こんにちは。技術本部 Sansan Engineering Unit 名刺メーカーDevグループの佐藤です。
私の属する名刺メーカーの開発チームは、メンバーがさまざまな支店に散らばる、いわば「拠点分散型組織」となっています。具体的には、東京本社、関西支店(大阪)、中部支店(名古屋)、Sansan Innovation Lab.(京都)、福岡支店*1の4つです。
そして入社してからこれまでに属した他のチームでも、1つの支店にメンバーが固まっていることはありませんでした。
2019年末から始まったコロナ禍を機に、ほとんどの企業が多かれ少なかれリモートワークを取り入れました。全面的にフルリモート勤務を取り入れた企業も珍しくなく、世界規模でチームメンバーが別々の場所で働くことになりました。
しかし、その後コロナ禍が収束に向かってから、AmazonやGoogleといったIT系の大企業も含め、相当数の企業がオフィスへの出社義務を戻してきています。弊社でも「オフィス・セントリック」を掲げ、対面でのコミュニケーションを中心にした働き方を推進しています。
一般にチームメンバーが地理的に離れていると、それだけ生産性が落ちやすいという話をよく耳にします。一方で、私の属したチームの生産性が低かったと思うことは、一度もありませんでした。
実際過去には全社表彰を受けたり、新規事業として始めたサービスが新たな事業部として独立したりもしました。
私自身の経験からしても、拠点が分散することは必ずしもデメリットとは言えません。むしろ生産性のみならず、働きやすさまで維持向上させられたと思っています。
では、どうすれば拠点分散型組織で生産性を落とさず、結果を出すことができるのでしょう?以下では、そのために私達が日々心がけていることをお伝えいたします。ポイントは「自律性の向上」と「コミュニケーションの促進」です。
自律性の向上
メンバーが一カ所に集まらないということは、つまり同期的にコミュニケーションを取りながら働く機会が減ることを意味します。それでも効率よく働くためには、まず各々が自律的に働ける状態を作ることが最も重要です。
目標やタスクの明示と確認を怠らない
自律性を高めながらチームとして結果を出すためには、以下を行うことが肝要です。
- メンバーが達成すべき目標を共有する
- そのためにやることを明らかにする
- その進捗をお互いが知れるようにする
そうすることにより、基本的に集まらずとも仕事が進み、もし進まなければ互いに助け合う環境が整います。その結果、マネジメントやメンテナンスコストの低い、いわば「放っておいても勝手に仕事が進むチーム」が出来上がります。そうなれば、各人がより本質的な仕事に集中できる時間が増えて、自ずと生産性も高まります。
以上を実現するために行っている具体的な施策として、例えば「カンバンボードの徹底」が挙げられます。名刺メーカーの開発チームは、いわゆるアジャイル開発を基盤としています。そこでよく使われるカンバン方式*2でタスク管理しており、このカンバンは原則常に最新化されています。
ここに抜け漏れなく最新のタスクが可視化されていれば、メンバー同士が離れていても、自律的に動けます。
お互いの時間を尊重する
「情けは人の為ならず*3」といいますが、お互いのことを思いやることは、結果として全体の生産性向上に繋がります。それぞれが違う場所で働いていると、当然作業内容や働くペースなども異なってきます。同じ時間に同じことをするとは限らないことを念頭に置き、それぞれが最大限の力を発揮できるよう、協力し合うことが大切です。例えば、議論したい人がいれば積極的に集まり、一人で作業したい人がいれば邪魔しないように気をつけます。
名刺メーカーDevグループでは、毎日の朝会を欠かさず行っています。まずはグループ内のチームごとに集まり、スプリントゴール達成のための議論や、タスクの進捗確認を行います。これらはアジャイル開発では当たり前のことですが、加えて各人がその日どのように働くかも、適宜共有されます。
例えば、各人は毎日朝会用の資料に共有事項を書き込むことにしています。それらは議題として取り上げられ、全員で必ず時間を取って話します。必要なら朝会の時間を延長したり、別途会議の時間を設けて、全員が協力して解決まで話し合うための時間を捻出します。後述の「迷わず直接話す」とも通じますが、これは非常に大事な習慣です。
あるいは、チームには家庭を持つメンバーも多く、その事情で働く時間を調整したいこともあります。こういった諸々の事情すらも加味した上で、各人が最も働きやすい時間の使い方ができるように尊重し合うことが、結果として最大限のパフォーマンスに繋がります。
AIも活用する
今や生成AIの全盛時代。近い将来、これを使わずに開発することは、考えられなくなるでしょう。
