Sansan Tech Blog

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プレゼンの苦手な僕が満足のいく発表をできるまで:Sansan Builders Box 2019

はじめに

こんにちは、DSOC でデータエンジニアをしている千葉祐大です。

いきなりですが、僕は発表が恐ろしいほど苦手です。
社会人になってからのプレゼン・発表体験を思い出してみても苦い経験ばかりです。

こんな僕ですが、先日、弊社のテックイベントである Sansan Builders Box 2019 に登壇し、自分史上一番満足度の高い発表ができたので、資料作成や練習のやり方、登壇直前の準備をまとめてみました。

万人に当てはまる上手いやり方ではないと思いますが、うまくハマれば有効なノウハウもあると思うので、ぜひご一読ください!

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意味ありげに手を回してる図。

ゴールと抑えるべきポイント

ポイントは2つあります。

  1. 使い慣れた表現や流れをベースに発表をつくる
  2. 発表の一番はじめの出だしフレーズを丸暗記する

特に「使い慣れた表現や流れをベースに発表をつくる」は非常に重要です。
世の中にはプレゼンで使いたくなるようなきれいな表現や肌触りの良い言葉がたくさんありますが、日常的には使い慣れないものがほとんどだと思います。
そういったものを避けて自分のよく使う言葉や表現で資料を作っていくことで、スクリプトを丸暗記しなくてもスライドを見ながら、言葉を感覚で作って話せるようになります。

また、今回のゴールは、高望みせずに「カンペ等を見ずに少しジェスチャーや歩き回る余裕を見せつつ、事前に考えた内容をもれなく話す」としました。
本当は TED*1 ばりのエモーショナルなプレゼンをしたいところですが、下手したら直前で頭が真っ白になり続行不能の事故を起こすかもしれないので、実現可能 + α をゴールとしました。

以降の節では、実際の準備の流れに沿って実践したことを説明していきます。

タイトルと概要の決定

はじめはタイトル決めですね。

タイトルに関しては、なるべく多くの人に聞いてもらいたかったので、やや見栄えを重視しました。
この時点で具体的な内容はほぼ考えておらず、感覚的に話せそうなことを端的に表しつつ、キャッチーさも考慮しながらパッと考えました。

今回は LP*2 に載せるための概要文も必要でした。
キャッチーであることを重視して風呂敷を広げた文章を一度作ってから、最後に手仕舞えるように簡素化・具体化していくことで、地に足をつけた文章にしました。
大きく作ってから削ることで、見た人の期待値と実際のプレゼン内容がうまく擦り合うかなと思っています。

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最終的なタイトルと概要文。

発表のアウトライン決定

タイトルと概要文を決めれば、話す方向性が自分の中で見えていると思うので、まずはアウトラインとしてキーワードを書き出します。
まだ発表時間は気にせず、自分の話し言葉や流れを大事にして頭の中の言葉をそのまま書き出しました。

ポイントの部分でも先出ししましたが、自分の言葉を起点にすれば、自分にとって一番自然な慣れている展開になっているはずです。
こうすることで本番では大まかな流れと要素から、自分の感性・感覚で文章を作りながら話すことが出来るようになります。
僕は暗記が本当に苦手で、文章を一字一句覚えるのはコストが大きいので、暗記量を最小限にできるようにこのような方法をとりました。

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アウトラインは箇条書きにすると、書くときもまとめるときも見やすく便利です。僕は Notion というクラウドサービスを利用しています。

スライド作成

アウトラインができたら、スライドを作成します。

アウトラインの時点で見出しを作っていれば、見出しごとに白紙スライドを用意して、ガンガン文章を作成していきます。
ここでもできるだけ頭の中で話しながら流れを確認して、文章や構成が自分にとって自然な流れであることを確認しながら作りました。
その後、デザインチームや広報の力を借りて整え、以下のようなスライドに仕上がりました。


親密な人に一度聞いてもらう

発表前には必ず誰かに発表を聞いてもらうべきです。
聞いてもらう相手は、何でも言い合える家族や配偶者など親密な関係の人がおすすめです。ここでは練度の高さは重要ではなく、むしろ本番前にわざと一度失敗しておくのが重要な気がしています。ですので、スライドが出来た段階で練習せずに一度人前で話してみましょう。

