
DroidKaigiやiOSDCが近づく中、現在Sansanでは「モバイルブログリレー」を実施しています。今回はその特別編として、営業AXサービス「Sansan」、名刺アプリ「Eight」、経理AXサービス「Bill One」でモバイル開発に携わるエンジニアによる座談会をお届けします!
前編では、3つのプロダクトにおける技術選定やチーム構成、開発プロセスの違いについて聞きました。
buildersbox.corp-sansan.com
後編では、開発の前提を変えつつあるAI、それぞれのプロダクトで活躍しやすい人、社内異動の実際、3つのモバイル組織をつなぐ取り組みについて聞きます。
2025年Sansanに入社。営業AXサービス「Sansan」のモバイルアプリ開発組織にて、Androidアーキテクトおよびマネジャーとして従事。モバイルアプリの豊富な開発経験を生かし、アーキテクチャ設計からAI時代を見据えた開発組織の変革まで幅広く取り組んでいる。趣味はバイオリン。
2021年Sansanに入社。名刺アプリ「Eight」のiOSチームとAndroidチームの開発リーダーとして従事。15年以上のiOSアプリの開発経験を生かし、iOSアプリ開発だけでなく、Eightモバイル全体の課題に取り組んでいる。最近の趣味は宅トレ。ラーメンが好き。
2019年Sansanに入社。営業AXサービス「Sansan」のAndroidアプリ開発の後、KMP導入プロジェクトやiOS開発にも携わる。現在は「Sansan」および「Bill One」モバイルアプリのマネジメントを担当。最近飼い始めたチワワと遊ぶのが趣味。
AIが変えた、モバイル開発の前提
──開発現場では、AIをどのように使っていますか。
小清水:EightのiOSを作り直したときは、AIをめちゃくちゃ使いました。AIがなかったら、期間内には絶対に終わらなかったと思います。
既存の実装を調べるだけでなく、バックエンドやAndroidの実装も並行して確認する必要がありました。その上で正しい実装を考える。そのプロセスでAIを使いました。
赤城:Bill Oneの新規開発を立ち上げた時期は、ちょうどClaude Codeなどが話題になり始めたタイミングでした。
そのため、最初から「手動でコードを編集しないのが当たり前」くらいのタイミングだったので、AIの利用を前提にリポジトリを構成できたのは大きかったです。
アーキテクチャの設計や開発ガイドラインもドキュメントにして、AIが必ず参照するようにしています。
石田:Sansanでは、AIを活用することで、Swift Concurrencyへの移行や非推奨ライブラリの廃止といった技術負債を解消する作業スピードが5〜10倍になりました。
特に、比較的単純な書き換えを繰り返す作業では圧倒的なスピードが出ます。
コードレビューにもAIを使っています。人間だと変更箇所を中心に見ることが多いですが、AIはその周辺にあるバグまで指摘してくれることがあるので、「ここも見ないといけないんだ」と、自分の気付きになることもありますね。
赤城:CursorだとClaudeのモデルもGPTも切り替えて使えるのが良いですよね。実装のセルフレビューをするときはGPTに頼むとしっかり見てくれたりするので、使い分けができるのは好みが出るところです。
──AIツールは、それぞれ何を使っていますか。
小清水:Eightでは、Claude Codeを使っている人もいれば、Cursorを使っている人もいます。チームで一つに決めているわけではなく、基本的には個人の好みで適切なものを使っています。
CursorならClaudeやGPT、Codexなどを切り替えられます。私は実装後のセルフレビューではGPT系のモデルを使うことがあります。違うモデルに見てもらうと指摘の角度も変わるので、そこは使い分けています。
石田:SansanではClaude Codeを使っているメンバーが多いですが、Cursorを使っているメンバーもいます。
どのモデルがいいかは日々変わりますし、同じモデルでもツール側のシステムプロンプトによって結果が少し違う感覚があります。複数のモデルを選べることを理由にCursorを使う人もいますね。
赤城:Bill Oneのモバイルチームは、最初からCursorに統一しました。一方、バックエンド側ではClaude Codeを使っている人が多いです。
