こんにちは。技術本部 Bill One Engineering Unit の前田です。
10月27日に開催された「Observability Conference Tokyo 2025」に「ゼロコード計装導入後のカスタム計装でさらに可観測性を高めよう」というテーマで登壇しました。その感想記事を書いてみます。開催からすでに2週間以上経っておりますが、出さないより出した方が良いという精神で書くことにしました。
今回の登壇はプロポーザルへの応募から始まったので、その辺りの話も書いてみます。
はじめに
カンファレンスの概要
詳細は次のページをご覧ください。日本では、オブザーバビリティのみに着目したイベントやカンファレンスは知る限り初めてだと思います。
登壇資料
当日投影した資料はこちらになります。当日はコードなどを投影していましたが、見づらかった部分も多かったと思うので、こちらをご覧ください。
また、登壇している様子もすでに動画でアップロードされているようです。カンファレンスの公式ページにリンクがあるので、興味がある方はそちらからご覧ください。
セッションの概要
登壇資料には「もっと可観測性を高めよう!」と書いています。その手段の1つであるカスタム計装について、これから始める人に対して少しでも参考になって欲しいという思いを込めています。
とりあえず自動計装や最低限の計装は行った、じゃあ次はどこから計装していくのですか?という問いに対し、Bill Oneではこのように考えて実施しました、といった内容になっています。できる限り具体的に、置かれている状況やコードの内容、その結果どうなったかということを話すようにしています。この内容から何かしら拾って持ち帰っていただき、それぞれの環境で何かしら参考になればいいなという意図を込めていました。主な内容として、カスタム計装を実施した3事例について話しています。
- ユーザー情報の計装
- 重要機能(検索)の計装
- 非同期処理の計装
プロポーザル応募
応募のきっかけ
今回のカンファレンスを知ったきっかけは「OpenTelemetry Meetup 2025-07*1」の告知でした。
その後情報をウォッチしていたところプロポーザルが始まっていたので、なんか面白そうだしもしかしたら採択されるかもしれないから書いてみるかーという、とても軽いノリでプロポーザル提出を決めました。私自身は、登壇や人前で話すことなどは苦手ですが、少しでも場数を踏んで慣れていきたいという意志もあります。そういう意味では挑戦であり、もし採択されたらしっかり頑張ろう、という気持ちでした。
テーマ選定とプロポーザル提出
オブザーバビリティに関心のある方々が参加するといっても、導入状況などはそれぞれで全く異なると予想しました。また、導入事例をそのまま話すよりは具体的な学びを持ち帰って欲しいと思いました。そこで、これまでBill Oneでやってきた計装を、できる限り一般化した形で発表できないか考えた結果、カスタム計装を基にした内容としました。
私がプロポーザルに記載した「参加者が得られる学び」は、次のようなものでした。
想定参加者は、ゼロコード計装は導入したが、どのようにアプリケーション独自のテレメトリーデータをとっていけば良いか迷っている方や、これからゼロコード計装を行おうとしている人です。参加者が得られる学びとしては、自前の計装を行った実例を知ることで、自身のプロダクトにおいてどこから計装を行っていけば良いのか気づきを得ることが主なものです。(中略)ゼロコード計装を導入してテレメトリーデータを取得できるようになったことがゴールではなく、アプリケーション固有のテレメトリーデータを増やすことで、さらに可観測性を高められることを知って欲しいです。そして、自前の計装を自身が担当しているアプリケーションに適用し、効果を実感できるようになって欲しいと期待しています。
計装の話になると、どうしてもプログラミング言語などの話が入ってしまいます。しかし、コード例も出したいし、Kotlin(OTel Java)とTypeScript(OTel JavaScript)以外の言語を使う人にも役立つ内容にしたい、とかなり欲張りました。結果として、今回登壇したような内容になっています。
なお、プロポーザルを出すという経験は今までなかったので、提出するための文章を考えて洗練させていくプロセスは良い学びになりました。
当日の話
登壇前
すごく緊張していました。登壇終了後も同僚に「すごく緊張しているのが伝わってきた」と言われるぐらい緊張していました。
