あけましておめでとうございます、DSOC 研究員の西田です。
百貨店のセールが終わり、もう2019SSは何を買おうかと考える日々です。(実際には、正月帰省から戻ってくる新幹線の中でセールにワクワクしながらこのブログを執筆してます。)
ちなみに今シーズンの注目ブランドは、FUMITO GANRYUです!
「膨大な情報をただ蓄積するだけでは意味がない。そこから何かを得て、咀嚼し、活かすことができること。未来をより良いものとするためにも、感じ、考え、行動に移すことができる人。言い換えるなら、今を生きている人」[*1]に似合う服なので、そうなれるように頑張ります!
誰でもクリエイティブになれるのか?
さて!今回は、私自身の2度目の連載となる”The Prism of Creativity”の初回記事です!(前回の連載はこちら)
この連載を一言でいうと、「クリエイティビティとは何か?」という問いに答えるべく、これまでにどういった研究がなされてきたのかを紹介するものです。
「あの人、クリエイティブだよね」
「クリエイティブなデザインだね」
「クリエイティブになりたい」
などなど、クリエイティビティについていろんなことを言われているのを耳にしますが、そもそも「クリエイティビティってなに?」と思われる方もいるでしょう。クリエイティブであるとは、一般的に「新しく」かつ「役に立つ」という意味があります。これまでにない新しいもので、かつ役立つものを創るスキルは誰もが身に付けたいと思うはずです。
クリエイティブというとピカソのような有名な画家や敏腕デザイナーみたいな方々のイメージが湧き、クリエイティビティとは、限られた人だけが持っている才能だと思われる方も多いでしょう。しかし、実際はそんなことはなく、誰でもクリエイティブになれると主張する研究者がいます。アダム・グラントという研究者です。彼のTEDでのプレゼンテーションをご覧ください!
このプレゼンテーションを見たときに、私自身とても勇気をもらえたのを覚えています。誰にでもクリエイティブになれるチャンスはあるのです。つまりは、これから人口減少で労働生産性の向上が求められる時代に、誰でもそのヒーローになれるということです! このプレゼンテーションに感化されて、多くの人に研究者がどのようにクリエイティビティの本質を捉えてきたのかを紹介し、皆さんにもクリエイティブになれるヒントを提供できればいいなと思ったのが、この連載を始めた理由のひとつです。
アダム・グラントについて、詳しく知りたい方はこちらの著書をご覧ください。
また、クリエイティビティに関する研究というのはアダム・グラントによるものだけではありません。1950年代からこれまでに多くのクリエイティビティの研究が蓄積されています。今や書店でも、クリエイティブになるための自己啓発本などがたくさんある時代です。しかし、その中身というのは、いろんな人がさまざまな見解を示している印象を受けます。おそらく、クリエイティビティというものが複雑でよくわからないものだからだと思います。
そんなクリエイティビティを「学問」はどう捉えてきたのか。そんな好奇心から、ブログタイトルには、「学問という"Prism"を通して、つかみどころのないクリエイティビティというものをいろんな視点から見ていこう」という意味を込め、連載を執筆するに至りました。
学問というプリズム
それでは、これからどういった学問分野の研究を紹介するのか、それぞれの特徴とともに簡単にまとめます。
▲心理学編▽ クリエイティブな人はメンヘラ?
馴染みのある方も多いであろう心理学でも、クリエイティビティに関する研究は数多くなされています。特に心理学では「クリエイティブである人はどういったパーソナリティを持っているのか」という視点で分析されています。例えば、「クリエイティブな人のIQはどうなのか?」「クリエイティブな人はメンヘラなのか?」「物事をすぐに信じてしまう人はクリエイティブ?」「クリエイティブになろうとしている人は本当にクリエイティブなのか?」などの問いが挙げられます。[*2]
▲経済学編▽ インセンティブとクリエイティビティの関係に迫る
経済学といえば、必ずといって言いほど出てくる「インセンティブ」。経済学では、「どういうインセンティブがクリエイティビティに有効なのか?」について研究されています。[*3]また、アーティストの作品のオークションにおける価格をクリエイティブであるかの評価に使っている研究もあり、経済学らしさが出ています。その研究では、アーティストの生まれ年がクリエイティブの評価に与える関係について見ていたり、投資としてのアート作品のリターンについても分析していたりします。[*4]
▲経営学・社会学編▽ クリエイティブな人は人脈が広い?
経営学と社会学は研究対象が異なる学問ですが、クリエイティビティ研究においては、人的ネットワークとクリエイティビティの関係性を見る点で共通しています。そのため、この連載では両者の区別なく、ご紹介していきたいと思います(もしかしたら、どこかで区別するようになるかもしれません)。
この分野では、ノースウェスタン大学の社会学者ブライアン・ウッツィによるブロードウェイの作曲家と演出家のネットワークを分析した研究が有名です。[*5]ブロードウェイで成功するには、コミュニティをまたぐような橋渡しをするつながりを持つべきか、コミュニティ内での密なつながりをもつべきなのかという問いに答えるような分析がされています。クリエイティビティには幅広い人脈が有益なのか、コミュニティ内に閉じた人脈形成が有効なのかについて、これまで蓄積された研究を紹介していきます。
▲機械学習編▽ クリエイティビティを数学的に記述する
近年、機械学習や深層学習のテクニックを応用して、新しいアート作品や音楽などを生成するという研究が盛んに行われています。この分野は"Computational Creativity"と呼ばれています。最近では、AIが生成した肖像画がオークションに出品され、約4900万円で落札されたというニュースもありました。
アート作品だけでなく、IBMは新しい料理のレシピを考えるというシェフ・ワトソンというアプリケーションも開発しています。
youtu.be
新しいレシピを生成するという"Computational Creativity"に関する論文[*6]を大学院時代に読んだとき、ものすごく感動したのを覚えています。クリエイティビティを数学的に扱うことができると知った時は、本当に興奮しました...。それ以来、ずっとこの分野には興味があり、一昨年には100banchでファッションにおけるComputational Creativityの研究プロジェクトをしており、現在もプライベートで密かに続けています。
100banch.com
非常にホットなこの分野からは、クリエイティビティをどう数学的に扱うのかやその評価について紹介できればと思います。
以上、4つの学問分野を中心にクリエイティビティに関する研究を次回以降紹介していきます!
ブログ連載を始めるにあたり、改めて文献を調査していますが、まだまだ知らないクリエイティビティに関する研究がたくさんありました。皆さんがクリエイティブになるヒントを提供すべく、なるべく高頻度でブログを執筆できるように毎日論文を読んでいきます!
*1:丸龍文人が思索する、21世紀のあり方を問う服作り -Vol.1-
*2:Kaufman, S. B., & Gregoire, C. (2016).Wired to create: Unraveling the mysteries of the creative mind. Penguin.
*3:Azoulay, P., Graff Zivin, J. S., & Manso, G. (2011). Incentives and creativity: evidence from the academic life sciences. The RAND Journal of Economics, 42(3), 527-554.
*4:Sebastian Edwards. (2004). The Economics of Latin American Art: Creativity Patterns and Rates of Return. NBER Working Papers 10302, National Bureau of Economic Research, Inc.
*5:Uzzi, B., & Spiro, J. (2005). Collaboration and creativity: The small world problem. American Journal of Sociology, 111(2), 447-504.
*6:Varshney, L. R., Pinel, F., Varshney, K. R., Bhattacharjya, D., Schoergendorfer, A., & Chee, Y. M. (2013). A big data approach to computational creativity.arXiv preprint arXiv:1311.1213.