Sansan Tech Blog

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Vol. 09 段階的なEnglish Firstで言語の壁を乗り越える。日本人チームが英語部門に溶け込むためにやったこと

はじめに

この記事は、Bill One開発Unit ブログリレー2025の第9弾、および Sansan Advent Calendar 2025、10日目の記事です。

メリークリスマス🎄

技術本部Bill One Engineering Unit POグループの尾沼です。経理DXサービスのBill Oneを開発しています。

Bill Oneは、フィリピン、セブの開発拠点であるSansan Global Development Center(以降、SGDC)と、日本拠点が共同で開発しています。必然的に日本語と英語が入り乱れた環境となり、拠点間に言語の壁が生まれます。

私たちのチームでは、「段階的なEnglish First」でこの壁を乗り越えつつあります。本記事では私たちが行ってきたその取り組みについて紹介します。

前提

私たちのチームは、2025年5月に発足しました。チームの属性は以下となります。

  • メンバーは日本人4人
  • 全員長期留学や駐在の経験はない
  • 英語には前向き
  • Bill One歴が浅いメンバーがほとんど

それに対し、私たちが合流するPurchase Orderグループ(以降、POグループ)は、以下のような構成でした。

  • SGDCの3チームから構成
  • 英語をコミュニケーションで使用

私たちが合流する以前より、POグループには「言語の壁」が存在しており、具体的には以下のような問題がありました。

  • 1on1をはじめとする、拠点間の密なコミュニケーションが難しい
  • 日本語と英語での情報量に差がある(翻訳忘れ、翻訳時の情報の欠落)

「POグループの内部から、グループとグループ外の間にある言語の壁を壊し、プロダクト開発のさらなる効率化をはかる」これが私たちのチームのメインミッションであると定義しました。しかし、このグループレベルの話を進める以前に、私たちのチームはプロダクト理解が浅く、英語環境にも不慣れであり、未熟でした。そのためまずは、私たちのチーム自体を言語の壁から解放することを解くべき課題とし、自チームの改革を始めました。

言語の壁を壊すアプローチはさまざまありますが、私たちはPOグループの公用語である英語に合わせるスタイルを選びました。グループ内の情報をシームレスにやり取りするためには、翻訳を介さず直接コミュニケーションできる状態を目指すのが最も効果的だと考えたからです。

フェーズ1: 小さく始める

約1ヶ月間、フェーズ1として以下の取り組みを行いました。

  • 朝会のみを英語化
  • グループの英語ミーティングに参加する

結果として、

  • 仕事の中に英語を入れる文化が生まれた
  • POグループへの心理的な慣れ

といった定性的成果を得ることができました。

フェーズ1における学びは、「小さく始めることで、心理的負担なく英語環境への第一歩を踏み出せる」です。

その学びの背景として、詳しくフェーズ1の試みについて触れたいと思います。

朝会のみを英語化

朝会は一般的に短時間で終わります。また、議題も定型的であるため、事前準備が効きやすいです。そのため、第一歩として英語化をしました。また、定期的な外発的モチベーションとなることもポジティブな側面でした。

一方、朝会以外のコミュニケーションは全て意識的に日本語を使用しました。チームビルディングや、キャッチアップという観点では日本語のほうが都合が良いからです。

これにより、心理的負担を抑えつつ、言語の壁からの解放へと、最初の一歩を踏み出すことができました。

グループの英語ミーティングに参加する

グループの英語ミーティングに参加し、追いきれなかった部分を補完する場として夕会を活用しました。チームメンバー同士で補い合いながら、グループの雰囲気に慣れていくことができました。


フェーズ2: KRとして「English First」の採択

さらに約1ヶ月間、フェーズ2として以下の取り組みを行いました。

  • チームOKRを定め、English Firstを定量的に追う
  • English First 達成のための具体的な活動内容の言語化

結果として、

  • 能動的にPOグループ内の他チームとのコミュニケーションが可能になる
  • 言語の壁と、English Firstが言語化されたため、チームのメンバー間で共通認識が揃う

といった定性的成果を得ることができました。定量的成果については後述します。

フェーズ2における学びは、「KRとして目標を明確化することで、English Firstに対しての、チーム全体のコミットメントと当事者意識が生まれる」です。

KR: English First

フェーズ1を経た私たちは、本格的にチームとチーム外との間にある「言語の壁」に向き合うことにしました。弊社にはOKRを追求する文化があり、目標を明確化することでチームのコミットメントを高められると考え、以下のOKRを設定しました。

  • Objective: チームとチーム外との間にある「言語の壁」をなくす
  • Key Result: 英語化率(英語で作成されたドキュメント数 / 全ドキュメント数)を80%以上達成 = English First