Sansan株式会社では、2025年のテーマを「AIファースト」と位置づけ、全社OKRとして「各組織の業務をAIに置き換える」ことを掲げました。
一方開発部門では、もう数年前からAI活用が進んでいます。例えば、私は2023年時点で既にGithub Copilotを使っていた記録があります。最近の名刺メーカーDevグループでは、開発者が一切コードを書かず、自律型AIエンジニア "Devin" のみで実装を完結させる試みも行っています。
こうしたAI活用は、何か困ったことがあったりした際、いつでも相談できる相手がメンバー以外にいることを意味します。また、そもそも困る機会が減ることにも繋がります。最新技術の活用が、間違いなく生産性や自律性のさらなる向上に資しています。
コミュニケーションの促進
オンラインでも(文字通り)顔を合わせる
自律性を高めて、個々人が自分で作業を効率よく完結できたとしても、それだけで生産性が高まるとはいえません。
全員が別々に終わらせたタスクの総量が即ち結果だというのは、あまりに還元論的であり、実際はもっと全体論的に考える必要があります。*4
チームは人と人の繋がりでシナジーが生まれる、つまり弊社のミッションである「出会いからイノベーションを生み出す」状態こそがベストです。
これを促進する1つの手段が、オンラインでも毎日、かつ顔を映して会議することです。上述の通り、名刺メーカーDevグループは毎日朝会を行っています。そのほかにも会議が行われますが、それらは原則画面に各人が顔を映して行っています。こういった心理的ないし雰囲気的な施策は、定量的に結果を示すことが難しいです。しかし、これによりチームの心理的障壁が減ったり、発言しやすくなったりする効果があると信じています。
迷わず直接話す
自律性を生産性に繋げることには、別の側面で限界があります。というのも、チームで仕事をしている以上、そもそも完全に自律して仕事するのは不可能であり、絶対に協力すべき場面が訪れからです。こういう事態を迅速に処理できるのが、まさに全員が同じ場所で働く強みであり、拠点分散型組織の弱みになり得ます。相談したい相手の動向がすぐに分からず、また分かったとしても心理的に話しかけづらい状況は、容易に起こります。同じような例として、フルリモートの新卒入社者が、研修時に誰にも相談できず困ったというのは、コロナ禍によく聞いた話でした。
いわゆるバーチャルオフィスを使うというのは、この問題に対する有効な打開策の1つです。私が今まで属した弊社の開発チームでは、ほぼ例外なくこれを活用していました。名刺メーカーDevグループでは、全メンバーがほぼGatherに常駐しており、会議の多くもここで行われます。これにより、相手の状況が一目で分かり、すぐに会話を始めることもできます。他の多くの部署のメンバーも同じ空間におり、必要に応じて彼らと話すこともできます。これらの点や費用などを鑑みると、実際のオフィスで働くことを凌ぐ利便性も発揮し得る、非常に強力なツールといえます。
チャットで存在感を出す
とはいえ、拠点分散型組織にとってメインのコミュニケーション手段は、やはりチャットになります。いくら直接会話する機会を増やしても、結局会話の大半はここで行われます。そのため、これを有効活用し、意思疎通の効率を上げない限り、生産性の向上には繋がりません。
そこで何より重視しているのは、「存在感を出す」ことです。具体的には、誰かのメッセージに対して、とにかく何らかのリアクションを取ることが重要です。例えば、弊社で全社的に使っているSlackでは、メッセージに絵文字を付けて、気軽にリアクションができます。これを使えば、返信の文面を考える手間や、会話の流れを遮る心配もなく、相手のメッセージに気軽に相槌感覚で反応できます。そのため、私などはこれに頼り切って毎日を過ごしています。あなたがSlack以外のチャットツールを使っていたとしても、これに類する機能は必ずあるはずです。
どんな形でもいいし、自分が話題に直接関係なくても構いません。気付いたメッセージにまずリアクションして、存在感を出しましょう。文面による返信であろうと、絵文字であろうと、手段は問いません。基本的に相手は嬉しいし、自分が何に対してどう思っているかの表明もできるし、得しかない行動です。名刺メーカーDevグループの全メンバーはそれを理解しており、実践もしています。

実際はアイコンも大体顔写真なので、チャットでも顔を合わせているかのよう。
さいごに
すべてのチームメンバーが同じ場所で働くというのは、恐らく人類が数百万年以上も続けてきたことです。そのため、その働き方はかなり確立されているか、あるいは遺伝子に刻まれてすらいるかもしれません。それに従うのは、あらゆる時の試練に耐えた*5方法を採用することであり、間違いなくベストプラクティスの1つでしょう。
それでは、拠点分散型組織は従来型の組織に対して、必ずしも劣っているのでしょうか?