どのツールを使っている人でも、同じルールやスキルを共有できるように、エージェント向けのパッケージ管理の仕組みをつくることも試みています。
──今後、AI活用をさらに広げていきたい領域はありますか。
赤城:実装自体はかなり速くなりました。だからこそ、今はもっと上流の部分が課題だと思っています。
Bill Oneには、会計の概念や、ほかのシステムとの整合性、電子帳簿保存法のような守らなければならないルールや法律があります。AIが持っていない知識を正しく渡せなければ、その後に出てくるコードも全部間違ったものになってしまいます。
必要な文脈を、どれだけ解像度高く入力できるか。そこは今後取り組んでいきたいです。
もう一つはコストですね。Bill Oneのコードベースはかなり大きいので、全部をAIに調査させようとすると、ものすごくトークンを使います。どの場面でどのモデルを使うのかも考えていきたいです。
石田:Sansanでは、将来的な目標ですが、要件を渡したら、実装して、テストして、バグを検出して修正するところまで、自律的にループする状態をつくりたいと思っています。
ただ、それを実現するには、モデルの進化を待つだけでは足りません。社内や各プロダクトにしかないドメイン知識や設計思想を、AIが読める形に整理する必要があります。
この1年で、「何が足りていないからできないのか」はかなり明確になってきました。そこは引き続き取り組んでいきたいですね。
小清水:Eightでは、AIを個人で使うだけでなく、開発プロセスの中にどう組み込むかを考えていきたいです。
ほかの組織から学べることも多いと思っているので、社内でAI活用がうまく進んでいる組織へのヒアリングも始めています。
一方で、人間だったら突っ込みたくなる設計上の問題をAIが拾わないこともあります。設計の部分をどうするのかは、改めて考える必要があると思っています。
それぞれの環境で働く面白さ
──それぞれのプロダクトで、モバイル開発に携わる面白さはどんなところにありますか。
石田:Sansanでは、AIを活用した新しい機能の開発も進めています。
これまでSansanに蓄積してきたさまざまなデータを活用し、お客様の業務をより効率的にすることを目指しています。そうした新しい体験を、モバイルでどう提供していくのかは面白いテーマだと思っています。
小清水:Eightは、意外と名刺管理以外のこともやっています。
イベントの入場に関わる仕組みもありますし、今は採用領域のEight Career Designにも力を入れています。法人向けのEight Teamもあります。
「個人向けの名刺管理アプリ」というイメージで入ると、意外と全然違うドメインの開発もあるので驚くと思います。異なる領域のPdMとコミュニケーションしながら開発する機会もありますね。
赤城:Bill Oneの経費精算では、領収書を撮影してデータ化して、法人カードの利用履歴と結び付けることで入力の手間を減らそうとしています。
その中で、Sansanが持っている画像の切り取りや認識の技術を使えないか、と考えることもあります。別のプロダクトがすでに持っている技術との組み合わせを探せるのは面白いですね。
あとは、会計や経費精算のドメイン自体がかなり複雑です。でも、一度身に付ければ、ほかのプロダクトでも使える知識だと思っています。
──それぞれのプロダクトでは、どんな人が活躍しやすいと思いますか。
小清水:Eightは、「変化を楽しめる人」だと思います。私は5年ほど所属していますが、振り返ってみると、同じような年は一度もなかった気がします(笑)
組織も変わるし、扱う領域も変わります。そこから刺激を受けて、波が来たら乗ってみる。そういう人には合っているんじゃないかなと思います。
赤城:Bill Oneも同じで、「変化を楽しめる人」ですね。まだプロセスも整備している段階なので、取り組むことがたくさんあります。
その中で、「自分は何をやるべきか」をワクワクしながら考えて動ける人。カオスな状態を見て、嫌になるのではなく面白いと思える人は合うと思います。
石田:Sansanは、システムもドメインも非常に複雑です。その「複雑さ」自体を、ポジティブに楽しめる人ですね。
私も入社した当初は圧倒されました。ただ、逆に言えば、ここまで複雑なプロダクトはなかなかなく、入社して1年経った今も勉強になることがたくさんあります。
