウンしていく作業を今やっていて、なかなか難航しているんですけど(笑)。

編:メンバーにとって、何を目指せばいいかわかりやすくなりますね。

翔:そうです。どうなることを期待されているのかわかりやすくしてあげることが必要だと思っています。組織デザイングループは、現状のルール内で事業部をよくしようとしているのではなく、事業部を超えて会社全体にもより良い影響を与えられるような動きをしたいと思っています。

康:Sansan事業部での動きを知らなかったんですけど、この半期のEightエンジニアの取り組みとして、自身の職能を一段階あげる、ということを、月単位でEMと振り返りをしながらやっています。
それによって、メンバーは明確な成長目標を持て、EMたちはメンバーをどう成長させたか定量的な評価を受けることができるようになります。今後、メンバーもマネジャーも、より納得感のある評価をされたりしたりできるようにしていきたいと思っています。

目指す組織

編:ではさいごに、今後の目標をお願いします。

康:Eightのエンジニア組織については、さっきも言いましたが「筋肉質な組織」を継続して目指していきたいと思っています。
つい最近、EMで集まって1日使って会議をしました。そこで話したことなんですけど、(Eight事業部長の)塩見さんが求めるレベルにはまだ全然到達できてないなって感覚があって。どういうことかというと、これまでの仕事のやり方とかも影響してるんだけど、まだまだ「下りてきた仕事をこなしている」ようなところがあって。「HOW」の部分を考える力がまだ足りないと思っています。つまり、視座をもっと上げていくことが重要だと。
Eightっていうプロダクト・事業を理解した上で、今自分が持っている案件でどう貢献していくのかを考えられるようになっていってほしいんです。
今までは、この期日までにこういう機能を提供してほしいという依頼が来たときに、それをそのまま受け入れて、スピードに寄った判断をすることがありました。そのために、長期的に見ると効率が悪くなってしまったりしたんですね。それが問題化することもありました。そこを防げるのはエンジニアしかいないんです。
各エンジニアがそれを理解して「その期日でやろうと思えばできますけど、それでやったらこういうデメリットがあって、長期的に見たら負債になる可能性があります。それよりは、期日を●日伸ばすことでフレームを使いまわせる仕組みができるので、そちらを採用しませんか?」というような提案ができれば、開発する側としても、事業を推進する側としてもその後がスムーズです。
そういうような、エンジニアが主体的に事業に貢献するチームにしていきたいです。それが「筋肉質な組織」だと考えています。

翔:今後、事業のスピードはもっと上がっていくと思うんです。間違いなく。成長の角度を上げるために、必死で考えて考えて考え抜かれたものが仕込まれてきているし、これまで想像もしなかったようなことをやろうとするフェーズになってきているんですね。
その「仕込まれたもの」が来たときに、それが想像しなかったようなことでも、ちゃんとスピードとクオリティを両立できるデザイナー集団でありたい、というのが自分たちの思いです。
以前は、ものづくりに関してのほとんどはプロダクト開発部の中で完結できることだったんですね。でも今はCPO室というプロダクトを中長期的に考える部署もでき、新規事業開発室という「ビジネスの種」を生み出す部署もできました。そこでやっていることや考えられていることとの紐付きをしっかり咀嚼し理解することがすごく重要だし、それだけでなく、いろんなところから主体的に情報をキャッチする努力もしないといけない。指示を待っていたら、置いてきぼりにされて本当に何もできない人になっちゃうよっていう空気を日々感じています。

理想の組織になるためには、人を増やすことも、一人ひとりのレベルを上げることも必要です。でも、やすさんも言っていた通り「視座を上げる」というのが何よりも重要だと思っています。「自分たちは何を作ろうとしているのか」ということをきちんと理解していないと、アウトプットは絶対にいいものにはならない。各メンバーがそこをちゃんと押さえて、事業にインパクトを残せるデザインチームでありたいと思います。



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編集後記

この【鈴木対談】は、ざっくりとテーマだけ決め、あとは成り行きに任せて話してもらい、それを録音したものをあとからなるべく忠実に書き起こしています。つまり、どんな話の流れになるかは始まってみないとわかりません。それでも、読んでいただいたとおりふたりの鈴木の話には迷いがなく、普段から真摯に自らの職務に向き合っていることが伝わってきました。部署が違えどこういうリーダーがいることは同じ会社で働く者としてとても頼もしいです。

また、対談をしめようとしたところ、ふたりから「もう終わり?」「まだ話せることがたくさんある」という言葉がありましたので、また近々新作の【鈴木対談】をお届けしたいと思います!


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*1:現在はwevoxを利用しています

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