僕をはじめとしたあまり発表に慣れていない人は、スライドが出来た段階である程度の達成感を感じてしまい、準備がほぼ終わったように思いがちです。

残念ながらそれは錯覚です。

いくら自分の言葉や思考に合わせて作ったスライドでも、作っただけではうまく話せないのですが、それは一度人前で話さないと気が付けないのです。
「言い出しが思い出せない」「流れがしっくりこない」「言ってて恥ずかしくなる」等々の理由で突っかかったり、次の言葉が出てこないことが簡単に起こります。まずはどこでそれが起こるかを知り、そして、聞いてくれた人から率直な意見をもらいましょう。

僕の場合は妻に聞いてもらいました。妻はかなりトークストレートに色々言ってくれる本当に優しい人*3なので、かなりボロクソに言ってもらえました。こうすることで人工的に失敗を経験し、発表練習に本腰を入れることができました。

スクリプトの書き出し、読み込み

ここで、実際に話したいことを言葉に出しながら、すべてを文章として書き起こしました。
すべて書き出すのはかなり大変ですが、話し文章を目で見て推敲できるのと、この後の読み込みフェーズで読むことだけに集中するために、非常に重要な工程だと思います。

書き出しが終わったら、文章を見ながら通しで読み込みましょう。確保できる時間によるとは思いますが、できれば発表時間を想定しながら時間を測った上で、10回は通しで読みたいところです。10回も読めば、覚える気がなくとも方向性は頭に入ると思います。

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Power Point のメモにも緊急用にスクリプトを全部書いておきます。

スライドだけを見て練習

ここではスクリプトを見ずにスライドだけを見て暗唱しました。
時間も同時に測りつつ、本番で見えるはずの風景を想像しながら話すのも効果的です。
ぜひ、ステージに立って話している想像を深くしながら、練習していきましょう。

具体的は回数は人それぞれ違うと思いますが僕は6-8回目くらいから、「いけそう」という自信を持てるようになりました。25分のセッションだったので、だいたい3〜4時間はかけるイメージですね。

ここまで来ると発表の出だしが言えれば、ほぼ間違いなく最後まで話せるようになってると思います。

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ステージからの風景。事前に会場の規模感を味わえたので非常に良かったです。

出だしの言葉・フレーズを完全に暗記するまで復唱する

この時点でほぼ間違いなく流れどおりに話続けられるようになったのですが、発表初めのフレーズがどうしても出ないことが練習の時点で何度かあり、そこがウィークポイントだと分かりました。
なので、最後の段階では出だしのフレーズだけをとにかく暗唱し続けました。

回数は数えてないですが、100回以上は暗唱したと思います。

発表直前まで

発表直前も「話し始めさえ出てくれば、間違いなく成功する」と自信をもって、初めのフレーズのみを繰り返し続けました。
直前は徐々に緊張も高まるので、何を練習すればいいのか迷うところですが、とにかく出だしのフレーズに集中しました。

この時点で、

  • 出だしは完璧
  • 話し始めれば間違いなく話せる

という自信が完全に構築できていたので、直前の緊張は自信からくる「良い緊張」だったのかなと思います。*4

直前はかなり緊張したり、震えたりするので、月並みですが控室等で大胆に伸びたりストレッチをすると良いかもしれないです。
個人的にはかなり緊張がほぐれました。

発表中

出だしがうまく言えたあとは、リラックスして話せました。
ここまでの練習による自信から失敗するリスクは極小になっているはずなので、伝えることに集中できると思います。
本番でも自然に歩いたり、ジェスチャーを交えたりと、伝えるための動きができたのかなと思っています。

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最後の質疑応答。神妙な顔で受け答えしてましたが、内心は達成感満ち満ちています。

さいごに

体験談ベースでしたがこのように練習し、個人的には成功体験ができました。
「やりたいけど、苦手」だった発表も、今後よりやっていきたいという自信と前向きな気持ちを持てています。

今回紹介した方法は僕だけにマッチするものかもしれないですし、最適解ではない可能性は十分にありますが、局所的な解の一つとしてぜひ参考にしていただけると嬉しいです!




photo(一部):山平敦史

*1:Technology Entertainment Design。聴き応えのある、すごいプレゼンを量産しているカンファレンス。

*2:ランディングページ。

*3:皮肉ではなく、本当に親身になるとこうなると思います!

*4:オリエンタルラジオの中田さんも動画内で、緊張には「良い緊張」と「悪い緊張」があると語っています。

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