複雑なものを、前向きに楽しめる人にとっては、面白い環境だと思います。その分、出せる成果も大きいですから。
「社内転職」に近い異動と、プロダクトを越えた連携
──プロダクトを越えた部署異動などもあるのでしょうか。
赤城:「技術本部Jump!」という社内異動サポート制度もあり、プロダクトを越えた異動はかなり活発ですよね。 同じ会社にモバイルアプリが3つあり、自分が担当しているもの以外にも挑戦できる環境があります。
小清水:Eightでは、1年ほど前にリリースしたiOS作り直しのプロジェクトに、Sansanから何人かのiOSエンジニアが来てくれました。Eightをやってみたいという人もいましたし、仕事の進め方が違う環境に行ってみたい、という人もいました。
赤城:プロダクトが変わると、普通に転職するのに近いくらい違いますよね。文化や働き方も、別会社のように感じることがあります。
石田:そうした異動が実際に行われているのは、すごくいいことだと思います。
異動はネガティブなものではありません。同じ会社の中で別のプロダクトに関われるので、また違った経験を積むことができる。社内でもポジティブに捉えられています。
──普段、3プロダクトのモバイルエンジニアが一緒に仕事をすることはありますか。
赤城:プロダクトをまたいだ技術連携も活発ですよね。
例えば、ちょうど今、社内の共通認証基盤のモバイルSDKを開発するプロジェクトがあって、Bill OneとSansanのエンジニアが1名ずつ参加し、2カ月ほど一緒に開発しています。
QAやメンテナンスコストを鑑みて、Android/iOSそれぞれではなく、Rustを用いて認証周りの処理を共通化しています。Rustを選んだのは、暗号ライブラリが充実していることや、UniFFIを用いてシンプルに各Platformへモジュールをリンクできることなどが理由です。
石田:ほかにも、EightとSansanでは、名刺を撮影するときに枠を検出して切り取る、矩形認識のモジュールも共通化されていますね。
小清水:あとは、2週間に1回、「Mobile Tech Talk」というLT会も開催しています。
各プロダクトの開発について話す場で、開発中に起きた泥臭いトラブルや、10年の積み重ねがあった中でのEightアプリ作り直しの裏側などを共有しています。
Eightの作り直しについても、外から見たら「大変そうだな」で終わってしまうところを、実際に何が大変だったのかまで共有しました。
石田:LT中はSlackのスレッドで実況するんですが、100件くらいコメントが付いて盛り上がることもあります。会社の規模を考えると、プロダクトを越えたコミュニケーションは結構多いと思いますね。
赤城:一緒にご飯へ行くこともよくあります。そういう場があるからこそ、ほかのプロダクトに興味を持って、異動を考えるきっかけになることもあると思います。
──3つのモバイル開発組織があることは、どんな魅力がありますか。
赤城:同じ会社の中に、モバイルだけでもSansan、Eight、Bill Oneという3つの選択肢があることだと思います。それぞれプロダクトも違えば、技術や開発の進め方も違うので、一つの環境だけでは得られない経験ができるんじゃないかなと思います。
思っている以上にいろいろなことが同時並行で進んでいて、変化の多い会社です。
モバイルだけで3つあるので、「一度入ったら、3つおいしい」くらいに考えてもらっていいと思います(笑)
小清水:これくらいの会社規模で、ここまで変化がある環境は、そんなに多くないと思います。
自分のいるプロダクトだけを見るのではなく、ほかのプロダクトの開発を知ったり、実際にそこに行ってみたりもできるので、変わっていく状況を面白いと思える人には、ぜひ来てもらいたいですね。
Sansan、Eight、Bill Oneの3つのモバイル開発組織は、扱うプロダクトも、採用する技術も、開発の進め方も異なります。一方で、プロダクトの枠を越えて技術や知見を共有し、別の組織へ挑戦できるつながりもあります。
それぞれの違いを楽しみながら、自分の関心やキャリアに合わせて挑戦の幅を広げられることが、Sansanのモバイル開発ならではの面白さなのかもしれません!
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