そして、読み書きに重きを置いたKRである上記を実現するために、チームの運営体制として以下を敷きました。

  • 英語で書く
    • 仕様書、設計書、Slack、Pull Request
  • 日本語を許可
    • 緊急を要する事項、または正確な伝達のため日本語が適切な複雑な事項

また、朝会に加え夕会も英語で行うことにしました。中期的にはグループの基準に完全にalignすることが視野に入っていたため、それに向けた踏み込みでした。

OKRとして言語化し、チームの合意事項としたことで、より具体的に活動に向き合えるようになり、チーム全体のコミットメントも高まりました。


フェーズ3: 全チームイベントの英語化

チーム発足からおよそ2ヶ月経過後、ついにSGDCメンバーをチームに迎えました。これにより、以下のような変化が起きました。

  • 全チームイベントの英語化

結果として、

  • SGDCメンバーがチームに完全に溶け込む
  • 英語でのコミュニケーションが「普通」になる

といった成果を得ることができました。

フェーズ3の学びは、「非日本語話者の存在が『日本語という保険』を取り除き、English Firstを加速させる」です。

非日本語話者の参画

何事においても、仕組みや環境は中にいる人間に対して大きな引力を働かせると思います。私たちにとって、SGDCメンバーの参画は大きな引力を持っており、チームのEnglish First のペースを大きく加速させることとなりました。全てのチームのミーティングを英語とし、QAに関わる仕様の相談も英語で行うようになりました。

日本人同士だと、どれだけEnglish First を意識していても、日本語という保険があります。単語が出てこなかったら日本語で話せばいい。しかし、それが通用しない環境下になると、平時からマインドセットが変わります。フェーズ1、2を経て順応してきたことで、私たちのチームはパフォーマンスを落とさずにフェーズ3へと移行することができました。


成果と振り返り

ここまで、3段階のEnglish First を通じてチームとグループ間の言語の壁の破壊を試みてきました。本章では、その成果と振り返りをします。

定量的成果

英語使用率: 80%以上達成(KR達成)

KR策定時の定義では、英語使用率は書き言葉の英語化率としました。その英語化率は80%を超え、達成することができました。加えて口頭のコミュニケーションもチームとして成立するようになったため、十分ストレッチできたと思います。

定性的成果

チーム内と、チームとPOグループ間での「言語の壁」の破壊

チーム内では、翻訳を介さずに、つまり情報の欠落なしでQAを行うことができています。また、どうしても日本語verしか用意がないチーム外のリソースも、適宜英語での説明をバーチャルオフィス等でラフに行えるようになりました。個々のレベルアップは引き続き必要ではありますが、少なくともチーム内では仕事をする上での言語の壁は消えました。

そして、チーム内の言語の壁が消えたことで、POグループともシームレスに繋がり、チーム外のメンバーとの協働においても言語の壁が解消されました。

POグループでのプレゼンス向上

グループ全体のミーティングでの発言が増加しました。日本拠点で発生した関心事の共有なども能動的に行うことができるようになり、SGDCチームとの協働がスムーズとなりました。そして、グループが抱えていた大きな機能のリリースを、期日までに間に合わせるという成果に繋げることができました。

学び

3つのフェーズを通じて、以下のことがわかりました。

  • 小さく始めることで心理的負担を軽減できる
  • KRとして明確化することでチームのコミットメントが生まれる
  • 非日本語話者の参画が「今、必要」という意識を生み、English Firstを加速させる

そして、これらを貫く最も重要な気づきは、「伝える」「伝わりにいく」ファーストということです。

情報を正しく伝え合うことがそもそもの狙いであり、English First はHowの1つです。画面共有、Google Meetの翻訳など、テクノロジーは使い倒し、「伝えること」にフォーカスすること。そして、聞き手からも、「伝わりにいく」こと。今回私たちがスムーズにフェーズを経ることができたのは、SGDCメンバーが「伝わりにいく」ことを体現してくれたことが大きいです。感謝しかありません。


まとめ

いかがでしたでしょうか。

まとめると、大事なのは、

  • 一気にやらない、段階的なEnglish First
  • チームにフォーカスした仕組み化
    • 心理的安全性を保った状態で、適度なストレッチ
    • 「言語の壁」に対する当事者意識を仕組みの工夫で醸成

であったと思います。

まだ、チームレベルでの壁を壊したに過ぎないため、スタート地点です。今後は、情報管理のありかたをLLM中心にすることや、交換留学風なチーム間交流なども視野に入れつつ、さまざまなHowを駆使してグループレベルでの「言語の壁」に向き合いたいです。

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