そう言い切るのは、少し早いかもしれません。*6個人的に経験したこれまでの実績や、感覚と経験からいっても、従来に劣らない生産性で働けること、ひいてはそれ以上の何かを目指せると確信しています。
そんな組織で働きたい、さらに上を目指したい方を、Sansan株式会社はお待ちしております。東京在住の方はもちろん、上述の通り弊社には地方拠点がたくさんあり、私自身は今日本で最も熱い地域の1つである福岡で働いています。少しでも興味がある方は、まずカジュアル面談を!そして是非一緒に働きましょう!
Sansan技術本部ではカジュアル面談を実施しています
Sansan技術本部では中途の方向けにカジュアル面談を実施しています。Sansan技術本部での働き方、仕事の魅力について、現役エンジニアの視点からお話しします。「実際に働く人の話を直接聞きたい」「どんな人が働いているのかを事前に知っておきたい」とお考えの方は、ぜひエントリーをご検討ください。
*1:ちなみに、私は今年の2/1から福岡に移住し、福岡支店で働いています。 そうなった背景は別の記事にまとめております。宜しければ御覧ください。 buildersbox.corp-sansan.com
*2:アジャイル開発の方式として有名だが、元々はいわゆる「トヨタ生産方式」を構成する手法の1つ。この方式を確立した中心人物である大野耐一さんの著書「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」は、開発者として一読の価値あり。
*3:「人に情けをかけても、結局相手のためにはならない」という誤用が多いようです。ここでは「人に親切な行いをすると、結局自分のためにもなる」という原義で使っています。
*4:とてもざっくり説明すると、全体は部分の合計に等しい、つまり「1+1=2」なのが還元論です。一方で、全体は必ずしも部分の合計ではない、つまり「H2+O2→2H2O」なのが全体論です。どちらも一長一短があり、使い分けや併用が必要です。チームのような生物学・社会学・心理学などが有効な領域は、全体論的に考える必要があると私は思います。
*5:英語の "stand the test of time" という表現が、よく「時の試練に耐える」と訳されます。ある概念が優れていることは、長い期間を生き抜き、自然淘汰を潜り抜け、どんな環境にも耐え抜いたことだけが証明できるのかもしれません。
*6:拠点分散型組織の生産性を否定することは、即ちオープンソースないしフリーソフトの生産性を否定することに繋がりかねません。 古くはLinux、現代ではビットコインなど、数多くの製品がオープンソースで作られ、世界に革命的な生産物をもたらしています。 我々一介の開発者が日頃使うライブラリの多くも、オープンソースソフトウェアが数多くを占めます。 オープンソースでの開発には、世界中から開発者が参加します。 つまり、そのほとんどを拠点分散型組織が担っているともいえます。 その有効性については、既に古典的名著となった「伽藍とバザール(エリック・レイモンド)」がよく説明しています。 この本ももちろんオープン、というかフリーソフトです。 筆者自身のウェブサイトや青空文庫などを通じ、インターネット上でも無料で読めます。