今回のセッションで作成したスライドは、30分の登壇時間に対して61ページと、かなり多くなりました。登壇練習は何度か行い、30分に収まることは確認していたのですが、緊張していると話すペースなどが普段と違うのはよくあることなので不安が拭えませんでした。そのため、お昼の時間やセッションの前の時間などに、会場の外の公園でiPhoneを見ながら登壇練習をしていました。私は登壇の時間配分を考える場合は「このスライドの話をこの時間に始められていたらペースは問題ない」と、チェックポイントを設けるような感じで行っています。スライドを見ながら、喋るペースで内容を心の中で反芻し、キーノートセッションの内容にどこで触れるかなど調整していました。
登壇
ギリギリ時間内に収まりませんでしたが、概ね30分で話せました。完璧に時間内に収められなかったのは反省点です。緊張してしまうので、登壇の時は席の方をあまり見ないようにしていました。セッションに参加した同僚曰く「いっぱい入ってくれていた」とのことでした。セッションに参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
なお、登壇中は手元に「現在投影されている内容」を映す小さなディスプレイが用意されていたりと、登壇しやすい環境で良かったです。実はライトのおかげでいい感じに前が見えなくなっていたので、人の多さがそれほど気にならなかったのも個人的には助かりました。
登壇後
「Ask the speaker」のコーナーに来てくださった方がいらっしゃって、とても嬉しかったです。今回のセッションでは主題から外したのですが、やはりPub/Sub周りはみんな悩みが多いのだなと思いました。非同期処理の計装に関してはブログで細かく書く予定です。オブザーバビリティ関連の業務が主務というわけではないため、なかなか時間を割けていませんが、記事を書くことで誰かの役に立ちそうだと思うので挑戦します。
また、登壇後にXで登壇時間中の検索をしたところ、私のセッションに対するポストがいくつかありました。すごく嬉しかったです。
印象に残ったセッション
私自身もいくつかセッションに参加した中で、最初のキーノートセッションが最も印象に残りました。「無駄なテレメトリーデータは送らない」という話やサンプリング手法など、『オブザーバビリティ・エンジニアリング』の発刊から2年以上経った現状についてお話が聞けてとても良かったです。何より、テレメトリーデータをどのようにビジネスに紐づけるか、という点はこれからも深掘りしたいと感じました。例えば、プロダクト上はエラーが出ていないけど、実はユーザーが何度も操作をやり直していて満足度が低い、というケースもテレメトリーデータから判断したいです。
現在はすべてのセッションの動画がアップされているので、出られなかったセッションの話も聞いてみようと思っています。
そのほか
カンファレンスの雰囲気はすごく好きで、知り合いに会えるなどとても楽しいひと時を過ごせました。懇親会には、登壇で想定以上に疲れたことと、前日あまり眠れなかったこともあり、疲労が大きすぎて参加できませんでした。あと、これは完全に私の問題なのですが、ブースを回って知らない人と話すのがすごく苦手です。登壇みたいに、何度もやれば慣れるのかもしれませんが、いまだに慣れません。ブースとかで話せる人は本当にすごいと思っています。質問いただいたりすると喋れるので、会話のきっかけを自分から作れるようになると、カンファレンスなどをもっと楽しめる気がしています。これは私自身の課題として今後も向き合いたいです。
終わりに
謝辞
「Observability Conference Tokyo 2025」を開催いただけたこと、登壇する機会をいただけたこと、多くの方に聞いていただいたこと、とても感謝しております。Xでハッシュタグ#o11yconjpを使って登壇時間あたりで検索すると私のセッションに関するポストがあったり、ブログで印象に残ったセッションの1つに挙げていただいている記事があり、とても嬉しかったです。登壇者のノベルティでいただいた可愛いTシャツも早速愛用しています。
今回のカンファレンスを通じて、オブザーバビリティのコミュニティになんらか貢献したいという気持ちが強くなりました。今後も引き続きよろしくお願いします。
今後の話
「巨大なマイクロサービスをなんとかする話」を聞きたいという声がちらほらあったのですが、この件に関してはまだ進めている最中で、まだお話しできる段階にありません。今後、進めていく中でお話しできる機会があると良いなと思っています。「巨大なマイクロサービス」という謎ワードに関しては、後から私も首を傾げましたが、もう巨大とは呼ばせないという気持ちで頑張ります。
また、先ほども触れた非同期処理の計装に関しては、改めてブログを書きます(宣言)。かなりニッチでディープな内容になりそうな気がしていますが、役に立つ人がどこかにいると思うので挑戦してみます。
関連リンク
オブザーバビリティに関連する、過去の登壇資料などのリンクを残しておきます。