CTO の藤倉です。
Sansan では国内外を問わずに優秀なエンジニアを採用していくという方針の元、今年の 4 月にインドを訪問して多くの学生さんに会ってきました。その時の様子は以下の記事を参照してください。
今回の記事では、このプロジェクトの続きについて書きます。
採用活動の判断
前回の訪印により、インド人学生の優秀さは確認できました。では、すぐにインド人学生を採用すると判断するべきなのでしょうか?
私は、そうするべきではないと考えています。これはとても大事な問いです。
もちろん、優秀なエンジニアは多いに越したことはありません。しかしながら、この採用はインドの方を日本に呼び、生まれ育った環境とは全く異なる場所で働く選択をしてもらうものです。彼ら/彼女らがきちんと成果を出せるようにしてあげられるのか。そもそも日本国内で健やかに生活していくサポートはできるか。当社の開発チームが受け入れることができるのか。採用活動を開始するという意思決定のためには、明らかにしておかなければならないことが数多くあります。それらがうやむやのまま、安易に採用活動を始めるわけにはいきません。
これらの課題を解決するべく、同時並行的に、国外からのエンジニア中途採用の活動を進めてきました。その実績のおかげで、会社として海外から来るエンジニアを受け入れる経験が少しづつ蓄積されてきています。また、彼らによるグローバル開発チームが発足して、チームとしての成果も出始めています。これらを踏まえ、インド人学生が入社してくれたとしたら、会社として支援できるだろうという判断に至ったのです。
このプロセスは非常に重要です。採用して人を受け入れるということは、その人たちの安全な生活と、成果を出せる環境を提供するという、組織としての責任を伴います。責任が果たせそうだという自信ができたので、インド人学生新卒採用プロジェクトを前に進めることにしました。
訪印再び
11 月初旬、本格的な選考を目的として、再びインドの地を訪れました。
今回訪問したのは Indian Institute of Science (IISc) です。この IISc というのは厳密には大学ではないそうです。1909 年に創立された研究機関で、その後 1958 年に、"大学と同等のものであるとみなせる機関" として認定されました。現在では、修士号と博士号を授与できるようになっています。一般的な大学と同じようなカリキュラムがあり、学生の皆さんは学びながら研究活動をしています。
面接は、インド現地に私がいて、日本からも面接担当者が参加する形で進めました。リモート面接です。Sansan による採用活動のために、面接用の部屋を準備してくれました。
Web エンジニア志望の方と R&D での研究員を希望する方の数名を面接しました。皆さん、日頃より非常に難易度の高い研究プロジェクトを行なっていることが面接を通じて伝わってきます。医療系画像の解析手法の研究や、バイオ燃料の研究など、その内容は興味深いものばかりです。
ただし、残念ながら、今回はご縁を結ぶことはできませんでした。
面接を終えて
この経験から、我々はいくつかの学びを得ました。
一つは、募集要項の書き方。日本では、あまり細かな技術的経験について指定していません。それは、その技術さえ知っていればよいという判断ができないことと、技術スキルは入社後でも訓練できると考えているからです。一方インドでは、これは相当厳密に定義する必要がありそうです。曖昧なもの、記載されていないものは求められていないと見做されてしまうので、面接でお会いしてみて期待と異なると判明することが多かったです。
また、評価のフィードバックが日本よりも相当強く求められます。特に上記のように前提として求める技術とそのレベルがあるのであれば、その基準を予め明らかにしておくことが、双方にとっても健全です。前提を揃えておくことにより、その上の応用的なスキルや経験についての質疑応答に多くの時間を当てることができます。
停電や交通事故などのアクシデントにより、面接に来られなくなってしまう学生さんが頻繁に出るそうです。今回、我々は幸いにもそういったケースには遭遇しませんでしたが、不測の事態も想定をして臨機応変な対応ができる体制を整えておくことも必要そうです。
今回は合格者を出すことはできませんでしたが、これで諦めるわけにはいきません。
次回以降は他の大学での面接や、長期インターンを希望する学生さんとの面接など、他にやれることを進めていきたいと思います。そのときには、今回の学びを活かして、合格者が出せるように頑張っていきたいと思います。
おまけ
残念な結果ではあったものの、朝から夕方まで面接を行っていたので、疲れを癒すべくお酒でも飲もうかと思いましたが、何とその日は Dry Day でした。勉強不足だったのですが、インドでは年に数回(州によって異なる)、お酒を飲まない日があるのだそうで、当然販売もされません。面接終了日の夜中の便で日本に戻ってきたのですが、空港の中も Dry Day、出国手続き後のエリアでも Dry Day でした。
インド出国前に最後に楽しんだのはコーラでした。