こんにちは。 Eight事業部で企業向けプレミアムの開発チームのエンジニアリングマネージャーをしている鈴木です。 今はプレイングマネージャー的な働き方をしていたりします。
EightでStripeの銀行振込機能(Pilot版)を活用してみた話をJP_Stripes Advent Calendar 2020の3日目の記事としてお届けします。
Eight企業向けプレミアムサービスについて
企業向けプレミアムはEightで培った個人の人脈を企業内のメンバーと共有、活用できるサービスです。
Eightのアーキテクトである大熊が以前に執筆した記事がありましたので、過去の背景などはそちらをご覧ください。
現在では新たなバージョンのリリースにより、企業という枠にとどまらず、
- 企業内のより小さな部署単位
- 企業をまたいだチームやプロジェクト
- 法人ではない任意の団体
などでもご利用いただける形になっています。 気になる方はぜひ以下からお申し込みいただければと思います。
Stripeの銀行振込機能(Pilot版)とは
Stripe社が日本での活用を狙って、Pilot版(2020年11月現在)として提供している機能です。 日本国内の金融機関でのやり取りをオンラインでできるようにするための基盤である 全銀システム を利用して、顧客は用意された振込用口座に振込を行うことで、Stripe上で決済ができる機能になっています。
今回のブログ執筆の前段として Go_SaaS というSaaS化を支援するセミナーに登壇させていただき、Stripeの銀行振込機能(Pilot版)の導入事例としてご紹介をさせていただきました。 発表時の資料については以下に公開していますので、こちらも合わせてご覧ください。
Eight企業向けプレミアムの決済における課題
私達が開発しているEightの企業向けプレミアムサービスでは、ユーザー様からの支払い手段として、従来からStripeでのクレジットカード決済機能を利用していました。
大半のお客様はそちらでサービスのご利用をしていただけていましたが、中にはどうしても請求書払いでしか決済が難しいというお客様もいらっしゃいました。
このため、そのようなお客様向けには弊社の担当者が毎月月末、月初に手作業で請求書の発行、送付業務を行っていました。
おかげさまでサービスに契約いただけるお客様も順調に伸ばすことができてきたのですが、サービスをご利用いただくお客様が増えるとともに、この毎月の処理の業務負担が高まり、直近では担当者が丸2日ほどの時間をかけて業務を行う状態になっていました。
料金の支払いに絡む業務のため、ミスが許されないなか業務負担を強いることは作業者の精神的負担が高く、またミスが発生した場合にはお客様にもご迷惑をおかけすることになってしまうため、この作業をどうにかシステム化できないものかと頭を悩ませていました。
Stripeの銀行振込機能(Pilot版)の導入
上記課題があるなかで、Stripe社からPilot版ではあるがぜひ銀行振込機能を使っていただきたいという話をいただき、導入のための開発に着手しました。
導入するからには、開発として従来あったクレジットカード決済の場合の処理フローにうまく乗せられるのが理想的でした。 しかし、サービス申し込みのタイミングや、その後更新のタイミングでも即時的に決済が行われるクレジットカード払いと異なり、銀行振込の場合は請求書をお客様に送ってから振り込みを行ってもらうまでのタイムラグはどうしても発生してしまいます。
また、従来手作業で行っていた請求書の作成・送付作業については月末月初に当月のものを一括で行っており、ここがクレカの処理フローに乗せる上でネックになっていました。
上記の課題は、従来手動で月末月初に行っていた請求書関連の処理をEightサービス上でユーザー様が申し込みを行った時刻で毎月請求書を送るようにフローを調整することで対応しました。 これにより元々クレジットカード決済で利用していた、StripeのBillingの仕組みにうまく乗っかることができるようになりました。クレジットカードの場合は上記タイミングで支払いが行われた後、領収書がお客様側に届く流れになっていたところが、銀行振込の場合は同タイミングで請求書が届く流れになります。
その後、請求書の金額をユーザー様が振り込むと、Stripeが入金の決済処理を行い、支払いのステータス遷移や弊社側への売上の入金等はクレジットカードの場合と同様に取り扱ってくれます。
少し技術的な話
銀行振込機能自体のドキュメントはPilot版のため公開されていません*1が、Billingの請求書送付に関するStripeのドキュメントは公開されています。
銀行振込の場合は支払い方法として collection_method
を send_invoice
に設定することで、上記のタイミングでお客様側に請求書を送信することができるようになります。
請求書が送信された後に、いつまでに支払いを行ってもらうかというパラメータ(days_until_due
)を設定することで、支払期限を設定し、それに伴ってStripe上での決済管理のフローや未払いの回収業務フローを組み立てることができます。
Eightの企業向けプレミアムサービスでは、支払期限が翌月末日になるように上記パラメータを設定しています。
開発期間
上述の通り、既に存在していたクレジットカードの処理に合わせる形で、支払手段として銀行振込を選べるようにしたというのが実際の開発内容です。
Stripeの仕組みのおかげもあり、実際の開発作業を最小限に抑えることができたおかげで、開発着手から本番環境への機能リリースまでは1ヶ月もかからないスピード感で開発することができました。
導入したメリット
ということで、無事に企業向けプレミアムサービスにおける銀行振込(請求書払い)の対応を行うことができました。 導入したメリットとして以下のようなことが挙げられるかなと思います。
- Stripe上に決済データが集約
- 処理を統一でき、今後の開発が楽に
- 担当者による請求書作成、送付のコストがなくなった
- 銀行振込(請求書払い)を希望するお客様から申し込みやすくなった
どれも大きな利点なのですが、従来の課題だった手作業での請求書作成・送付の手間が0になったのは、現場から「大変助かりました。」という声を実際にいただき、対応して良かったなと実感しました。
また、Stripe上に決済データが集約できたのも大きなメリットです。 Stripeのダッシュボード上でこれまでの売上など様々なレポート指標を閲覧することができるのですが、これまで手作業でまとめていたデータが集約され、StripeのUI上から確認できるようになったことで、開発しつつビジネスの状況把握の感度をあげるためのきっかけが増えたと思います。
まとめ
今回ざっとStripeの銀行振込機能(Pilot版)とその導入について紹介させていただきました。 決済基盤がStripeで完結できるようになったことで、ビジネスに貢献できるしくみが整ったかなと思います。 現在これをベースに、お客様からご要望いただいていた新たな機能(商品)について開発を行っている真っ最中です。
日本国内では請求書文化が根強い側面もあり、この銀行振込機能が導入されることで恩恵を受けられる企業も多くありそうだと思っており、正式にオープン化されて様々なシーンで利用されるといいなと思っています。 Eightの企業プレミアムサービスでの本導入事例が少しでもそのお役に立てば幸いです。
buildersbox.corp-sansan.com
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*1:2020年11月現在